このたび監督代行として指揮を執ることになりました。長冨監督の後を受けてチームを率いるのは昨季の長崎に続いて2度目です。ただ、コーチ2年目で各選手の能力や性格も把握できていた長崎の時とは異なり、三重では春からチームを見始めたばかり。昨季から指導してきた前原博之コーチもいますし、フロントから「監督代行に」との話をいただいた時は少しビックリしました。しかし、1勝15敗1分と散々な成績が続いている中、迷っている暇はありません。自分のやれる範囲で精一杯やってみようと、すぐに代行就任を引き受けることを決めました。
 チーム全体を預かる立場になって、まずとりかかったのは投手陣とのコミュニケーションです。これまではコーチとして野手を担当していたため、各投手とじっくり話をする機会はありませんでした。指導者が変わったからといって、技術面を急に伸ばすのは難しいものです。ただし意識が変われば、出しきれていなかった自分の能力を発揮するかもしれません。それぞれの選手に自分の野球観を伝えながら、どんな思いで日々取り組んでいるのかを聞き出しました。

 それらを踏まえて、次は役割分担をはっきりさせました。抑えは元千葉ロッテの末永仁志、セットアッパーは清水信寿と当面のポジションを固定したのです。末永は元NPB選手ということもあり、投手陣のまとめ役になっています。ストレートも力強く、責任のあるポジションを任せるには適任だと考えました。

 清水に関しては本人とコミュニケーションをとる中で、ストレートをアピールしたいとの希望がありました。ならば先発より短いイニングのリリーフがベストでしょう。試合終盤の3イニングは末永と清水に託し、先発は6回まで。そんなゲームプランを構築しました。

 先発は洪成溶糸川諒の2人が最低限ゲームはつくっています。残りの投手陣がローテーションの谷間での先発や、中継ぎで頑張れば、戦える態勢はできてきました。このところ、ようやく結果も出るようになり、チームの雰囲気も良くなっているように感じます。

 そして、この6月より中日で活躍した野口茂樹がチームの一員に加わりました。我々も投手の指導は専門ではないため、彼に頼る部分は少なくないでしょう。本人もそれを理解し、若い選手に自分から積極的に話しかけ、溶け込もうとしてくれています。これは本当にありがたいことです。

 もちろん、野口には戦力としての期待もかかります。現状はブランクがあるため、シート打撃で何回か登板し、打者と対戦する感覚を取り戻してもらおうと考えています。6月24日からはホーム3連戦がありますから、そのどこかでマウンドに立てるのが理想です。

 何試合やっても勝てなかった時期を経て、選手たちは遅ればせながら目が覚めてきました。後期こそは見返したいという気持ちは誰もが持っています。これからのスリーアローズをファンの皆さんはぜひ楽しみにしていてください。
 

古屋剛(ふるや・つよし)プロフィール>:三重スリーアローズ監督代行
1970年4月13日、東京都出身。駿台甲府高、拓大、新日鉄君津を経て1997年、ドラフト7位で内野手として西武に入団。翌年、1軍デビューを果たし、8年間のプロ生活で79試合に出場した。04年限りで戦力外通告を受け、現役引退。通算成績は打率.187、1本塁打、6打点。09年から長崎のコーチとなり、10年5月からは長冨浩志前監督の解任に伴い、監督に昇格。11年は再び長富監督の下、三重のコーチに就任する。だが、長富監督辞任の後を受け、5月17日より監督代行として指揮を執る。
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