4日、ロンドン五輪男子代表選考会を兼ねた第67回びわ湖毎日マラソンが滋賀・皇子山陸上競技場を発着点に行われ、初マラソンのサムエル・ドゥング(ケニア、愛知製鋼)が2時間7分4秒で優勝を果たした。日本人トップには山本亮(佐川急便)が2時間8分44秒の4位でフィニッシュした。
 代表選手選考には具体的な選考基準はなく、福岡国際マラソン、東京マラソン、そしてびわ湖のレース内容を考慮し、五輪での活躍が期待できる3人が選ばれる。注目の選考理事会は12日に行われる。
 五輪代表を懸けた最終決戦には2011年世界陸上7位入賞の堀端宏行(旭化成)、同代表の中本健太郎(安川電機)、そして福岡国際日本人2位の今井正人(トヨタ自動車九州)ら実力者が顔を揃えた。しかし、それらの有力選手を押しのけて日本人トップの座に就いたのは、一般参加の山本だ。トラック勝負にまでもつれこんだ接戦を制した。

 小雨が降るなか始まったレースは、20キロを過ぎてなお42人が先頭集団を形成する膠着状態が続いた。展開が大きく動いたのはペースメーカーが外れた25キロから。ニコラス・マンザ(ケニア)やベカナ・ダバ(エチオピア)などの外国人選手が一気にペースを上げる。先頭集団は25人にまで絞られた。

「(25キロ過ぎで)動きたかったけど、足に余裕がなかったので、じっくりいこうと考えて、後ろで様子を見て走ろうと思っていた」と振り返る山本は、グループの後方でくらいついていたものの、さらにペースを上げるトップグループから徐々に離されていく。35キロ地点での順位は10位。レース開始から日本人トップをキープする5位の堀端とは約20秒差だった。

 日本人トップを巡る争いは、その35キロ過ぎから激しさを増す。まず日本人3位グループの中本と堀口貴史(ホンダ)が日本人2位の出岐雄大(青山学院大3年)を抜き去る。そして、中本が38キロ手前でペースが落ちた堀端に追いつき、日本人トップに躍り出る。さらに前を走っていたエルネスト・ケベネイ(ケニア)をも抜き去り、全体でも4位に浮上した。

 そんななか、山本も日本人3位の位置に上がり、五輪代表へと近づく中本を追っていた。40キロ地点で日本人2位の堀口を抜き、中本との差は9秒、41キロ過ぎでは6秒に縮まる。だが、必死に逃げる中本の粘りもあり、山本は日本人2位で競技場へ戻ってくる。日本人トップ争いはトラック勝負にもつれこんだ

 ここで1500m3分49秒8を誇る山本のスピードがモノを言う。トラックで残り400mとなったところで中本を抜き去り、ついに日本人トップへ浮上。そのまま差を広げ、両手を広げてゴールした。
「(レース中は前を行く選手に)何とか届いてくれと、必死に追い上げた。最後は五輪、五輪と念じた」
 フィニッシュタイムは全体で4位となる2時間8分44秒。それまでの自己ベストである2時間12分10秒を大幅に更新した。

 レース後、日本陸上競技連盟の小縣貢専務理事は「(一般参加で)伏兵ともいえる山本が後半に追い上げたことに驚く結果になった。(7分台は出なかったが)あまり良くないレースコンディションの中で、このタイムは立派だと思う」と雨、気温7度という環境下で結果を出した山本に高評価を下した。
 各選考レースの日本人トップは川内優輝(福岡国際3位、2時間9分57秒)、藤原新(東京2位、2時間7分48秒)、そして山本。さらに、今回5位となった中本、東京6位の前田和浩も2時間8分台を記録しており、五輪代表はこれらの選手に絞られたと言ってよい。

「体が丈夫なのが取り柄なので、普段から距離を踏めているのが、粘りにつながったと思う」
山本は一般参加ながら、結果を出せた要因をこう分析した。一躍、五輪候補に名乗りを上げた27歳が、ロンドンのコースを走ることは叶うのか。12日の代表選考理事会で、その答えが出る。

上位の成績は以下のとおり。

1位 サムエル・ドゥング(ケニア、愛知製鋼) 2時間7分4秒
2位 ヘンリク・ゾスト(ポーランド) 2時間7分39秒
3位 アブデラ・タグラフェ(モロッコ) 2時間8分37秒
4位 山本亮(佐川急便) 2時間8分44秒
5位 中本健太郎(安川電機) 2時間8分53秒
6位 森田知行(カネボウ) 2時間9分12秒
7位 堀口貴史(ホンダ) 2時間9分16秒
8位 林昌史(ヤクルト) 2時間9分55秒
9位 出岐雄大(青山学院大学3年) 2時間10分2秒
10位 エルネスト・ケベネイ(ケニア) 2時間10秒4秒