サッカーの女子W杯ドイツ大会で優勝したなでしこジャパン(日本代表)が18日、帰国し、都内ホテルで会見を開いた。目標としていたメダル獲得が優勝という最高の結果となり、監督、選手たちは皆、晴れやかな表情。佐々木則夫監督が「チーム一丸となって結束した結果。喜びに堪えない」と笑顔をみせれば、主将の澤穂希(INAC神戸)は「世界一になる夢を諦めずにやってきて良かった」とうれしそうだった。
(写真:トロフィーを手に写真撮影でもなごやかムード)
 壇上に並んだ4つのトロフィーに、胸には金メダル。大挙した報道陣による無数のフラッシュに反射し、それらがキラキラと反射する。これこそが日本サッカー界が欲しくても手の届かなかった輝きだ。そして何より、頂点に立った選手たちの顔がまぶしかった。

「女子代表になって18年目。ここまでの道のりは長かった。世界の金メダルを獲ることは考えられなかった。こんな日が来るとは思っていなかったので重みのある金メダルです」
 長く日本の女子サッカー界を牽引してきた澤は金メダルを手に喜びをかみしめていた。ドイツ滞在中はまだ優勝が夢のようだったが、帰国してのフィーバーぶりを目の当たりにし、「ようやく実感が湧いてきた」という。

 改めて大会を振り返ってみても激闘の連続だった。準々決勝のホスト国・ドイツ戦、決勝のFIFAランキング1位・米国戦。いずれも過去1度もAマッチで勝ったことのない相手を延長戦の末、下した。「大国に耐えて耐えて偉業を成し遂げた。短期間で成長してビックリしている」と佐々木監督も選手たちの頑張りに驚きを隠せない。そんななでしこたちが共通の勝因としてあげたのが「団結力」だ。

「全員が最後まで諦めず、なでしこらしい団結を出せた大会だった」
 そう澤が語れば、司令塔の宮間あや(岡山湯郷)は「チーム全員、それぞれ思いがあったが、6試合、ピッチにすべてを置いてきた結果」と強調。安藤梢(デュイスブルク)は大会中の印象に残っていることとして、ドイツ戦の勝利後、「山郷(のぞみ)さんがジャンプをしながら則さん(佐々木監督)とハイタッチをして、ベンチも涙を流して喜んでいた」シーンをあげ、「試合に出られない選手もひとつになって声を出してくれた」と控えの選手たちに感謝した。一方、大会では出番のなかった高瀬愛実(INAC神戸)は「悔しい思いもあった」と正直な気持ちを明かしつつも、「ピッチに立っている11人が、ベンチにいる人、日本にいる人の気持ちを背負って戦ってくれた」と出場選手を称えた。
(写真:今大会最多の4アシストに2ゴールと活躍した宮間)

 今大会の優勝で女子サッカーにはかつてないほどの注目が集まっている。彼女たちは代表選手といえどもプロ契約を結んでいるのは一部。多くの選手はアルバイトや仕事をしながら練習や試合に臨んでいる。この快挙を日本女子サッカー界の発展につなげるためにも、さらなる待遇改善と環境整備が必要だ。プロとしてプレーする澤は「中学校で(サッカーを)できる環境がない。そこに力を入れていただければ」と要望も口にした。

 世界一になった歓喜もそこそこに、なでしこたちは新たな戦いが待っている。24日には国内のなでしこリーグが再開。9月1日からはロンドン五輪への出場権をかけ、アジア最終予選(中国・済南)がスタートする。11日間で4試合をこなすハードスケジュールだ。
「この優勝に恥じることなく、来年もなでしこの雄姿をお見せできるように結果を残していきたい」
 佐々木監督が掲げる次なる目標は、もちろん五輪での金メダル。過去、W杯での優勝国が翌年の五輪も制したケースはなく、前人未踏の挑戦となる。このW杯を集大成と位置付けていた澤も「金メダルを目の前にすると、人間、欲が出ちゃう」とロンドンまで戦い抜くことを誓った。
(写真:大会MVPと得点女王のW獲得にも「今まで携わってくれた人、チームメイトのおかげ」と謙虚な澤)

「夢は見るものではなく叶えるもの」(澤)
 ひとつの夢を叶えたなでしこたちは、もうひとつの夢を叶えるため、今日から女王として新たなスタートを切る。