NPBが「試合時間3時間以内(9回)」を目標に掲げたのは2009年のレギュラーシーズンが始まる前のことだ。その前年には<野球の力で温暖化ストップ!>と随分、肩に力の入ったキャッチフレーズを作った。
 NPBの意気込みは次の文面からも、はっきりと読み取ることができた。<①試合時間短縮を実現するために、各球団に試合時間短縮担当責任者を置く。②審判員は、監督・選手および球団関係者で試合進行に非協力的な者をリーグにレポートする。リーグは球団(担当責任者)に連絡して、改善を求める>(グリーン・ベースボール・プロジェクトより)。これは要望というより通達だ。

 果たして、成果は表れたのか。07年に3時間14分だった試合時間(9回)は昨季、3時間6分。4年間で8分だから、1シーズンに2分ずつは短くなっている計算になる。牛歩のごとき歩みだ。

 電力事情は予断を許さない。再稼働が認められなければ、この5月で日本の原子力発電所すべてがストップする。政府は引き続き節電対策を事業者サイドに求める方針だ。
 これを受け、NPBは昨季同様、“3時間半ルール”(3時間半を超えて新たな延長回に入らない特別ルール)を採用する。本来、野球は時間に縛られないスポーツではあるが、この非常時において球界の都合を優先させることはできない。

 これは以前にも述べたが、プロ野球史上初の天覧試合、巨人−阪神戦の試合時間はわずか2時間10分なのだ。試合はシーソーゲームの末に長嶋茂雄のサヨナラホームランが飛び出し、巨人が5対4で阪神を破った。
 エースと主砲の真っ向勝負あり、ファインプレーあり、高度なピックオフプレーありと、このゲームには野球の醍醐味がすべて凝縮されていた。繰り返すが、これで2時間10分なのだ。「昔と今とじゃ野球の質が違う」と反論する向きもあろうが、それは先達に失礼だ。

 以下は7年前にUFJ総研などが行ったアンケート結果。プロ野球ファンが減った原因について、27.7%の人が「試合のテンポが遅いこと」をあげていた。この宿題は、まだ残されたままだ。今一度、コミッショナーにはスピードアップの大号令をかけてもらいたい。短けりゃいいというものではないが、それでも長過ぎるよりはいい。

<この原稿は12年3月14日付『スポーツニッポン』に掲載されています>


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