武田・浦組が連勝! 五輪予選代表に 〜ボート再選考レース〜

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 ロンドン五輪のアジア大陸予選会(4月27日〜、韓国)に臨む男子軽量級ダブルスカルの代表選考レースが6日、戸田ボートコースで行われ、武田大作(ダイキ)、浦和重(NTT東日本東京)のペアが、須田貴浩(アイリスオーヤマ)、西村光生(NTT東日本東京)のペアを破り、代表に決定した。3本のマッチレースで実施された選考は、アテネ五輪で6位入賞を収めている武田、浦組が1本目と2本目を連勝し、3本目を行うことなく決着がついた。
(写真:所属のダイキ社員から花束を受け取って喜ぶ武田(前方)、浦のペア)
 38歳と36歳のベテランペアの経験と底力が上回った。
 晴天のなか、朝9時にスタートした1本目。最初の500メートルこそ須田、西村組にリードを許したものの、すぐに逆転。中間地点の1000メートルで1秒以上の差をつけると、1500メートル地点では1艇身差にリードを広げる。ここからは余裕のレース運びだ。「最小限のロスになるよう節約した」と2本目を見越して力を温存。追い上げてくる相手クルーを見ながら、ラスト100メートルで再び突き放し、0.49秒差をつけて先勝した。

 3時間のインターバルを挟んで迎えた勝負の2本目。今度はスタートから飛ばした。最初の500メートルを1本目より約1秒速いタイムで入ると早くも頭ひとつ抜けだす。ボートレースでは後ろ向きに漕ぐため、先行すれば後続の艇がよく見える。須田、西村ペアの出鼻をくじき、主導権を握ると、相手が追い上げを開始する前に1500メートル付近でミドルスパート。1艇身差まで一気に広げ、1レース目と同じような展開で逃げ切った。「武田、浦は経験豊富なテクニシャン。今までの経験の差が出た」と協会の相良彰敏強化委員長も納得せざるを得ない盤石の内容だった。
(写真:「負けない自信があった」と武田が振り返ったように、実力差をみせつけた)

「訴えたことが間違いではなかったことを証明するためにも勝つしかない。勝って終わるしかない」
 武田、浦組にとっては絶対に負けられない戦いだった。当初、11月に実施された選考レースでは、このベテランペアが代表に選ばれるはずだった。ところが協会が選考レース内で“イレギュラー”が発生したとして、当初の選考要領にはなかった方法でタイムを調整。その結果、須田、西村ペアが代表に決定した。

 この結果に浦は失望し、一度は代表引退を決意した。納得がいかなかった武田は日本スポーツ仲裁機構(JSAA)にこの2月、不服を申し立てた。その申立が認められ、五輪の代表選考にかかわる事項では史上初めて代表の内定が取り消される。そして、実現した再レースだった。とはいえ、与えられた期間は約1カ月。武田は当初、レースに乗り気ではなかった浦を説得するところから始めなくてはならなかった。

「なんで(再レースを)やる必要あるんですか?」と渋る浦と話し合いを重ねた。戦える状態なのか、まずは試しに2人でボートに乗ってみた。「練習を重ねるうちにスイッチが入った。闘争本能が蘇ってきた」と浦は明かす。正式にレース参加の返事をしたのは3月12日。北京五輪以降、ペアを組んでいない2人にとって短期間でお互いの呼吸を合わせられるか、時間との戦いでもあった。

 しかも、急ピッチの調整でトレーニングの強度をあげた矢先、浦の体が悲鳴をあげた。左あばらを痛め、まともに練習ができたのは1週間ちょっと。この日もテーピングを施し、痛み止めを飲んでレースに臨んだ。だが、そこは数々の国際舞台を踏んできたオアズマンだ。2人で息を合わせてオールを漕ぐうちに、4年のブランクは急速に埋まっていった。「やはり、浦とはずっとやっているから信頼できる。技術もうまいし、精神面も強い」と武田は浦を高く評価する。浦も「武田さんと組むと安心感がある。安定した気持ちでレースができる」とペアでやっていく自信を取り戻した。
「武田さんの思いに応えられてよかった……」
 プレッシャーから解放されたのか、浦はそう語ると、続く言葉は涙になって出てこなかった。

 もちろん、2人は予選の出場権を得ただけで、まだロンドンへの切符を手にしたわけではない。武田が5大会連続、浦が3大会連続の五輪行きを決めるには、アジア大陸予選で3位以内に入る必要がある。「アジア予選で1位通過することを目指しつつ、まずは確実に五輪の出場枠を獲りたい」と武田は次なるステージへ目標を切り替えた。
(写真:「よくケンカもしたが、お互いに意見を言える」。この1か月間でさらにペアの絆を深めた)

 浦も「五輪で忘れてきたメダルを獲りに行きたい」と視線はその先に向かっている。武田はこの日のレースを振り返り、「ギリギリ、レースができたという感触。まだ本来のスピードは出ていない」と課題を口にする。
「昨年の世界の大会を見ても、トップから13〜14番までは僅差。僕たちの現状は10番台中盤。技術の精度を上げて、トレーニングを積んで、メダルラインに乗りたい」
 4度の五輪を経験したボート界の第一人者には、もう本番で戦うプランができている。

 12月で39歳になる武田は「世界で勝てなくなった時点で引退する」とかねてから発言してきた。ロンドンは年齢的にもおそらく最後の大舞台になるだろう。「どちらが強いわけではなく、クルーとして強い。それが僕たちの強み」と言い切る最良のパートナーとともに、ボート人生の集大成へといよいよ漕ぎ出す。 

(石田洋之)
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