17日、今秋に開幕するバスケット男子の新リーグ「日本バスケットボールリーグ」の設立記者会見が都内で行われた。リーグの略称は前身のスーパーリーグを運営していた日本リーグ機構と同じ名称で「JBL」。理事長には今リーグのオフィシャルボールサプライヤーである株式会社モルテン社長で協会副会長の民秋史也氏が就任した。
(写真:新リーグをアピールする民秋史也JBL理事長<右>と伊藤善文JBL副理事長<左>)
 JBLに参加するのは、スーパーリーグ時代の7チームと新加入のレラカムイ北海道の8チーム。レギュラーシーズンは10月から5回戦総当りで全140試合が開催され、3月にレギュラーシーズン上位4チームによるプレーオフを行う。また、「JBLチャレンジカップ」というシーズン前に行うリーグカップを導入する。

 理事長に就任した民秋氏は「世界のバスケット競技者人口は4億5000万人を超える。日本も未登録のバスケット愛好者を含めて100万人以上の競技者人口を抱えている。これを機に、プロもアマチュアも混在する開かれたリーグにして、世界に通用する日本のバスケットを目指したい」と強く意気込んでいた。

 一方で、協会副会長の民秋氏の理事長就任に対しては反発の声も起きそうだ。現在の協会は昨夏の男子世界選手権で出た約13億円の赤字などで執行部側と反執行部側の対立が起きている。06年度補正予算案や07年度予算案を決定する評議員会が反執行部側のボイコットで4月から3度続けて流会。スーパーリーグの会長は執行部側の蒔苗昭三郎氏が務めていたこともあり、新リーグでは執行部外からのトップ就任が求められていた。

 こうした点を指摘する記者の質問に対し、民秋氏は次のように答えた。
「このような質問は出るだろうと思っていました。私は、4年も5年も前から、このプロジェクト(新リーグ立ち上げのプロジェクト)をやってきている。途中で投げ出したら男がすたると考えた。(プロジェクトを)一度引き分けたからには、まともな形に戻して、日本のトップリーグが世界に出ていっても戦えるような形にまで持っていくのが、最初から関わっている者の結果責任だということで引き受けた。それが私の考え方です」

 また、当初はプロリーグをうたっていながら実現していない点を問われると、「プロという表現を使っていないという点については、ご指摘の通り。しかし、プロの定義とは一体何でしょうか? 我々協会の目的は、プロだろうが、アマチュアだろうが、とにかく世界に通用するレベルの高いチームをつくるということ。いくらプロであってもNBAやEUROと比べて、3流、4流と言われては意味がない。今度のリーグにはプロ、アマを問わず全部に集まって頂く。それが普及と強化に結びつくんじゃないかと。プロという単語の意味が不明確であると我々が判断したんです」と語った。

 JBLの開幕戦は10月11日に東京体育館で行われ、日立サンロッカーズとアイシンシーホースが戦う。

<以下は質疑応答>

――現在の日本バスケットボール協会が混乱しているのは周知の事実。人心の一新が求められる中で、民秋さんが新リーグの理事長に就任されたことは(反執行部側の要求と)逆行していると思うのですが、引き受けた理由を教えてください。また、(新リーグは)協会から離れて独立するとのことですが、理事長は協会の仕事に全く関わらないなどしなければ、納得されない方もいらっしゃると思いますが?
民秋: このような質問は出るだろうと思っていました。私は、4年も5年も前から、このプロジェクト(新リーグ立ち上げのプロジェクト)をやってきている。途中で投げ出したら男がすたると考えた。(プロジェクトを)一度引き分けたからには、まともな形に戻して、日本のトップリーグが世界に出ていっても戦えるような形にまで持っていくのが、最初から関わっている者の結果責任だということで引き受けた。それが私の考え方です。
 また、日本協会の役員についての質問ですが、人事に関しては、ここではお許し願いたい。人事というものは水物ですから、どういう風になるかはわからないですね。

