3月22日に開幕した第80回選抜高校野球大会が4日、沖縄尚学の9年ぶり2度目の優勝とともに14日間にわたって行われた熱戦の幕を閉じた。常葉菊川(静岡)、横浜、東洋大姫路(兵庫)、智弁和歌山、明徳義塾(高知)……次々と優勝候補が甲子園を後にする中、決勝にコマを進めたのは今大会最年少監督率いる沖縄尚学と初出場初優勝を狙う聖望学園(埼玉)だった。
 下馬評ではエース同士の投げ合いとなることが予想されたが、試合が始まってみると、序盤から打線が爆発した沖縄尚学が完全に試合の主導権を握るワンサイドゲームとなった。投げてはエースの東浜巨(3年)が3連投の疲れも見せずに聖望学園打線を今大会2度目の完封に仕留めた。6回以降は沖縄尚学を無失点に抑えた聖望学園だったが、最後まで反旗を翻すまでにはいたらず。沖縄尚学が9−0で聖望学園を破り、紫紺の優勝旗を手にした。

◇決勝
 沖縄尚学、圧勝で9年ぶり2度目の全国制覇!
聖望学園(埼玉)   0 = 000000000
沖縄尚学       9 = 11403000×
【本塁打】
(沖)伊古


 記念大会ということで例年より4校多い36校が出場した今大会は、開幕ゲームから接戦が相次ぎ、緊迫したゲームが多かった。2点差以内の試合は37試合中26試合(再試合含む)と約7割を占める。ちなみに昨年は31試合中18試合、一昨年は32試合中14試合(再試合含む)。今大会がどれだけ接戦が多かったかが一目瞭然だろう。

 また、決勝にコマを進めた2校に代表するように、ピンチの時もエラーの時もグラウンドでは選手の笑顔が多々見られたことが印象的な大会だった。これは気の緩みでも何でもない。どんなときも仲間を信じ、自分を信じる“心”の強さ――。それが笑顔の持つ意味合いではなかっただろうか。

 思えば昨春、初出場ながら準優勝に輝いた大垣日大(岐阜)もまた、笑顔の絶えないチームだった。指揮官は東邦(愛知)時代、“鬼の阪口”と呼ばれた阪口慶三監督だった。厳しい指導の下、東邦を春夏合わせて24度も甲子園に導き、春は優勝、夏は準優勝にまで上り詰めた名将である。

 阪口監督は2005年に大垣日大の監督に就任した。それからというもの、“仏の阪口”に一変した。自ら「“鬼の阪口”が“仏の阪口”になりました」と語るほど、今や優しい笑顔がトレードマークとなっている。大会中も、選手がどんな失敗を犯しても決して叱らず、ベンチから「笑え」「楽しめ」のサインを送り続けていた。

 そんな指揮官を選手たちは心から信頼していた。だからこそ、希望枠として選出され、初出場ながら準優勝にまで上り詰めることができたのだろう。

 済美(愛媛)、神村学園(鹿児島)、清峰(長崎)、大垣日大、そして聖望学園と選抜では5年連続で初出場校が決勝へとコマを進めている。いずれも共通しているのは結果を恐れない“伸び伸びプレー”だ。それが“笑顔”にも現れている。伝統校に受け継がれた“鍛錬”とはまた一味もふた味も違う新しい高校野球のスタイルができあがりつつあるのかもしれない。