11日、ブラジルW杯アジア3次予選第4戦がタジキスタンのドゥシャンベで行われ、日本代表はタジキスタン代表と対戦した。日本は前半36分、今野泰幸(FC東京)の代表初ゴールで先制すると、後半17分には岡崎慎司(シュツットガルト)が追加点を決める。その後も攻撃陣がゴールを重ねると、守備陣も無失点で試合を終え、快勝した。日本はこの後行われたウズベキスタン対北朝鮮戦で北朝鮮が敗れたため、2試合を残して最終予選進出が決定した。

 岡崎、2試合連続の2ゴール(ドゥシャンベ)
タジキスタン代表 0−4 日本代表
【得点】
[日] 今野泰幸(36分)、岡崎慎司(62分、90分+3)、前田遼一(83分)
 圧勝を呼び込んだのはザックジャパンの適応力と高い技術力だ。試合が行われたドゥシャンベセントラルスタジアムは芝がはげ、デコボコしたピッチでボールがまともに転がらない。それでも選手たちは悪条件に順応し、持ち前のパスワークでタジキスタンを一蹴した。

 立ち上がりは苦しんだ。日本はワントップに入ったFWハーフナー・マイク(甲府)にロングボールを入れ、その背後やこぼれ球をMF香川真司(ドルトムント)や岡崎が狙おうと試みる。しかし、10月の大阪・長居での試合でハーフナーに痛い目に遭わされたタジキスタンはマークを徹底し、日本は攻撃のかたちをうまくつくれない。

 それでも時間が経過するにつれ、相手のプレスも弱まり、徐々にピッチに慣れてきたのか、日本は細かいパスを繋ぐシーンを見せ始める。前半22分には、MF遠藤保仁(G大阪)からのパスをMF中村憲剛(川崎F)がワンタッチでペナルティーエリア(PA)内に送る。これに香川が反応するも、ボールがうまく収まらずシュートは打てなかった。

 守りもタジキスタンの積極的な攻撃に手を焼いた。MF長谷部誠(ヴォルフスブルク)が「危ないシーンが何回かあった。そこで(点を)取られていたら、厳しい試合になったと思う」と語ったように、シンプルな縦パスを入れられ、波状攻撃を受ける。前半16分にはゴール前に高いボールが入り、クリアボールを拾われてシュートを打たれた。これは吉田麻也(VVVフェンロ)がブロックしたが、そのこぼれ球からミドルシュートを許す。

 さらに32分にはロングボールを放り込まれ、ゴール前での混戦からD・バシエフに右足を振りぬかれた。これはゴール左ポストを叩いたものの、跳ね返ったボールが再び相手に渡ってしまう。続くシュートはバーを越え、事なきをえた。

 そんな中、アウェーならではの重い雰囲気を吹き飛ばしたのは、DFラインで相手の攻撃に耐えていたDF今野だった。36分、ピッチ中央左でパスカットし、一旦、味方に預けて前線に攻め上がる。そして、PA内でパスを受けた中村憲剛(川崎F)のシュートがこぼれたところに、勢いよく蹴り込んだ。これが今野にとって代表初ゴール。チームに流れを呼ぶ貴重な先制弾となった。日本はその後も攻め続け、前半を1−0で折り返す。

 後半に入ると、前半とは打って変わって日本が試合を支配した。開始早々、PA内左サイドでパスを受けた香川がドリブルから左足でシュートを放つなど、ゴールが生まれそうな雰囲気をつくる。すると14分、アルベルト・ザッケローニ監督は動きにキレが見られないハーフナーに代えて、FW前田遼一(磐田)を5カ月ぶりの代表のピッチへ。この交代が利いた。前田は中央でボールをしっかりとおさめ、香川や岡崎が前線に飛び出すスペースと時間を生み出す。

 迎えた17分、左サイド深くに抜け出した香川が、一瞬のスピードで相手を振り切り、ファーサイドへクロスを送る。そこにはフリーの岡崎がいた。頭で押し込み、2−0。待望の追加点が決まった日本はさらに攻勢を強めていく。

 そして38分、前田にも復活弾が飛び出した。PA手前でパスを受け、シュートコースがないと判断するや右にスライド。うまくマークを外してから右足を一閃する。前田にとっては1月のアジア杯カタール戦以来のゴールだ。前田が代表を離れていた5カ月、代表のワントップは李忠成(広島)とハーフナーが争ってきた。今後、彼らとの競争がさらに激化しそうな一撃だった。

 日本はロスタイムにも細かいパス交換から岡崎がこの日2得点目を決めてダメを押し、前がかりになったタジキスタンに引導を渡した。
「こういうグラウンドでも自分たちのサッカーを貫けた。中盤からマンネリ化したけど、パスをつないで勝てたのはよかった」
 タジキスタンに2試合連続で2ゴールを飾った岡崎は手応えを口にした。

 メンバー発表会見でザッケローニ監督は「(8−0と大勝した)10月のタジキスタン戦とはまったく違う内容になるだろう」と話していた。戦前は、足場の悪いピッチ状況からロングボールを主体にした攻めが有効とされ、立ち上がりの日本はそれを志向していた面があった。だが、うまくいかないと見るや、自分たちのスタイルであるパスサッカーに切り替え、終わってみれば大差をつけた。

 日本にとっては、3次予選最大のヤマともいえるアウェー2連戦。だが、同日に行われた試合で北朝鮮がウズベキスタンに敗れたため、この時点で日本の最終予選進出が決定した。残りの2試合は消化試合となるが、最終予選、そしてW杯を見据えた時、次の北朝鮮戦も貴重なアウェー経験になることは間違いない。日本は15日、未だ勝ったことのない平壌での一戦に臨む。

<日本代表出場メンバー>
GK
川島永嗣
DF
内田篤人
→伊野波雅彦(89分)
吉田麻也
今野泰幸
駒野友一
MF
長谷部誠
遠藤保仁
岡崎慎司
中村憲剛
→清武弘嗣(86分)
香川真司
FW
ハーフナー・マイク
→前田遼一(59分)