サッカーのU-17W杯は3日(日本時間4日)、メキシコ・ケレタロで準々決勝が行われ、日本代表はブラジル代表と対戦した。日本は前半にCKから1点を失うと、後半に入っても立て続けに2点を失い、3点ビハインドを背負ってしまう。日本はラスト15分を切ってから反撃を開始し、2点を返したが一歩及ばず、2−3で敗れた。

 早川、2試合連続ゴールも実らず(ケレタロ)
日本代表 2−3 ブラジル代表
【得点】
[日] 中島翔哉(77分)、早川史哉(88分)
[ブ] レオ(16分)、アデミウソン(48分)、アドリアン(60分)
 新たな歴史の扉を開くことは叶わなかった。サッカー王国ブラジルとの準々決勝。決勝トーナメント1回戦ではニュージーランドに6−0と圧勝し、史上初のベスト4進出へ大きな期待を抱かせた。だが、その壁は乗り越えられそうで乗り越えられなかった。

 立ち上がり、日本は前線からプレスをかけ、ブラジルに思うように攻撃をさせない。しかし、個人技で上回るブラジルはわずかなほころびをも突いてくる。前半13分には日本の守備陣が引き気味になったところをMFギレルメが中央突破してシュート。その2分後には、右サイドからボールをワンタッチでつなぎ、ゴール前に迫ってCKを獲得した。

 このCKにニアに飛び込んだのはFWレオ。頭で合わせたボールは孤を描いてゴールに吸い込まれた。0−1。日本は先制を許す。早く反撃したい日本はパスをつないで相手ゴールを目指すも、ラストパスがつながらない。逆に不用意なプレーで危ない場面を招くなど、日本は劣勢で試合を折り返した。

 後半開始早々、日本は中央の高い位置でボールを奪うと右へ展開。MF石毛秀樹(清水ユース)が角度のないところからシュートを放つ。これはゴール左に外れたが、前半には見られなかった思い切りのいいプレーで局面の打開を図る。

 しかし、それもつかの間だった。後半3分、左サイドでボールを持ったギレルメに対するチェックが甘く、フリーでクロスを上げられると、前線でもFWアデミウソンを自由にさせてしまう。今大会4ゴールをあげているストライカーがこれを見逃すはずがない。冷静に左足でゴールに押し込まれて0−2。さらに後半15分、そのアデミウソンのシュートに対するこぼれ球をFWアドリアンが拾うと、日本の最終ラインをあざ笑うかのようにドリブルでかわす。そのまま左足から放たれたシュートは無情にもゴールネットを揺らした。

 0−3。日本にとっては致命的な3点ビハインド。だが、ブルーのユニホームを身にまとった若者たちは最後まで諦めなかった。流れを変えたのは、相次いで投入されたFW中島翔哉、DF高木大輔の東京Vユースコンビだ。後半32分、カウンターから高木が右サイドを抜け出すと、折り返しのボールに中島が駆けこんで右足を振り抜く。1−3。ブラジルDF陣を完全に崩し、反撃ののろしをあげた。

 日本はこれで息を吹き返した。個人技でダメ押し点を狙いに行くカナリア軍団に対し、激しいチェックでボールを奪うと、次々と攻撃をしかける。後半37分にはフリーになった早川史哉(新潟ユース)が左サイドからループシュート。これは相手GKが左手を大きく伸ばして弾き出し、惜しくもゴールには至らない。その直後には、DF室屋成(青森山田高)がフワッと浮かせたボールに前線に詰めていた岩波拓也(神戸ユース)が反応。抜け出してシュートを放つが枠を捉えきれなかった。

 そして日本ペースの時間が続いた終了間際、待望の得点が生まれる。後半43分、室屋が左サイドからミドルシュートを放つと、GKがキャッチしきれず、CKを得る。このCKに岩波が合わせたヘッドはバーを叩くも、そこには早川が待っていた。頭で押し込み、2−3。ついに1点差に迫った。

 勢いの出た日本は前線にロングボールを送り込み、なおもブラジルゴールを脅かす。後半45分には石毛がPAの外から右サイドへ粘って持ちこみ、グラウンダーのクロス。ただ、これは飛び込んだ高木にわずかに合わなかった。ロスタイムに入っても日本の攻撃は止まない。果敢に前を向いて攻めるも、ブラジルも試合巧者だ。選手交代などで時間を使い、奇跡を起こすことはできなかった。

 日本がU-17W杯でベスト8に進んだのは93年の日本大会以来18年ぶり。この時は中田英寿、宮本恒靖(神戸)、松田直樹(松本山雅FC)らを擁してグループリーグを突破した。そして3年後、中田や松田はアトランタ五輪代表として、“マイアミの奇跡”を起こし、その後の日本サッカー界を牽引する世代になった。

「今後、五輪やワールドカップでブラジルと戦ったときにまた良い試合をしてくれると思う」
 敗れた吉武博文監督は、そう選手たちの今後に期待を寄せた。今大会で彼らがみせた縦に早いパス回しや決定力の高さは、まさに日本サッカーに求められていたもの。それを世界の舞台で体現した彼らが、この敗戦を糧にどこまで成長するのか。近い将来、五輪やW杯で新たな歴史をつくりそうな楽しみな世代が出てきた。