柔道のロンドン五輪日本代表を決める最終選考会、全日本選抜体重別選手権は13日、福岡国際センターで最終日の男女7階級が実施され、大会後の強化委員会で代表14名が決定した。最大の注目を集めた女子48キロ級では世界柔道連覇の浅見八瑠奈(コマツ)がまさかの初戦敗退。ライバルの福見友子(了徳寺学園職)が優勝し、逆転でロンドン行きの切符を手にした。その他、この日優勝した女子52キロ級の中村美里(三井住友海上)、男子100キロ級の穴井隆将(天理大職)、中井貴裕(流経大)が代表入り。混戦の男子100キロ超級は上川大樹(京葉ガス)が決勝で一本負けを喫したものの選ばれた。3大会連続出場を狙った鈴木桂治(国士舘大教)は右肩のケガが響いて初戦で敗れ、落選した。
 浅見か福見か――熾烈を極めた女子48キロの代表争いは思わぬかたちで決着がついた。

 浅見の初戦の相手は高校3年生の岡本理帆(静岡・藤枝順心高)。しかし、1月に左ヒザを痛め、久々の実戦となる世界女王は動きが硬かった。積極的に前へ出て、内股を仕掛けてくる新鋭に手こずり、技が出ない。試合は両者ポイントのないまま、延長戦にもつれ込む。ここでようやく浅見は寝技で相手を押さえ込み、ポイントを得るチャンス。しかし、5秒でほどかれ、決め切れなかった。3分間の延長戦でも決着がつかず、旗判定の結果は1−2。予想外の敗戦に会場内は大きくどよめき、浅見は両手で顔を覆った。

 一方の福見は順調に勝ちあがり、準決勝では昨年の同大会で敗れた山岸絵美(三井住友海上)を横四方固めで撃破。最大の難関をクリアし、決勝は浅見を下した岡本と激突する。逆転での代表選出には絶対に取りこぼしが許されない試合。福見は勢いに乗る高校生を相手に技を決められず、試合は延長戦に突入する。ただ、組み手争いを制して主導権は渡さなかった。旗判定では3−0。浅見との直接対決で白黒をつけることはかなわなかったが、しっかりと結果を残し、代表の座を射止めた。

 また同じく激戦となった女子52キロ級では五輪切符を競い合った中村美里(三井住友海上)と西田優香(了徳寺学園職)が決勝で激突。お互いに意地をみせ、試合は5分間で決着がつかない。迎えた延長戦、中村が横四方固めで押さえ込み、ライバル対決に決着をつけた。

 その他、女子57キロ級では松本薫(フォーリーフジャパン)が宇高菜絵(コマツ)に延長戦の末に敗れるも、出場権を争っていた佐藤愛子(了徳寺学園職)が初戦敗退したこともあり、代表に選ばれた。

 男子では三つ巴の争いとなった90キロ級で波乱が起きた。代表候補となった3選手を差し置いて、この日の主役となったのは加藤博剛(千葉県警)だ。4月の全日本選手権でも重量級以外の選手で43年ぶりに日本一となった26歳は、初戦で3強の一角である小野卓志(了徳寺学園職)を合わせ技一本で破る。

 続く準決勝では、これまた五輪行きを狙う西山大希(筑波大)に対し、延長戦の末、小内巻き込みで一本勝ち。決勝では1月のマスターズで第一人者のイリアス・イリアディス(ギリシャ)に勝って代表争いに名乗りを上げた西山将士(新日鉄)に隅返しで技ありを奪う。このまま加藤が決勝を制して初優勝。代表には準優勝の西山将がイリアディスを倒した点を評価されて、初の五輪切符を手にした。

 また、同じく選考で頭が痛い結果となったのが100キロ超級だ。出場資格を持つ鈴木と高橋和彦(新日鉄)が初戦で敗れ、脱落。残る候補の上川も決勝で七戸龍(九州電力)に大外刈りで仰向けにされた。誰ひとりとして決勝に進めなかった4月の全日本選手権に続く低調な内容だったが、ランキング上位の上川が代表となった。

 前日に実施された階級では、優勝を収めた選手が順当に代表入り。2大会連続の出場は14名中わずかに2名(男子60キロ級・平岡、女子52キロ級・中村)と、フレッシュな顔ぶれで金メダル量産を狙う。

 各階級の代表は以下のとおり。

【男子】
60キロ級 平岡拓晃(了徳寺学園職)
66キロ級 海老沼匡(パーク24)
73キロ級 中矢力(ALSOK)
81キロ級 中井貴裕(流経大)
90キロ級 西山将士(新日鉄)
100キロ級 穴井隆将(天理大職)
100キロ超級 上川大樹(京葉ガス)

【女子】
48キロ級 福見友子(了徳寺学園職)
52キロ級 中村美里(三井住友海上)
57キロ級 松本薫(フォーリーフジャパン)
63キロ級 上野順恵(三井住友海上)
70キロ級 田知本遥(東海大)
78キロ級 緒方亜香里(筑波大)
78キロ超級 杉本美香(コマツ)