――吉田事務局長にお話をうかがいたい。まず、かつての団体との具体的な違いを教えて頂きたい。また、開かれたリーグということですが、具体的にはどういうことでしょうか?
吉田: これまでとの違いですが、日本協会からリーグを運営する権利、興行権や選手に関する肖像権などの権利をリーグに全て移譲していく。これまでは、統括団体である協会が権利を持っていた。
 また、同じ話になってしまうんですが、リーグは協会から移譲された権利を、さらにチームの方に譲渡していきます。これまでのリーグの運営では都道府県協会に権利を渡していたので、チームには全く収益が入っていなかった。今後はチームにも収益が入る。そういう意味では、リーグもチームも独立採算制をとったという形になる。ただ、独立するといっても、リーグが協会の傘下であることにかわりはない。
伊藤: 補足しますが、従来との変更点については、独立団体として自主運営、自主経営をやっていくと。それに、地域の協会に移譲していた興行権を、これからはチームに移譲する。チームが主体となって、地域の協会の支援を得て、ホームタウンに根ざして発展していく。参加チームについても、従来は企業チームだけでしたが、今回からは企業チームとクラブチーム混在の、いわばゴルフの日本オープンのような日本最高峰のプロ、アマ混在のリーグという形です。

(写真:熱弁をふるう民秋氏)
――05年3月31日、民秋さんは我々の質問に対して、当時の名称であるプロ化実行検討委員会委員長として「こんなに一生懸命やったことはない。(プロ化を)実現させる」とおっしゃったのを覚えています。しかし、翌4月になぜかプロリーグ設立準備委員会が新リーグ設立委員会へと名前が変わり、いつのまにかプロという名称が消滅しています。我々が知らない間に趣旨が変わっているんですね。いつ変わったのでしょうか?
民秋: プロという表現を使っていないというのは、ご指摘の通りです。しかし、プロの定義とは一体何でしょう? 我々協会の目的は、プロという名前を使おうが、アマチュアという名前を使おうが、とにかく世界に通用するレベルの高いチームをつくるということです。今の日本を見ていると、チームは自主独立でやりなさい、選手は自分たちで飯を食べなさい、自分たちでスポンサーを集めなさいということができるのかと。やはり現実対応の路線をとらなければいけない。
 我々の目的のためには、プロ、アマ問わずに全部にお集まり頂くことが日本のバスケット強化普及に一番役に立つんだと。プロという単語の意味が不明確であると我々が判断したんです。我々が判断した。
 いくらプロだといってもNBAやEUROと比べられて、あれは3流だ、4流だと言われては意味がないんですよ。やはり、まずはEUROリーグとまずまず戦えるところに近づかなければいけないんです。今度のリーグには全部に集まって頂き、大阪弁でいえば『ええとこどり』すると。それが普及と強化に結びつくのではないかと。

――でも、民秋さんは05年3月の段階で「強くするためにはプロにするしかない」とおっしゃった。今の話と矛盾していますよね。
民秋: それはご理解ください。当時はあくまでプロ化を検討する委員会であり、設立の準備をする委員会だった。結論がでなかった、力が及ばなかったという風にご理解頂きたい。

――しかし、どこかでメディアに説明する場があってもよかったのでは?
民秋: その点はちょっと手抜かりだったと思います。ご指摘の通りです。
伊藤: 私の意見としては、プロというとビジネスというイメージが強くなる。バスケットの普及、地域社会への貢献という意味合いがあるのだから、あえて、プロという言葉は使わない方がいいと。そういうJBLの会員チームの意向も踏まえて、プロという言葉を修正させて頂いた。

――興行権ですが、実際に移譲するチームは? そうでない場合はどうするのか? あと、以前から話が出ていた法人化については?
伊藤: 移譲されるのはレラカムイさんとオーエスジーさんと三菱さんの3チームです。残りの5チームは色々と検討している段階。06-07シーズンについては、JBOというJBLの組織の中で再移譲を受ける形で運営していきたいと思います。
民秋: 法人化は本日(18日)の理事会と総会で正式に承認された。協会の了承とアドバイスをすみやかに得て、タイミングを見て文科省に申請したいと思う。

――それでは、リーグに間に合わないと?
民秋: いつになるかは文科省が決めること。しかし、ビジネスの世界では特許を申請した際に「パテントペンディング(申請中)」という表示をして製品を販売する。そういう手法もある。

(了)