20日、ロンドン五輪女子マラソンの国内選考会を兼ねた「第3回横浜国際女子マラソン」が、神奈川・山下公園を発着点に行われ、終盤での尾崎好美(第一生命)との熾烈なデッドヒートを制した木崎良子(ダイハツ)が2時間26分32秒でマラソン初優勝を果たした。同大会の前回優勝者である尾崎は、残り2キロ地点で先にスパートをかけたが、粘る木崎を振り切ることができず、2時間26分49秒の2位に終わった。
 メダルを獲れば五輪代表内定とされた今夏の世界陸上韓国・テグ大会で該当者がいなかったため、代表選手は今大会を含めた国内3大会(1月・大阪国際、3月・名古屋ウィメンズ)の上位者から選ばれる。
 今大会は、女子の国内五輪代表選考会では初となるペースメーカーが導入された。5キロを16分50〜55秒に設定した高速ペースにどれだけの選手がついていけるかが注目されていた。しかし、スタート時に気温22.4度を記録する暑さもあり、レースは最初の5キロを17分ちょうどという設定時間よりやや遅いペースで展開された。それでも、予想外の暑さの中ではハイペースだった。25キロまで先導する予定だった3人のペースメーカーが、19キロ時点で全員脱落。選手は暑さに加え、レースプランの修正を強いられた。

 ペースメーカーがいなくなった19キロからは、木崎、尾崎、永尾薫(ユニバーサルエンターテインメント)、宮内弘子(京セラ)の日本人4人を含む5人が先頭集団を形成。23キロ過ぎには後ろから追い上げたマーラ・ヤマウチ(英国)が、その勢いで集団のトップ゚に立った。お互いに出方をうかがう展開に、20〜25キロ時点での5キロの通過タイムは17分56秒まで落ちた。しかし、30キロ地点では同17分18秒とペースが上がり、第1グループはマーラ、木崎、尾崎、永尾の4人となった。

 31キロ過ぎ、永尾がサングラスを外してペースを上げる。しかし、他の3人も落ち着いてそれに対応した。永尾は32キロを過ぎると先頭集団から脱落。トップ争いはマーラ、木崎、尾崎の三つ巴の状態で終盤へと突入する。39キロを過ぎると、木崎が少しペースを上げる。これにマーラがついていけず、40キロの時点で、優勝争いは木崎と尾崎の一騎打ちとなった。後は両者がどこでスパートをかけるのかが、注目された。

 先に仕掛けたのは、前回優勝者の尾崎だった。40.2キロでギアを入れ替えると、みるみるうちに木崎を引き離した。前回も残り3キロからのスパートで優勝しただけに、今回もこのまま尾崎が逃げ切るかと思われた。
 だが、木崎は諦めなかった。
「(尾崎に)残り2キロで出られて、心が折れかけたが、ラスト100メートルまで諦めないで走ろうと切り替えた」
 レース後にこう話したように、一度は約10メートルの差をつけられたものの、そこから踏ん張って41.5キロ地点で尾崎に追いついた。そして、42キロ目前で尾崎をかわすと、そのままゴールテープまで駆け抜けた。

 2010年全日本実業団選手権1万メートル優勝、10年広州アジア大会5000メートル8位とスピードには自信があった木崎にとって、課題は終盤の粘りだった。そのため、今回は大会前にスピードよりもスタミナに重点を置いた走り込みを徹底した。その対策が見事的中したかたちとなった。
「最近、最後まで諦めずに走れたことがなかったので、応援してくれた皆さんに恩返しができて嬉しい。チームの駅伝では他の選手に頼って、このレースかけさせてもらったので、結果が出てよかった」
 木崎はレース後、涙を流しながらこう振り返った。しかし、満足はしていない。
「今日は暑いコンディションの中だったので、次はタイムを狙って、積極的なレースでもっと上を目指していきたい」

 優勝は果たしたが、これで五輪代表に内定したわけではない。残りの選考大会は1月の大阪国際女子マラソンと3月の名古屋ウィメンズ。それでも、季節外れの暑さとペースメーカーの脱落という苦境の中で優勝した26歳が、現在、代表選考の最有力であることは間違いない。

 上位の成績は以下のとおり。

1位 木崎良子(ダイハツ)2時間26分32秒
2位 尾崎好美(第一生命)2時間26分49秒
3位 マーラ・ヤマウチ(英国)2時間27分24秒
4位 永尾薫 (ユニバーサルエンターテインメント) 2時間29分43秒
5位 レネ・カルマー (南アフリカ) 2時間29分59秒
6位 ロベ・グタ (エチオピア) 2時間32分26秒
7位 吉田香織 (アミノバイタルAC) 2時間33分14秒
8位 藤田真弓 (十八銀行) 2時間35分12秒
9位 サリナ・コスゲイ (ケニア) 2時間35分26秒
10位 カテリナ・ステツェンコ (ウクライナ) 2時間35分44秒