今年も芝の季節到来だ。20日(現地時間)からウィンブルドン選手権(全英オープン)が行なわれる。日本人選手で注目すべきは、現在自己最高位、そして日本女子のトップである世界ランキング42位、森田あゆみだ。昨年のウィンブルドンで4大大会初勝利を挙げた森田は、今年1月の全豪オープンで3回戦に進出するなど、今最も勢いに乗っている。果たして、今年のウィンブルドンではどんなプレーを見せてくれるのか。
 2004年、森田は史上最年少の14歳で全日本選手権ベスト8入りを果たすと、翌年には、15歳1カ月という日本テニス界では男女あわせて史上最年少(当時)でプロ入りを果たした。同年の全仏オープンの女子ジュニア部門、世界スーパージュニアテニス選手権でシングルス準優勝するなど、ジュニアでは世界トップの実力であることを証明した。さらに、同年の全日本選手権で初優勝を遂げ、国内での地位を確立した。

 こうして“天才少女”の名を欲しいままにしてきた森田だが、シニアではなかなか勝つことができなかった。初めて4大大会の本戦に出場した2007年のウィンブルドンで初戦敗退。08年の全仏オープンでは初めて予選なしのストレートインとなったが、初戦の壁を破ることはできなかった。その後も4大大会では初戦敗退が続いた。

 ようやく初勝利を挙げたのは昨年のウィンブルドン。33歳(当時)のベテラン、タマリネ・タナスガーン(タイ)にストレート勝ち。4大大会9度目の挑戦にして、ようやくつかんだ白星だった。そして今年の全豪オープンでは初めて3回戦進出を果たし、大会後のランキングでは自己最高位、日本女子のトップとなる48位に浮上。ベテランのクルム伊達公子がランクを下げ続けている中、現在は6日に更新した42位をキープし続けている。

 彼女の飛躍の背景には、精神面での成長が挙げられる。「技術だけでなく、メンタルの勝負があること学び、どうすれば勝てるのかわかってきました」とコメントしたのは、今年の全仏1回戦だ。18歳のクリスティナ・マダナビッチ(フランス)に2−6で第1セットを奪われたものの、森田は第2セットを6−4で奪い返した。だが、第3セットは再び相手に主導権を握られ、3−5と後がなくなった。しかも、次は相手のサーブゲームと、まさに万事休すだった。しかし、ここから森田は脅威の集中力を見せた。2度のブレークで3ゲームを連取して6−5と逆転。最後は3度のデュースを経てつかんだ最初のマッチポイントで決めきったのだ。彼女にとっては、「全仏初勝利」ということ以上に、自分の成長を感じることができた嬉しい1勝だったのではないか。

 また、今月行なわれたウィンブルドンの前哨戦ともいえるエイゴン・クラシックでも新たな成長を見せている。初戦の相手は予選を勝ち上がってきた18歳の新鋭、アイラ・トムリャノビッチ(クロアチア)。ランキングこそ166位と格下ながら、180センチの長身から繰り出すサーブとストロークは威力十分。どちらかというと、森田が苦手とする相手だ。しかし、森田はパワーテニスに屈することなく6−3、3−6、7−6で下した。最終セットはタイブレークまでもちこむ粘り強さで2時間を超す接戦を制したのだ。ウィンブルドンと同じ芝でのこの勝利は、森田に大きな自信を与えたに違いない。

 さて現在、森田が課題として取り組んでいるのがサーブだ。体を大きくし、世界トップクラスと互角に渡り合えるほどの威力あるサーブの取得を目指している。今年の全仏では2回戦で同世代のヤニナ・ウィックマイヤー(ベルギー)と対戦。4−6、5−7と善戦したものの、サーブ力の差を痛感させられた試合となった。一朝一夕で克服できるものではないが、ウィンブルドンではこうした相手にどう戦うのか、注目したい。