日本サッカー協会(JFA)は、11日に起きた東日本大震災の影響を受け、今月下旬に開催を予定していたキリンチャレンジカップ2試合(25日モンテネグロ戦、29日ニュージーランド戦)の中止を発表した。日本代表戦の中止は、2003年にイラク戦争の影響で米国遠征をとりやめて以来、7年ぶりのこととなる。17日に協会は記者会見を行ない、中止となったキリンチャレンジカップの代替試合として、29日に大阪でチャリティーマッチの開催を決定した。
 11日に東日本を襲った大地震は、今も甚大な被害をもたらしている。その被害はスポーツ界にも波及し、3月に開催を予定していた各競技の大会・イベントの中止や延期が相次いだ。サッカー界では、JリーグがJ1・J2・ナビスコカップの3月中の全戦延期を発表。AFCアジアチャンピオンズリーグも15日の名古屋グランパス対アル・アイン(UAE)戦、16日の鹿島アントラーズ対シドニーFC(オーストラリア)戦と、国内開催の2試合を延期とした。JFLも開幕戦を含めた3月の開催を延期とし、日程の練り直しを求められている。

 これを受けて日本サッカー協会は16日、キリンチャレンジカップの2試合、25日の静岡のエコパスタジアムでのモンテネグロ戦、29日東京の国立競技場でのニュージーランド戦の中止を決めた。被災直後は、予定通り開催する方向でいたが、東京電力の計画停電が実施される中での電力供給の問題や、選手や観客の交通状況を考慮し開催断念を決断した。そこで日本サッカー協会は代わりに被災地の復興を支援するためのチャリティーマッチを行うことを決めた。対戦相手にはニュージーランドを第一候補として交渉。ニュージーランドは先月にクライストチャーチでM6.3の地震が発生し、同国も大きな被害を受けている。復興を目指す両国が手を取り合って、試合をすることは大きな意味を持つ。しかし、17日日本サッカー協会にニュージーランド協会から、選手やスタッフの安全が確保できないことを理由に断りの連絡が入った。これにより、日本サッカー協会はチャリティーマッチにおける日本代表の対戦相手をJリーグ選抜チームと決定した。

 日本代表のアルベルト・ザッケローニ監督は、チャリティーマッチ開催決定に対し<日々、刻々と被災状況と甚大な被害が明らかになる中で、このチャリティーマッチを、被災者の皆様と復興に向けた活動を支援していく最初の活動としていきたい。被災された皆様にはあらためて心からお見舞いの気持ちをお伝えし、少しでも勇気づけることができればと思っている>(JFAホームページより)と帰国中のイタリアからコメントを寄せた。

 また震災後、日本には海外から次々と激励のメッセージが届けられている。槙野智章(ケルン)、内田篤人(シャルケ04)ら欧州のクラブに所属する日本人選手たちは、試合後にメッセージ付きのシャツを着用し、TVを通して被災地にエールを送った。また、欧州各国のリーグ戦、カップ戦などでは、試合前に日本語で応援のメッセージを入れた横断幕を掲げたり、選手たちが喪章を着けてプレーをしたクラブもある。

 29日に開催されるJリーグ選抜とのチャリティーマッチにはサッカー界の被災地復興への思いが込められている。それだけに選手に課せられた使命は大きい。被災地の方々だけでなく、日本全体を勇気づけるようなプレーを見せてほしい。それが日本サッカー界から発信する最大のメッセージとなる。