11日、今夏ロンドンで開催されるパラリンピックに向けて3月2〜4日に行なわれる2012年パラリンピアンズ応援宣言!「パラリンピアンズと音楽のコラボレーションイベント」の発表会見が行なわれた。このイベントの応援団長を務めるシドニー五輪女子マラソン金メダリストの高橋尚子と、副団長を務める元プロ野球の川崎憲次郎も出席し、パラリンピアンたちの厳しい現状を訴えるとともに、同じアスリートとしてサポートしていくことを宣言した。
 東京都渋谷区恵比寿の「ガーデンプレイス」を中心に、3日間に渡って行なわれる今回のイベントでは、アスリート、ミュージシャン、文化人が一堂に会し、パラリンピアンズを応援する。今イベントを主催するのは健常者と障害者の枠を越え、全ての人々を幸せにすることを目的とする「スポーツオブハート実行委員会」。パラリンピアンズ協会のアドバイザーも務める伊藤数子委員長は「これまで協会として行政などにいろいろと支援をお願いしてきた。しかし、こちら側がお願いするばかりではなく、自分たち自身が動き、パラリンピアンズの現状を理解してもらうことも始めていきたい」と今イベントの企画主旨を説明した。

 バルセロナから5大会連続で出場し、競泳で計21個のメダルを獲得している河合純一パラリンピアンズ協会会長は次のように、今イベントにかける熱い思いを語った。
「我々はパラリンピアンズの環境改善だけでなく、誰もがスポーツを楽しめる社会にしていきたい。今回のイベントはオリンピアンズやプロ選手たちと同じように、夢や目標を叶えたいという気持ちがあり、それに向かって努力し続けているということを知ってもらうために、我々パラリンピアンズと直接出会ってもらい、その魅力に気づいてもらうきっかけにしてほしい。私は目が見えないが、スポーツをしている時に、それを障害だと思ったことはない。むしろ一番大きな障害は、パラリンピックや障害者スポーツ、障害者のことを正しく理解してもらえていないこと。それを変えていく一助となるよう、今回のイベントを全力で成功させたい」

 また、同じくリレハンメルパラリンピックから5大会連続出場し、計10個のメダルを獲得している元アルペンスキーヤーの大日方邦子同副委員長からはパラリンピアンズの現状が訴えられた。
「初めてリレハンメルに出場してから、日本の障害者スポーツの環境は大きく変わった。これまではリハビリという意味合いが強かったが、2010年のバンクーバーではプロのスポーツ選手に近い競技環境を整えている選手も少なくなかった。もはや体の障害はスポーツをするうえで何の問題もなくなっている。しかし、障害者スポーツが取り巻く環境は変わってきているものの、まだまだの部分がある。例えば競技費用についても、遠征の際には車椅子には超過料金が発生するし、視覚障害者には必ずガイドが必要になる。こうした交通費や人件費は選手自身で負担することは少なくない。選手が抱える厳しい現状を理解してもらうとともに、それでもスポーツへの熱い気持ちは、他の競技者と何ら変わらないということを、今回のイベントを通じて知ってほしい。そして一緒にスポーツを楽しめるようになるきっかけになってほしいと思っている」

 会見場には今回のイベントで応援団長、副団長にそれぞれ任命された高橋尚子と川崎憲次郎も出席。「私たち高橋尚子、川崎憲次郎は2012年、パラリンピアンズを応援することをここに宣言します!」と声高らかに応援宣言を行なった。
「スポーツから得られる感動は万人に共通している。オリンピアンズやプロ選手が活躍した姿を見せることで、子どもたちに夢を与えている。それと一緒で、パラリンピアンズが頑張る姿を見せることで、障害をもつ子どもたちにも夢を与えられるようにしたい。しかし、パラリンピアンズがスポーツに打ち込む環境、楽しむ環境は整っているとは言えない。このイベントを通じて、できる限り協力していきたい」と高橋。川崎も「パラリンピックの選手たちもプロ選手も、夢を実現させたいという思いは同じ。オリンピアンズにもプロ野球選手にも、そしてOBにも、ぜひ一緒に応援していってほしい」と語った。

 イベントが開催される3日間では、高橋や川崎をはじめとしたアスリートたちによるスポーツ教室、車椅子バスケットボールやシッティングバレーボールといったパラリンピック種目の体験会、アスリートや文化人によるトークショーなどが行なわれる予定だ。これまでオリンピックの陰に隠れがちだったパラリンピックだが、このイベントが表舞台へと押し出すチャンスとなりそうだ。