愛媛FCにとって6年目のJがスタートする。今季からJ2はガイナーレ鳥取が加わり、20クラブによるホーム&アウェー方式でシーズンを戦う。昨季は12勝12分12敗の11位。クラブ史上最高の8位以上の順位に達することはできなかったが、昇格後初めて勝敗を五分で終え、得失点差もプラスマイナスゼロと一定の成果を残した。改めて今季は「8位以上」を目標に掲げ、さらなるステップアップをはかる。
(写真:3年目の指揮を執るバルバリッチ監督(左)とFW福田)
 昨季の愛媛は一言で言えば、「堅守」が持ち味のチームだった。総失点34はJ1に昇格した柏レイソル(24失点)に次ぎ、リーグ2位タイ。シーズン終盤には7試合連続負けなしと安定した戦いぶりをみせた。

 だが、地方クラブの悲哀で、堅守に貢献したセンターバックのアライール(京都)、小原章吾(福岡)はいずれも移籍。その代わりJ1でプレー経験のある吉弘充志(札幌)、池田昇平(千葉)を獲得した。しかし、頼みの吉弘が鹿児島キャンプ中に左腓腹筋肉離れを起こし、復帰は4月以降になりそうだ。

 開幕戦はサイドバックが本職の高杉亮太が代役を務めることが濃厚だ。とはいえ、まだまだ連係面は完璧とは言いがたい。右サイドバックの関根永悟は「声を出し合って、はっきりプレーしないといけない」と課題を口にする。また現状ではDF陣自体の層が薄いため、これ以上、故障者が発生すると苦しくなる。フロントは緊急補強を画策しているが、いずれにしても守備陣が安定するまでには時間が必要だろう。

「守備は最終ラインの4人だけが活躍するものではない。チーム全体での作業が大切」
 バルバリッチ監督がそう語るように、就任時より徹底している前線からの守備を機能させることが一番だ。最終ラインになるべく負担をかけないような試合運びを心がけたい。

 そのためにも、昇格当初からの懸案である攻撃の迫力不足を何とかしたいところ。その突破口を開いてくれそうなのが、横浜FMから期限付き移籍でFW齋藤学だ。まだ20歳と若く、スピードと高い運動量は魅力的。そこへすっかり愛媛に溶け込んだブラジル人FWのジョジマール、世界を知る福田健二、テクニックのある大木勉が絡んでくれば、攻撃のバリエーションは広がる。昨季はチームの得点王が福田の7ゴールと攻撃陣は寂しかった。「たとえ点を獲られても獲り返すサッカーをしたい」と福田が意気込むように、ゴールネットをどんどん揺らす選手が現れてほしい。

「守備と同様、攻撃も前線の2人だけがするものではない。より人数をかけて攻めることが大事」と指揮官は話す。幸い、中盤から前では昨季のレギュラークラスは全員が残留した。一昨年は10ゴールをあげた右サイドの赤井秀一、2年目となる左サイドの杉浦恭平がゴール前に顔を出す回数が増えれば、得点力もアップするだろう。

 何より大きいのは、昨季の手ごたえをチーム全体が共有し、自信が生まれてきたことだ。どの選手、スタッフに聞いても「今年のモチベーションは高い」「監督のやり方が浸透している」と異口同音に返ってくる。観客動員も昨季は参入以来最高の1試合平均4,386人を記録した。今季のテーマは「GROW UP EHIME 2011」。グラウンド内はもちろん、それ以外の部分でも、そろそろJ1も視野に入るクラブへと成長を遂げたい。
(今季は鳥取、岡山、徳島と対戦成績を争う「PRIDE OF 中四国」も実施)