5日、キリンチャレンジカップ2012がホームズスタジアム神戸で行われ、なでしこジャパンは女子ブラジル代表と対戦した。日本は1−1で迎えた後半13分、FW永里優季(ポツダム)のゴールで勝ち越しに成功する。その後もゴールを重ね、4−1で試合終了。総得点で米国を上回り、同大会優勝を果たした。

 キャプテン宮間、3ゴールに絡む活躍!(ホームズ)
日本代表 4−1 ブラジル代表
【得点】
[日] オウンゴール(16分)、永里優季(58分)、宮間あや(61分)、菅澤優衣香(89分)
[ブ] フランシエリ(45分+1)
 細かいパスワークに精度の高いセットプレー、そして組織だった守備。1日の米国戦では勝ちきれなかった日本が、自分たちのスタイルを全面に出して五輪2大会連続準優勝の強豪を下した。その中心にいたのは、左MFで先発した宮間あや(岡山湯郷)だ。体調不良の澤穂希(INAC神戸)が不在の中、キャプテン、そして司令塔としてなでしこを牽引した。

 序盤は、高い個人技を誇るブラジルの攻めに苦しんだ。前半8分には、左サイドからのクロスを、アテネ、北京両五輪得点王のFWクリスティアーニに頭で合わせられた。ボールはわずかに右へ外れて事なきを得たものの、流れがブラジルに傾きかけたように思われた。

 これを日本側へ引き戻したのは宮間だ。きっかけは十八番であるセットプレーだった。16分、ピッチ中央左で得たFKを左足でゴール前に送る。ボールは相手GKとDFの間という絶妙なコースへ。ブラジルDFダイアニが頭でクリアするが、ボールはゴール内に吸い込まれた。日本がオウンゴールという幸運なかたちで先制に成功する。このゴールで落ち着きを取り戻したなでしこたちは、宮間を中心に本来の細かいパス回しと連動した守備を見せ始める。

 33分には、左サイドから中央へカットインしてきた宮間が、PA手前のFW川澄奈穂美(INAC神戸)に低く速いパス。受けた川澄は、アプローチしてきたDFをかわしてから右足を振り抜いた。これはわずかにゴール上へ外れたものの、鋭い攻撃からブラジルゴールを脅かす。38分に前線で体を張ってボールを収められる永里を投入すると、日本のボールポゼッションはさらに高まった。

 しかし、日本優勢のままハーフタイムを迎えるかと思われた前半ロスタイム、同点ゴールを奪われる。PA手前左で相手にFKを与えると、MFフランシエリに右足で撃ち込まれた。

 嫌なかたちで追いつかれ、早く勝ち越したい日本ベンチは、後半開始とともに動いた。ボランチで先発していたMF田中明日菜(INAC神戸)に替えてFW菅澤優衣香(日テレ)を投入。さらに2トップの一角だった川澄が左サイドハーフに入り、ボランチには宮間がポジションを移った。この布陣変更が的中する。ボランチに入った宮間は、前半以上にボールに絡み、右へ左へパスを展開していく。これによって前半はあまり攻め上がりが見られなかった両サイドバックが高い位置を保つようになり、ブラジルを押し込んでいった。

 そんな後半13分、待望の勝ち越し点が生まれる。得点を演出したのは、やはり宮間だ。左足でニアサイドに入れた右CKに、永里がDFの前にうまく体を入れる。頭で流し込みゴールを決めた。永里のボールに合わせるタイミングもさることながら、DFにクリアされないコース、スピード、高さに蹴られる宮間のキック力が光ったシーンだった。

 ゲームを組み立て、ゴールを演出した宮間だが、これで終わらないのが絶対的司令塔たる所以だ。わずか3分後には、ブラジルを突き放す追加点を決める。ボランチの位置からゴール前に詰めると、永里のシュートをGKが弾いたところへ左足で豪快に押し込んだ。電光石火の得点に佐々木則夫監督はベンチから拍手を送った。


 勝利が見えてきた日本ベンチは、その後、出場機会のなかった選手を次々とピッチに送り出す余裕の采配。追いすがるブラジルの攻めも、DF陣が粘り強く、体を張った守りでゴールを許さない。そして、89分には、DF近賀ゆかり(INAC神戸)のクロスに合わせた菅澤がダメ押しとなる4点目を奪って完全に試合を決めた。

 五輪本大会でも米国、ブラジルといった強豪との連戦は十分にありえる。そのシミュレーションとなった今回は、澤、岩清水梓(日テレ)と主力2人を欠く中、自分たちのサッカーで勝負できた。これは最大の収穫だ。また米国戦では、後半に失速した反省点を踏まえ、ブラジル戦では終始試合を支配し、快勝した。試合後、宮間は「100パーセントではないにしろ、みんなの力で勝ちきったことは大きなプラス」と胸を張った。

 今後は、6月の海外遠征、7月の親善試合を経て本番に臨む。強豪相手にさらなる自信をつかみ、なでしこジャパンが五輪金メダルへ加速する。