24日、キリンチャレンジカップ2012が大阪・長居スタジアムで行われ、日本代表はアイスランド代表と対戦した。日本は開始早々、FW前田遼一(磐田)のゴールで先制すると、後半に2点を追加し、守備陣もPKの1失点に抑えて3−1で勝利した。日本は29日にW杯アジア3次予選の最終戦(対ウズベキスタン戦、豊田スタジアム)に臨む。

 藤本、槙野が代表初ゴール(長居)
日本代表 3−1 アイスランド代表
【得点】
[日] 前田遼一(2分)、藤本淳吾(53分)、槙野智章(79分)
[ア] スマウラソン(90分+3)
 昨年11月の北朝鮮戦での初黒星から3カ月、ザックジャパンが2012年を白星でスタートした。主役を演じたのは今季から国内でプレーするDF槙野智章(浦和)だ。左サイドバックにスタメンで起用され、アルベルト・ザッケローニ体制になってからは初のフル出場を果たした。

 開始早々、その槙野から先制点が生まれる。MF大久保嘉人(神戸)とのパス交換から左サイドを突破し、ドリブルを仕掛けてPA内左に侵入する。右足で上げたクロスに前田が頭で合わせた。ゴール後、槙野は右手でガッツポーズをつくり、駆け寄ってきた前田と電光石火の得点を喜んだ。

 のっけからトップギアに入った槙野は、味方がボールを持つと同時に、一気にセンターサークルを越えてパスを要求する。右サイドで攻撃が展開されている時も、左サイドの空いたスペースを虎視眈々と狙っていた。槙野の積極果敢なプレーは、アイスランドの右サイドからの押し上げを抑止する役目も果たしていた。

 幸先よく得点を奪い、このまま勢いに乗りたい日本は、圧倒的にボールを支配しながらアイスランドゴールを脅かす。しかし、裏へ抜け出すタイミングが合わずオフサイドにかかったり、シュートの精度が低くかったりと、なかなか2点目を奪うことができない。この試合でザッケローニ監督はチーム力ではなく、個人の力に注目することを明言していた。とはいえ、FIFAランキング103位の格下といえる相手に、前半で奪った得点は出会い頭の1点のみ。攻撃面に課題を残し、前半を折り返した。

 日本はその打開策として後半からMF中村憲剛(川崎F)とA代表デビューとなるMF田中順也(柏)を投入。この交替策が的中した。後半8分、中村がPA内右へスルーパス。反応したMF藤本淳吾(名古屋)が、左足で飛び出してきたGKの頭上を抜くループシュートを決めた。藤本にとってはうれしい代表初ゴールで、2点目が入った。中村のスルーパスは、この試合で初めてともいえるゴールに直結するプレーだった。昨年も負傷で代表を離れた本田圭佑(CSKAモスクワ)の代役としてトップ下で存在感を発揮。スペースへ抜け出すタイプの選手が多い日本にとって、中村の鋭いパスはやはり強力な武器といえる。

 格下相手に危なげなく試合を進めていた日本だが、攻め疲れからか20分を過ぎてからは足が止まりはじめる。その影響で、相手のボールホルダーへのプレスが緩くなり、簡単にゴール前へボールを放り込まれる展開が続く。途中、7番・ソルステイソンがハンドスプリングからロングスローを行う場面では長居スタジアムの観衆が沸いた。日本は平均身長183.5センチのアイスランドの高さに苦しみ、競り負ける状況が多く出た。それでも、GK西川周作(広島)が相手FWと激突しながらボールを弾き出すなど、体を張ってゴールを死守する。日本は昨年11月の北朝鮮戦で徹底したロングボール攻勢に苦杯を舐めた。この試合はパワープレーからの失点こそ免れたものの、最終予選にむけて対策の必要性はさらに高まった。

 劣勢を耐えて迎えた34分、日本はダメ押し点を奪う。決めたのは槙野だ。右サイドからのFKに合わせたボレーは相手DFにブロックされたが、こぼれ球に素早く反応する。倒れたまま右足でゴールに蹴り込んだ。槙野は終了間際、相手にPKを献上するファールを犯したものの、1ゴール1アシストの活躍で勝利の立役者となった。
 ザッケローニ監督は17日のメンバー発表会見で「アイスランド戦で長くプレーする選手が、ウズベキスタン戦にも招集されるだろう」と語っていた。25日に行われるメンバー発表で、槙野が再び代表入りする可能性は濃厚だ。現在の代表の主力は多くが海外組。槙野のように国内組が存在感を示せば、レギュラー争いが激しくなり、チームの底上げにつながる。

「(Jリーグがシーズン前なので)フィジカルはまだまだだが、いいスタートを切れた」
 試合後、ザッケローニ監督は今年の初戦をある程度評価したものの、ブラジルW杯でベスト4を目指すチームとしては物足りない内容だ。6月から始まる最終予選へ、海外組も合流するウズベキスタン戦(29日)は、内容、スコアともに圧倒できるかが焦点となる。

<日本代表出場メンバー>
GK
西川周作
DF
駒野友一
→伊野波雅彦(64分)
栗原勇蔵
→近藤直也(76分)
今野泰幸
→森脇良太(82分)
槙野智章
MF
遠藤保仁
増田誓志
藤本淳吾
→石川直宏(64分)
柏木陽介
→中村憲剛(45分)
大久保嘉人
→田中順也(45分)
FW
前田遼一