四国・九州アイランドリーグは5日、4年目のシーズンが開幕する。今季より長崎セインツ、福岡レッドワーブラーズの九州2球団がリーグに加わり、6チームで前後期合わせて80試合を戦う。昨年より試合数こそ減ったものの、四国−九州間の長距離移動が加わり、選手には今まで以上の自己管理が求められる1年になりそうだ。激戦を勝ち抜き、最後に笑うのはどの球団か? 各チームの戦力を分析してみたい。

(写真:昨季の覇者、香川の西田監督)
香川オリーブガイナーズ
★07年成績
前期 27勝10敗8分 1位
後期 28勝13敗4分 1位

 松尾、堂上の穴埋めがポイント
 リーグ3連覇を狙う香川だが、投手力は昨年よりやや落ちるか。なんといっても開幕前に発表された松尾晃雅のレッドソックス入りが大きい。天野浩一(BCリーグ・福井兼任コーチ)、亮寛らNPB経験者もチームを去り、若手主体の陣容になることは間違いない。加藤博人投手コーチは先発ローテーションの1枠をあえて空け、どんどん選手たちにチャンスを与える方針だ。

 野手ではトップバッターの洋輔、クリーンアップの堂上隼人、智勝、丈武と昨季のベストナイン勢が不動のオーダーを形成。そこへ俊足堅守の外野手、笠井要一(天理高−天理大)ら期待の新人も加わり、層が厚い。ただ、堂上はレッドソックスと入団交渉中で、シーズン途中でチームを離れる可能性がある。強肩強打の捕手として攻守にチームをまとめてきた扇の要が抜けた時にどう戦うか。「育てながら勝つことが目標」と語る西田真二監督をはじめとする首脳陣の腕のみせどころだ。

愛媛マンダリンパイレーツ
★07年成績
前期 22勝19敗4分 2位
後期 26勝17敗2分 2位

 “史上最強”打線で投手をカバー
 悲願の初優勝を狙う今季の愛媛は“打高投低”のチームになりそうだ。昨季の首位打者・比嘉将太を中心に左の檜垣浩太、右の大島慎伍とジグザグに組まれたクリーンアップは強力。新入団でも、智弁和歌山高時代に甲子園を沸かせた島田好高(智弁和歌山高−法政大)などパンチ力のあるバッターが揃った。控えには長打力が魅力ので沖泰司監督が“秘密兵器”と語る川邊英也(柏原高−城西大)がいる。
 先の6球団トーナメントでは昨季、0勝5敗と歯が立たなかった香川の塚本浩二を3回までに10点を奪ってKOした。沖監督が「球団史上最強」と称する打線に、テーマに掲げた「走る」野球が加味されれば、さらに抜け目のないチームになるだろう。

 投手陣では昨季の最多勝を獲得した梶本達哉がオリックス入り。エースの浦川大輔も福岡へ移籍した。新加入が半数を占めるため、速球派右腕の森琢哉、4年目を迎える宇都宮勝平がフル回転する形になるかもしれない。そんな中、昨季の最優秀防御率男・近平省悟がヒジの手術から回復し、選手登録されたのは朗報だ。

高知ファイティングドッグス
★07年成績
前期 19勝22敗4分 3位
後期 21勝19敗5分 3位

 戦力の大幅入れ替え、成功なるか
 昨年の球団消滅騒動を乗り越え、経営陣、首脳陣が一新。宮本裕司、白川大輔(いずれも千葉ロッテ)、小山田貴雄(東京ヤクルト)の3選手がNPB入りし、選手の顔ぶれはガラリと変わった。新チーム結成後、オープン戦やNPBとの交流試合で6連敗と歯車が噛み合わなかったが、先の6球団トーナメントでは長崎、徳島を破って決勝に進出した。

 打線では4番の真輝を中心に、昨季、中軸を務めて自信をつけた中村龍央、不本意なシーズンからの巻き返しを狙うYAMASHINら、実力のある打者が揃う。韓国から獲得したオ・ムヨルもいい。
 一方で投手陣は頭数が足りないのが実情だ。現時点ではわずか7名の登録でシーズンを乗り切るには心もとない。当面は昨季11勝をあげた西川哲哉を軸にやりくりしながら、補強を行いたいところだ。大幅な選手の入れ替えで未知数の部分は多いが、川崎宗則など現在のソフトバンクの主力選手の多くを育てた定岡智秋監督の育成術に期待したい。

