今年1月、全国大学ラグビーフットボール選手権大会で早稲田大学を破り、2連覇を達成した帝京大学ラグビー部。今季は史上2校目となる3連覇を目指している。チームを指導するのは同大学医療技術学部で教鞭をとる岩出雅之監督だ。教育者の顔をももつ岩出氏の指導方針とは――。当サイト編集長・二宮清純がインタビューを敢行した。
二宮: 大学選手権2連覇達成、おめでとうございます。初優勝した一昨年には試合の最後の最後まで集中させるために、ドラマ『ブザー・ビート』を例に出していましたよね。このドラマの根幹となっている「ブザー・ビーター」という言葉が監督の思い描いていたものと一致していたということでした。昨季もそういうものはあったのでしょうか?
岩出: 『ブザー・ビート』を例に出したのは、最後まで諦めずにというポジティブさを植え付けることと同時に、同世代に流行っているものをあげることで選手をリラックスさせる効果がありましたよね。でも、昨季のチームはその時よりもメンタル的にレベルは上でしたので、その必要はなかったんです。

二宮: なるほど。もう一つ、上のレベルだったというわけですね。
岩出: 初優勝するまでの数年は、エキサイトさせずに、冷静に試合に臨むということをさせてきました。でも、昨季のチームにはもう十分にそれはありましたので、逆にエキサイトさせるようにしたんです。これまでうちのチームは、どちらかというとスロースタート気味だったのですが、最初からエキサイトさせることによって、前半の立ち上がりがよくなりました。

二宮: 選手権の決勝でも前半、ペナルティゴール(PG)を重ねて、着実にリードを広げていきましたね。あれで精神的にも優位に立てたのかなと。
岩出: それは十分にありましたね。選手が迷っていることがあっても、「行け、行け。どんどん行け」と指示を出しました。

二宮: 選手権では先手必勝という勝ちパターンが多かったですね。
岩出: はい。そうなるようにどんどん攻めさせました。試合中に相手の出方を様子見るようなやり方ではなく、相手がどう来ようが関係なく、自分たちからどんどん仕掛けていく。そういう気持ちをつくらせるような言葉かけを意識しながらやっていましたね。

二宮: 連覇を達成したことによって、これまで伝統校や強豪校に有利だったスカウティングの面でも、帝京にいい風が吹いてきているのでは?
岩出: 伝統校がのんびりと構えてくれていると、いい選手が取れる可能性があるんですけどね(笑)。少しは変わってきたかもしれませんが、やっぱり頑張ってスカウティングしないと難しいですよ。

二宮: 2連覇を達成したことで、日本一のチームでやりたいといって入ってくる選手も増えてきているのでは?
岩出: 選手というのは強いチームでやりたいと思うものですからね。ただ、一言で強いと言っても、勝つことを主眼に置くのか、それともそのチームのスタイルを好むかという点では違ってきますからね。私が目指しているのは勝てるラグビーと、ボールをどんどん送るスタイルへ進化させたラグビーの両面をもったチームなんです。そしてもう一つは、選手が育つチーム。この3つの魅力をもった「強いチーム」にしていきたいと思っています。

<現在発売中の『第三文明』2011年6月号では、さらに詳しいインタビューが掲載されています。こちらもぜひご覧ください>