おかげさまで前期は球団初の優勝という結果を残すことができました。3年前に愛媛で後期優勝した際、選手たちから胴上げしてもらいましたが、それはコーチとしてのもの。やはり監督としての胴上げされる気分は格別のものがありました。監督就任以来、「優勝しよう」と言い続けてきただけに、選手たちがそれを本当に実現してくれたことはうれしかったです。
 前期の戦いを振り返ると、前半は打線が投手陣を助け、後半は逆に投手陣が踏ん張った試合が目立ちました。本来なら投打の歯車がかみ合うスタイルがベストですが、そうでなくてもお互いがカバーし合い、最後まで諦めずに戦ったことが結果につながったのでしょう。

 チームをひとつにする上で、大きかったのは根鈴雄次の加入です。彼はこの8月で38歳。ひとまわり年齢の離れた若手たちを相手に、いいコーチ役を務めてくれました。もちろん成績も打率.300を超え、申し分ありません。前回も紹介したように前期MVPを獲得した松嶋亮太にも熱心にアドバイスをしていました。根鈴のような存在はチームにとって本当に助かります。個人的には彼に前期MVPをあげたかったくらいです。

 その前期MVPに輝いた松嶋は、シーズン始めに矯正した打撃フォームをうまく自分のモノにしています。現在の打率は.411。リーグ初の4割打者への期待も高まってきました。ただ、ここまで打てば、相手も当然マークはしてきます。包囲網の中でどれだけ打てるのか。真価が問われるのはこれからです。

 より上のレベルに到達するための課題をあげるとすれば、変化球への対応です。松嶋は新フォームのおかげで真っすぐに関してはしっかり仕留められるようになってきました。しかし、これだけ打てば相手は変化球で何とか崩そうと試みてきます。その点を意識しつつも直球に振り遅れず、うまく変化球を拾う打撃を身につければ、ドラフト指名される可能性は大いにあると考えています。

 変化球への対応に加え、欲を言えば長距離も打てる打者になってほしいものです。守備もショート、サードを無難にこなします。大型内野手になれる素質は十分にあるでしょう。これまでは気楽に打撃ができるよう打順も6、7番を打たせていましたが、今後は左投手では1番、それ以外の時はクリーンアップを任せてみようかと考えています。そこで勝負強く結果を残せば、またワンランク上に行けるのではないでしょうか。

 前後期制覇を狙う上でポイントになるのは、3番手、4番手の先発投手の存在です。後期は前期とは異なり、最初から相手チームは力のある投手をつぎ込んできます。打線は好調を維持しているとはいえ、打てないことも出てくるでしょう。取れる時に1点を取り、ムダな点をやらない。前期以上に、ここが大事になります。

 その候補として期待しているのが、18歳の河野章休藤岡快範です。ここまでは河野は1勝4敗。まだ若いため、今年は彼にとって経験の年と位置づけています。いいボールがあり、5回頃まではスイスイといい投球をみせるのですが、後半に乱れるところが今の課題です。これを解決するにはスタミナのみならず、力の出し入れを覚えることが重要になるでしょう。彼はどちらかと言えば、バッターを打たせてとるタイプ。常に全力投球では、体力を余分に消耗してしまいます。コントロールよくボールを投げ、1球で仕留める。そういった投球術も覚えれば、勝てるピッチャーになるはずです。

 後期はドラフト会議に向けて最終アピールをする時期にもなります。勝敗はもちろん、選手の育成も大切です。今回、リーグ選抜の監督に選ばれ、7月末に横須賀でフューチャーズとの3連戦を実施することになりました。リーグ選抜の野手に関しては若手を多めに起用したつもりです。選手たちには、NPBの選手を相手にいいプレーでスカウトに存在感を示してほしいと考えています。引き続き、応援よろしくお願いします。 



斉藤浩行(さいとう・ひろゆき)プロフィール>: 徳島インディゴソックス監督
1960年5月10日、栃木県出身。宇都宮商から東京ガスを経て、82年にドラフト2位で広島入り。パワーを武器にポスト山本浩二として期待を集める。目のケガもあって1軍ではなかなか活躍できなかったが、2軍では3度の本塁打王を獲得。ファーム通算161本塁打は最多記録として残っている。89年に中日、91年に日本ハムへと移籍し、92年限りで引退。06年からは愛媛のコーチを6年間に渡って務めた。11年より徳島の監督に就任。現役時代の通算成績は228試合、打率.196、16本塁打、41打点。
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