11日、FIFAクラブワールドカップの準々決勝が愛知・豊田スタジアムで行われる。対戦カードは開幕戦で勝利した柏レイソル(開催国枠)対モンテレイ(北中米カリブ海、初出場)、エスペランス(アフリカ、初出場)対アル・サッド(アジア、初出場)。今回は大会初戦となる柏以外の3チームを紹介する。
 モンテレイ
 高レベルのパスワーク&個人技

 初戦を突破した柏の次なる対戦相手は、細かいパスワークから攻撃を展開する“メキシカンサッカー”の体現者だ。クラブは1945年に創立され、86年のリーグ優勝以外はタイトルと縁がなかった。しかし、00年代に入って徐々に力をつけはじめ、03年に17年ぶりのリーグ優勝。09年、10年にはリーグ連覇を達成するなど、メキシコの強豪クラブのひとつに数えられるようになった。

 成長の要因として、近年はメンバーに大きな変動がなく、スタイルが安定していることがあげられる。攻守ともに組織的なサッカーを時間をかけて築き上げてきた。
そのなかで注目されるのがチリ代表のストライカー、ウンベルト・スアソ。身長は172センチと小柄な部類に入り、突出したスピードがある選手でもない。だが、彼は、ストライカーの最も大切な“ゴールへの嗅覚”を備えている。両足、頭と得点パターンも豊富だ。積極的にドリブルを仕掛けるタイプでないため、試合から消えている時間も少なくないが、常にゴールを狙えるポジション取りを意識している。相手のDFには、スアソのようなFWが一番厄介だろう。

 また、アルゼンチン代表で元リヨンのセサル・デルガドなど、海外経験が豊富な選手がスアソの脇を固める。今季、加入したデルガドは、左右のウィングをこなせる起用さと、高い得点力でクラブ初の北中米カリブ海制覇に貢献した。

 細かいパスを繋ぐメキシコサッカーに加え、高い個の力。これらが合わさる攻撃は、相手の脅威となるだろう。準々決勝で対戦する柏としては、いかにボールを支配できるかがカギになる。

 エスペランス
 攻守にバランスの取れた“新アフリカン・サッカー”

 アフリカ特有のフィジカルの強さ、そこに組織力を加えたダイナミックなサッカーが特徴だ。
中心を担うのは背番号10を背負い24歳にしてキャプテンも務めるウサマ・ダラギ。190センチの長身ながら足元の技術が高く、前線へ効果的なパスを供給する。派手なプレーは少ないが、多くの攻撃がダラギを経由しており、チームに欠かせないキープレーヤーだ。

 そして、前線にユセフ・ムサクニ、ヤニク・ヌジェングといったアタッカーが、スピーディかつフィジカルを活かした豪快なプレーで得点を狙う。両SBも積極的に攻撃参加し、波状攻撃から相手の防壁を打ち破る。アフリカ・チャンピオンズリーグでは14試合で24得点と抜群の破壊力を誇った。

 一方の守備も14試合で6失点。決して攻撃一辺倒のチームでないことを証明している。準決勝、決勝の4試合では無失点に抑えるなど、組織的な守備を披露し、見事、17年ぶりのアフリカ制覇を成しとげた。

 今季は国内リーグとカップ戦も制覇し、好調をキープしての参戦となる。南アフリカW杯ではガーナがベスト8に入り、クラブW杯では前回、コンゴのマゼンベが決勝に進出するなど、近年のアフリカサッカーの躍進は著しい。初戦のアジア王者のアル・サッドに勝てば、次はバルセロナとの対決が待っている。
 攻守にバランスの取れたチュニジア、いやアフリカ最強クラブが日本で旋風を巻き起こす。

 アル・サッド
 圧倒的な個の力 注目は元フランスリーグ得点王

 国内リーグ12回、国内カップ13回優勝を誇るカタールの常勝クラブだ。強さの秘密は、潤沢なオイルマネーで世界的な選手を次々と獲得してきたことが背景にある。かつてはブラジルの名ストライカー、ロマーリオも在籍していた。近年は元浦和のエメルソンといったJリーグクラブからの引き抜きも目立ち、現在は元鹿島のイ・ジョンスが所属している。

 カネにモノを言わせて揃えた選手だけに、その能力は高い。セネガル代表のママドゥ・ニアンは、09−10シーズンのフランスリーグ得点王。豊かなスピードを活かした突破が持ち味で、左サイドからのカットインからゴールに絡むプレーを得意とする。また、献身的に前線から守備もこなす。さらにカイドゥ・ケイタもコートジボワール代表のアタッカーで、ニアン同様、個人の力で局面を打開できる。

 ACLでは準々決勝で対戦したセパハンに第1戦で0−1で敗れたものの、相手が出場停止中の選手を起用したため、アル・サッドの3−0の勝利に変更された。続く第2戦でも1−2で敗戦したが、1戦目のアドバンテージが効いてトータルスコア3−2で準決勝に進んだ。ファイナルでは韓国の全北現代と対戦。会場も全州ワールドカップスタジアムという完全アウェーにもかかわらず、PK戦の末、勝利して22年ぶりのアジア王者の座に就いた。

 ただ、事実上、準々決勝で敗退していただけに、チームの完成度は決して高いとはいえない。初戦のアフリカ代表・エスペランスはアフリカ特有のフィジカルに加えて、組織的なサッカーを展開するチームだけに、個人技だけではなく、組織力でどれだけ上回れるかがポイントとなる。

 準々決勝スケジュール

○12月11日(日)
エスペランス × アル・サッド(豊田ス16:30〜)
柏レイソル × モンテレイ(豊田ス、19:30〜)