徳島インディゴソックス
★07年成績
前期 12勝29敗4分 4位
後期  7勝33敗5分 4位

 屈辱をバネに戦力底上げ
 4期連続最下位に加え、後期は45試合でわずかに7勝。どん底を見た昨年までの在籍選手たちが成長をみせ、今年は楽しみなチームになってきた。
 投手陣では昨シーズン同様、渡邊隆洋、片山正弘が先発の柱になる。渡邊は4勝13敗、片山が3勝15敗と負けが込んだものの、1年間を投げぬいたことが今季にいきるはず。白石静生監督は「2人合わせて20勝を」とハッパをかける。カープから入団した梅原伸亮が抑えを務める予定で、投手陣は例年以上に整備された。

 野手では4年目の山口寛史、小松崎大地、大二郎が確実にレベルを上げている。1年目は期待はずれだったオーストラリア人助っ人のアティングも、日本野球に慣れて本領を発揮するだろう。さらに大きいのがソフトバンクからやってきた伊奈龍哉。1発のあるバッターがクリーンアップに入り、怖さのある打線になった。最下位に沈んだ2シーズンは、投打の力不足に加えて、つまらない守備のミスが目だった。雪辱のシーズンとするには、エラーを減らすことも大切だ。

長崎セインツ
★新規参入

 “化ける”若手に期待
 ソフトバンク2軍との交流戦では3−22と大敗、同じく新規参入の福岡とのオープン戦は2試合で21失点。現状をみると他球団と比べて、やや力が落ちる評価を下さざるを得ないだろう。ただ、分配ドラフトで獲得した選手には有望株も多く、経験を積む中で飛躍的に成長を遂げるかもしれない。投手では愛媛から移籍した左腕の安達輝誠、MAX144キロ右腕の土田瑞起(鎮西学院高)、打者では昨年のNPB交流戦でアーチをえがき、スカウト陣の注目を集めた高井啓行(元高知)あたりが能力を開花できるか。

 若く経験の浅い選手が多いだけに、当面は元NPBや助っ人に頼るところは大きい。元西武の前田勝宏やカープドミニカーアカデミーから派遣されたゲレロ、ソリアーノがまずは結果を残し、兼任コーチに就任した藤本博史がマスクをかぶって若手投手をリードしたいところだ。前期シーズンは苦戦が予想されるが、若手が順調に力をつければ、後期には面白いチームになるはずだ。 

福岡レッドワーブラーズ
★新規参入

 投打に充実、台風の目に
 新規参入ながら優勝候補の一角にあげてもよいチームだ。投げては愛媛のエース・浦川大輔、徳島の角野雅俊と実績のある2投手を獲得。さらには新加入の中江信(北九州高−北九州市民硬式野球クラブ)は今季のナンバーワンルーキーとの呼び声が高い。ボールに力があり、ソフトバンク2軍との交流戦でもNPBの打者相手に無失点ピッチングをみせた。故障からリハビリ中の金無英(キム・ムヨン)がクローザー役に収まれば、他球団には手ごわい存在となる。

 打ってはリーグ初年度の2冠王・山本健士(元高知)、分配ドラフトで獲得した西村悟(元徳島)、荒木康一(元愛媛)ら長打力のある打者が中軸に座る。その脇を國信貴裕、土佐和広(いずれも元高知)ら足の使える打者が陣取り、バランスのとれた打線を形成している。新球団ゆえ練習場の確保などがままならず、実戦不足でシーズンに臨むが、春先で波に乗れば初年度Vがみえてくる。

<4月5日(土)の予定> ( )内は予告先発
アグリあなんスタジアム 徳島(片山)−愛媛(森) 13時
県営春日球場       福岡(浦川)−高知(西川) 18時
佐世保野球場       長崎(酒井)−香川(塚本) 18時


太陽石油はアイランドリーグのオフィシャルスポンサーです[/color][/size]