29日、W杯アジア3次予選最終戦が愛知・豊田スタジアムで行われ、日本代表はウズベキスタン代表と対戦した。日本は後半9分、FWアレクサンドル・シャドリンに先制点を許すと、同点ゴールを奪うことができず0−1で敗れた。この結果、日本はグループ2位で3次予選を通過。6月から始まる最終予選の組合せ抽選は3月9日に行われる。

 宮市、代表デビューならず(豊田ス)
日本代表 0−1 ウズベキスタン代表
【得点】
[ウ] アレクサンドル・シャドリン(54分)
 攻撃はパスで崩すことにこだわりリズムが悪く、守りは前がかりになったところにカウンターをくらう。最終予選前の最後の実戦は、課題だけが残る試合だった。

 前半、日本はウズベキスタンの素早いプレスを受け、トップ下のMF香川真司やワントップのFWハーフナー・マイク(フィテッセ)にパスを入れることができない。サイドにボールを散らし、相手守備陣のギャップを探すものの、パスコースを塞がれて自陣後方に戻すシーンが多く見られた。しかし、チャンスがなかったわけではない。23分には、香川が右サイドでボールを持ち、PA内右にスルーパス。反応した岡崎が左足でシュートを狙うが、クロスバーを叩いた。

 このようにいくつかチャンスをつくったものの、日本は全体的にタテのパスを入れることにこだわりすぎていた。パスが通っても相手選手に囲まれてボールを失う。攻撃のリズムが悪く、ゴールを奪えないまま前半を折り返した。

 最終予選の組合せは3月7日発表時点のFIFAランキングを参考にシード分けを行う。日本は現在、オーストラリア(FIFAランキング22位)に次ぐアジア2番手(同30位)だ。アジア1位と2位は同組にならないため、この上位2カ国のトップシードに入れば、オーストラリアと同組になることはない。しかし、3番手の韓国は同34位とその差はわずか。最終予選を有利に戦うために、後半はさらに攻勢を強め、勝利を狙うことが求められた。

 ところが、後半9分、先制点を奪われる。前がかりになったところをカウンターで狙われた。香川が相手PA内でパスをカットされると、そこから日本の左サイドのスペースを突かれ、ゴール前にクロスを入れられる。ファーサイドで合わされたシュートを、一度はGK川島永嗣(リールセ)がブロックしたものの、こぼれ球をシャドリンに押し込まれた。
「攻めている時のリスクマネジメントができていないところをやられた」
 DF吉田麻也(VVVフェンロ)はこう痛恨の失点を悔やんだ。

 喉から手が出るほど欲しかった先制点を逆に奪われた日本は、15分にMF乾貴士(ボーフム)、21分にFW李忠成(サウサンプトン)と立て続けに攻撃のカードを投入。何とかして得点への糸口をつかもうと試みる。26分には、香川から乾、MF岡崎慎司(シュツットガルト)、李がからみ、最後は再び香川が受けてPA内左でシュートを狙う。しかし、相手DFにブロックされて、同点の機会を逸した。

 こうなると、さらなる選手交替で、攻撃を活性化することが必要になる。今回、アルベルト・ザッケローニ監督は、プレミアリーグでプレーする宮市亮(ボルトン)を手駒に入れていた。50mを5秒台で走る宮市のスピードは、事前練習で他のチームメイトも絶賛していた。しかし、35分を過ぎても指揮官は残る1枚のカードを切らない。そんな中、長友が足に違和感を訴え、DF駒野友一(磐田)と交替。“切り札”として期待された宮市に出番が訪れることはなかった。

 日本は予期せぬ守備陣の交替でさらにリズムが悪くなる。乾や香川がドリブルで持ち込もうとしたところを相手に奪われ、ショートカウンターからピンチを招く。いずれも失点にはつながらなかったものの、精彩を欠いたプレーが続いた。結局、最後までウズベキスタン守備陣を打ち破ることはできず、ザッケローニ体制になってホーム初黒星を喫した。

「前半は日本が主導権を握って良い出来だった」とザッケローニ監督は振り返ったが、試合を通して日本は、「パスで崩す」ことにこだわりすぎていた。時にはハーフナー・マイク(フィテッセ)にロングボールを当て、相手の目先を変えることも必要ではなかったか。DFの枚数を減らしてもっと攻撃に厚みを持たすこともできたはずだ。日本が放ったシュートは6本。後半にいたってはたった1本だった。最終予選に向けて、シュートへ持ち込むまでのプロセスに工夫が求められる。

 守備に関しては、簡単にカウンターを許しすぎた。ボールを奪われた選手、近くにいる選手が素早くプレスをかければ、少しは相手の勢いを緩めることができただろう。最終予選はカウンター攻撃を主体とする中東勢との対戦が予想されるだけに、攻守の切り替えはポイントになる。

 今回の敗戦で、日本がFIFAランクのアジア2位以上を保てるか微妙になった。しかし、キャプテンのMF長谷部誠(ヴォルフスブルク)は「負けたことがすべて。この結果を受け入れ、教訓として次に生かさなければならない」と前を向く。最終予選までの3カ月で、いかに個人がレベルアップし、代表に還元できるか。立ち止まっている時間はない。

<日本代表出場メンバー>

GK
川島永嗣
DF
内田篤人
今野泰幸
吉田麻也
長友佑都
→駒野友一(84分)
MF
遠藤保仁
長谷部誠
藤本淳吾
→乾貴士(60分)
香川真司
岡崎慎司
FW
ハーフナー・マイク
→李忠成(66分)