14日、ロンドン五輪アジア最終予選最終戦が東京・国立競技場で行われ、U-23日本代表はU-23バーレーン代表と対戦した。日本は後半10分、MF扇原貴宏(C大阪)のゴールで先制する。14分には、MF清武弘嗣の追加点でリードを広げ、守ってはバーレーンの攻撃をシャットアウト。2−0の快勝で5大会連続9度目の五輪出場を決めた。

 清武、五輪導く最終予選初ゴール(国立)
U-23日本代表 2−0 U-23バーレーン代表
【得点】
[日]  扇原貴宏(55分)、清武弘嗣(59分)
 3万6233人の君が代合唱で幕開けした運命の一戦を制し、五輪への切符を掴みとった。引き分け以上でも五輪出場が決まる状況だったが、関塚隆監督が「五輪に行くんだという気持ちが表れていた」と語ったとおり、選手たちは積極果敢に勝利を狙っていた。

 前半から激しいプレスと持ち前のパスワークでゲームを支配。ボール支配率は62.1%を記録し、バーレーンにほぼ何もさせなかった。その中心にいたのが、いまや日本の“扇の要”となっている扇原だ。長短を織り交ぜたパスで、攻撃のタクトを振るった。

 前半3分、その扇原からチャンスが生まれる。センターサークル付近からのロングボールを送り、PA手前でFW大津祐樹(ボルシアMG)が胸で落とす。これをMF原口元気(浦和)が右足で合わせたが、シュートはGKに防がれた。

 守備を固めるバーレーンに対し、清武、原口、大津、MF東慶悟(大宮)ら前線の4人がどんどんDFラインの裏へ動きだし、ボールを呼び込む。それにつられるようにして、両サイドバックも高い位置を保ち、攻撃に絡もうとする。ただ、関塚監督が「気負いもあった」と認めたように、早く先制したいとの意識が強すぎたのか、パスミスやコントロールミスが目立った。結局、前半はゴールを奪うには至らず、0−0で折り返す。ハーフタイムで控室に戻った指揮官は「落ち着け」と選手たちに語りかけ、「人数をかけて仕掛けろ」と指示を出した。

 後半開始直後、千葉県沖で地震が発生し、東京も震度3の揺れに国立がざわつくなか、その「人数をかけた仕掛け」が先制点を呼び込む。10分、スタジアムを沸かせたのは扇原だ。左サイドに抜け出した原口からのグラウンダーのクロスに、ニアサイドで右足を出すとゴール左上に突き刺さった。単に前線の選手にクロスを放りこむのではなく、ボランチの選手が積極的にゴール前まで絡んだ結果の得点だった。殊勲の扇原は「ベンチ外だった2次予選はスタンドから見つめることしかできなかった。最終予選では絶対試合に出て、予選突破を決めたかったので、しっかりチームに貢献できてすごく嬉しい」と喜びを口にした。

 さらに4分後、追加点はあっさりと生まれる。きっかけは1点目と同様に左サイドの崩しから。原口のスルーパスに裏へ抜けた東が低いクロスを送る。ゴール前を通過してファーサイドに流れたところへ、走り込んでいたのが清武だった。「0−2になった時点で負けが決まった」とバーレーンのピーター・テイラー監督が脱帽した一撃がゴール右上に決まった。 限りなく勝利に近づいた日本だが、その後も原口のシュートがポストを直撃するなど、圧倒的にボールを支配し、攻撃を繰り出していく。ベンチもFW永井謙佑(名古屋)、MF齋藤学(横浜FM)を投入するなど、攻撃的な采配を見せ、チーム全体が攻めの姿勢を崩さなかった。

 そんななかでも守備の安定感は変わらなかった。、扇原とコンビを組むボランチのMF山口螢(C大阪)が相手に激しいチェックを繰り返し、GK権田修一(FC東京)をはじめとした守備陣が相手の攻撃を跳ね返す。バーレーンに押し込まれる時間帯もあったが、最後まで集中を切らさず、予選4度目の完封勝ちで最終戦を締めくくった。「個人の部分ではひとりひとりのスケールは必ず予選を通じて成長していると確信している。勝利のために全員が攻守にわたってプレーできるところがこのチームの良さ」
 試合後、選手たちから歓喜のシャワーを浴びた関塚監督はチーム全体のレベルアップを実感している。

 2月のシリア戦に敗れ、グループ2位に転落した際には五輪出場が危ぶまれた。だが、キャプテンの権田は「シリア戦という残念な試合を乗り越えてチームがひとつになった。いい時はいい、悪い時は悪いではなくて、悪い時も自分たちで修正できるようになった」と振り返る。この試合も、前半こそゴールが奪えなかったが、指揮官のアドバイスのもと立て直し、2ゴールを奪った。

 もちろん、若いチームだけに五輪本番に向けた課題もある。関塚監督は「まずはアウェーでしっかりと自分たちの戦いをするプレーとメンタリティ。この部分が2次予選、最終予選を通してもっとタフに戦っていく必要があると感じる。最終予選で苦しんだ要因は9月のマレーシア戦。26本のシュートで2点しかとれなかったことが、折り返しからの(後半の3試合で苦戦した)大きなポイントになったと思う」と語る。

 チームとしてロンドンへの切符は手に入れた。しかし、選手たちは今後、本大会の登録メンバーである18人に入らなければならない。予選を戦った選手、Jリーグで牙を研ぐ国内組、そして宮市亮(ボルトン)や香川真司(ドルトムント)などの海外組……。「やっとつかんだ舞台なので、個人としてもチームとしてもベストの状態で行けるように、それまでの準備が大事。このチームがどれだけ世界でできるのか本当に楽しみ。試す価値はある」と権田は前を見つめた。ロンドンに向けた本当の戦いがこれからスタートする。

<日本代表出場メンバー>

GK
権田修一
DF
酒井宏樹
鈴木大輔
濱田水輝
比嘉祐介
MF
山口螢
扇原貴宏
→山村和也(90分)
清武弘嗣
→永井謙佑(76分)
東慶悟
原口元気
FW
大津祐樹
→齋藤学(82分)