キリンカップ2011が7日、横浜国際総合競技場で行われ、日本代表はチェコ代表と対戦した。日本はペルー戦に続き、3−4−3の布陣を採用。前半こそ攻撃がつながらなかった日本だが、後半になると連動して相手ゴールに襲い掛かる。しかし、いずれもチェコの堅守に阻まれ、2試合連続のスコアレスドローに終わった。

 チェコ代表GKのチェフ、好セーブ連発(横浜)
日本代表 0−0 チェコ代表
「選手たちの出来には満足している。いい意味でのサプライズだった」
 2試合連続無得点でのドローという結果にもかかわらず、試合後のアルベルト・ザッケローニ監督は新システムへの手ごたえを口にした。国内組がスタメンの7人を占めたペルー戦とは異なり、この試合は逆に7人が海外組。長友佑都(インテル・ミラノ)が左、内田篤人(シャルケ04)が右のサイドハーフに入り、本田圭佑(CSKAモスクワ)は右のトップに起用された。選手交代も3人にとどめ、現状でのベストとも言えるメンバーで90分間、3−4−3をテストした。

「バイタルエリアかサイドのところで1人がフリーになれる利点がある」と指揮官は新システムの長所を語る。しかし、前半はあまり、その良さを生かせなかった。チェコはサイドを固め、内田、長友の侵入を許さない。ならばと前半12分には本田のパスを受けた長谷部誠(ヴォルフスブルク)が空いたバイタルエリアにドリブルで仕掛け、ミドルシュートを放つ。これはゴール右に逸れた。

 日本は速い縦パスをゴール前に通そうと試みるものの、なかなかつながらない。スピードが不足すれば、当然のことながらフリーにはなれず、ボールを持っても出しどころに迷うシーンがたびたび見られた。前半で連動した攻撃が見られたのは、35分に中央で岡崎慎司(シュツットガルト)と李忠成(サンフレッチェ広島)のパス交換から相手の最終ラインを突破しようとした場面くらい。岡崎が倒され、FKを得たが、遠藤保仁(ガンバ大阪)のキックは相手GKペトル・チェフ(チェルシー)のパンチングに阻まれた。

 代表戦では5番目に多い65856人を集めたスタジアムも徐々にトーンダウンして折り返した試合は、後半に入って日本がペースをつかむ。キーになったのは本田だった。右サイドのトップにいた背番号18がトップ下のポジションに顔を出し、バイタルエリアでうまくボールをさばくようになる。後半4分には岡崎にスルーパスを供給。これは相手DFに阻まれたものの、続く7分には左ショートコーナーのボールを受けて、ファーサイドへクロスを送る。これに李が合わせ、最後は吉田麻也(VVVフェンロ)がヘッドで飛び込むも、ボールはバーの上を越えた。

 さらに16分には本田から左サイドの長友に大きく展開。長友の折り返しを李が受けて、前線に走り込んだ本田に送ろうとしたが、これはうまくつながらなかった。そして迎えた最大のチャンスは32分だ。左サイドから前線へ浮き球のクロスを送ると、岡崎がヘッドで合わせる。だが、これは相手GKチェフが横っ飛びでパンチング。なおも李がこぼれ球を狙ったが、またもやチェフが左手一本でかきだし、ゴールを割らせない。

「(中に入る判断は)私と本田選手の間で決めた。彼は頭がいい。サイドにはスペースがなく中にあったので、トップ下に入りながら岡崎選手を2トップの一角のところに押し出してくれた」とザッケローニ監督。FKではふかす場面も多く、精彩を欠いた本田だが、この判断は日本の攻撃に活力を与えた。

 ただ厳密に言えば、これは3−4−3が機能したというより、本田が中央に入る3−5−2の派生形がうまくいったと言うべきだろう。ザッケローニ監督は「3−4−3のシステムはオプションのひとつ」と強調し、「必要な時のためにとっておく」と語った。しかし、この2試合を見る限りでは、どんな場面でこのシステムを活用するのが有効なのかは伝わらなかった。

「(アジア杯を制した)4−2−3−1のシステムには自信を持っている。新しいことにチャレンジするのはリスクを伴う」
 キャプテンの長谷部は、そう前を向いた。コパ・アメリカの不参加が決まり、9月のW杯予選までに実戦の機会は今回の2戦を含む3試合のみ。本番で新しいやり方を試すわけにはいかず、ここで指揮官の代名詞とも言えるシステムをテストしたのは誤りではない。ザッケローニ監督は真面目でシステムに縛られがちな日本人の特徴を踏まえた上で、3−4−3導入の決断をしたと明かし、「他の国でやっていたら、今日のような結果は出なかった」と選手たちの飲み込みの早さを讃えた。

「詰め込みすぎたというくらい情報を与えた」という、この数日間がどんな果実を生むのか。次は8月に宿敵・韓国をホームに迎え撃つ。

<日本代表出場メンバー>

GK
川島永嗣
DF
今野泰幸
伊野波雅彦
→槙野智章(64分)
長友佑都
内田篤人
吉田麻也
MF
遠藤保仁
→家長昭博(64分)
長谷部誠
FW
李忠成
岡崎慎司
→関口訓充(89分)
本田圭佑