体重無差別で柔道日本一を決める全日本柔道選手権が29日、日本武道館で行われ、鈴木桂治(国士大教)が穴井隆将(天理大職)との決勝を制し、4年ぶり4度目の優勝を収めた。連覇を狙った高橋和彦(新日鉄)は3回戦で一本負け。昨年の世界選手権無差別級金メダリストの上川大樹(明大)はまさかの初戦(2回戦)敗退となった。13年連続出場の棟田康幸(警視庁)も初めて初戦(2回戦)で姿を消した。
 決勝、穴井の大外刈りを返して一本を奪うと、涙が止まらなくなった。
「負けるなら、どう負けるのかと考えていた。一本とれて夢のようです」
 4年ぶりの日本一。強豪が続々と敗れ去る中、頂点に導いたのはベテランの経験だった。

「今までの実績があるし、初心に返るといっても難しい。今できることをやるしかない」
 その答えが「我慢すること」だった。準々決勝の七戸龍(九州電力)戦では長身の相手に苦しみ、先に指導をもらう苦しい展開。しかし、耐えて相手のスタミナ切れを待つと、後半に挽回。逆に指導を奪い返し、旗判定で勝利した。さらに準決勝の本郷光道(フォーリーフジャパン)でも相手の大内刈りを返して技ありを奪い、寝技での合わせ技一本につなげた。決勝も先に指導をもらう劣勢ながら、穴井の仕掛けを我慢して日本一を呼びこんだ。

 前回、優勝した4年前と比較すれば彼を取り巻く状況は大きく変わった。2階級制覇を目指した3年前の北京五輪ではまさかの初戦敗退。現役続行を宣言したものの、昨年の世界選手権も1回戦で敗れ、限界説が取り沙汰されていた。本人も「こんなに現役でへばりついていていいのか」との思いがあったという。

「優勝候補にもあがっていなかった」と鈴木も認めざるをえなかったポジションからの復活V。アテネ五輪の金メダリストは、また新たな輝きを手にするため、畳に立ち続ける資格を得た。