柔道の国際大会、グランドスラム東京が9日、東京体育館で開幕する。日本の選手にとっては来年のロンドン五輪に向け、各階級1枠の代表を巡る争いがいよいよ激化する。大会を前に会見に出席した男子100キロ超級の鈴木桂治は、「目標は金メダル。自分は(日本人選手で)最年長なので、ひとつでもミスをするとダメだと思われる」と背水の陣で臨むことを強調した。
(写真:日本選手を代表して会見した鈴木(右)と、女子57キロ級の山本)
 今回のロンドン五輪より、柔道では各階級の世界ランキング上位(男子22位以内、女子14位以内)の選手に出場権が与えられるシステムに変わった。ランキングを上げるには各国際大会で成績を収め、ポイントを稼ぐことが必要になる。このグランドスラムは世界柔道、マスターズに次いで高得点を得られる大会だ。そのため、各国からは強豪が相次いで参戦しており、全日本男子の篠原信一監督は「昨年の大会は7階級で金6個だったが、今回は金4個が現実的な目標」と語る。

 上記の条件を満たしていても五輪に出られるのは各階級1国1枠のみ。日本勢は現状、全階級で最低1人はランキングの基準をクリアしており、代表入りには海外選手のみならず、国内のライバルをいかに倒すかも重要になってくる。代表の最終選考会となる来年5月の全日本選抜体重別選手権へ向け、全日本の吉村和郎団長は「(今大会は)内容を見たい」と位置づける。
「五輪は1名しか出られない。自分しか信じられない。次につながる試合をした人間でないと戦えない」
 そう語り、「おもしろい戦いになる」と選手たちに期待を寄せた。

 注目はランキングの1位、2位に日本人選手が並ぶ女子の軽量級だ。谷亮子が5大会連続で出場してきた女子48キロ級では、世界柔道を連覇したランキング1位の浅見八瑠奈(コマツ)が2位の福見友子(了徳寺学園職)に大きくポイント差をつけており、今大会も制するとロンドン行きが大きく近づく。組み合わせ抽選の結果、両者は別のブロックに入り、勝ち進めば世界柔道同様、決勝で激突する。

 男子では73キロ級のランキング1位・中矢力(東海大)が好調をキープできるかが焦点のひとつだ。昨年の同大会で優勝して以降、中矢は一躍、代表争いに名乗りを上げた。その後のグランドスラムで2勝し、勢いに乗って8月の世界柔道も制覇。世界の頂点に立った。それまで同階級の第一人者だった秋本啓之(了徳寺学園職)とは順当にいけば準決勝で対戦する。リードを許した秋本にとっては負けられない大会となる。

 男子100キロ超級ではランキング1位のテディ・リネールが参加しないため、他の選手にとっては上位を狙う絶好のチャンスだ。「誰が頭ひとつ抜け出るか分からない。この階級は確実に勝てる保証はない」と鈴木も気を引き締める。今年は4月の全日本選手権で4年ぶりの優勝を飾ったものの、世界柔道では3回戦負け。北京五輪でのまさかの敗戦以降、大きな国際大会では勝てない状況が続いている。会見に同席したバルセロナ五輪金メダリストの吉田秀彦氏から「昔の桂治の素晴らしい柔道を見たい」とエールを送られた31歳は「若さに負けたら引退。(若手より)桂治のほうが強いと思われる結果、内容を見せたい」と気合を入れ直していた。

 大会初日となる9日は、男子60キロ級、66キロ級、女子48キロ級、52キロ級の4階級で幕開け。2日目(10日)は男子73キロ級、女子57キロ級など5階級を行い、最終日(11日)は男子100キロ級、女子70キロ級などの重量級の試合が実施される。