18日、日本サッカー協会(JFA)は5月23日からフランスで行われるトゥーロン国際大会に出場するU-23日本代表メンバー20人を発表した。欧州組からは指宿洋史(セビージャ・アトレティコ)、酒井高徳(シュツットガルト)ら5人を選出。その一方でロンドン五輪アジア予選を戦った主力メンバーである守護神の権田修一(FC東京)や右サイドバックの酒井宏樹(柏レイソル)、注目の19歳・宮市亮(ボルトン)は23日のキリンチャレンジカップ2012(アゼルバイジャン戦)に臨むA代表に招集されたため選ばれなかった。指揮を執る関塚隆監督は「個人、チームとして成長していくための有意義な大会にしたい」と抱負を語った。
(写真:限られた条件の中から選手選考をした関塚監督)
 いよいよロンドン五輪まで、残すところ70日を切った。本番までの限られた時間の中で、取り組まなくてはならないのがチーム強化と選手の見極めである。今回のトゥーロン国際は、五輪前の貴重な国際大会。いわば“仮想五輪”とも言える舞台だ。なかでも、予選リーグの試合間隔が中1日と、五輪本大会以上のタイトなスケジュールをこなさなければならない。関塚監督は「連戦のきく選手を見極めたい。(疲れで)体がきかない中で、どういったプレーができるか」と大会を通じてメンバーをチェックする考えだ。

 とはいえ、五輪をシミュレーションしたチーム強化の面では障害もある。同大会の日程がW杯最終予選を間近に控えるA代表の活動や、ACL(アジアチャンピオンズリーグ)の決勝トーナメントと重複しており、該当する選手を除いたかたちでの選考しかできなかった。加えて、Jクラブからは1チーム3人までという人数制限もかけられた。貴重な海外勢との真剣勝負のチャンスを“ベストメンバー”で臨めないのは痛い。

 ただし、マイナス面ばかりでもない。今回は欧州各国のリーグ戦が終了していることもあり、普段は拘束力のない欧州組を呼べたからだ。彼らにとっては五輪出場へ向けた最初で最後のアピールのチャンス。原博実技術委員長は「ここにかける思いは強い」と、海外組のモチベーションの高さを指摘する。

 そんな欧州勢から指揮官が選んだのは5選手。注目はFWの指宿だ。194センチの長身を武器に、スペインリーグ3部とはいえ、今季は20得点を叩きだした。これまでU-23 代表のワントップには万能型の大迫勇也(鹿島アントラーズ)、スピードの永井謙佑(名古屋グランパス)が入ってきたが、決して不動の存在とは言えなかったのが現状だ。高さと決定力を兼ね備えた大型ストライカーは代表に必要なピースだろう。指宿にとっては昨年2月以来のU-23代表入り。関塚監督も「高さの面、前線でのキープ力をどれだけチームで生かせるか」と期待を寄せた。

 そして、もうひとりの注目株は酒井高だ。この1月にシュツットガルトへ移籍したばかりだが、両サイドバックにサイドハーフをこなせるユーティリティー性は高い評価を受けている。レギュラー選手の出場停止からチャンスをつかむと、そこから14試合連続で先発し、チームのヨーロッパリーグ出場権獲得に貢献した。関塚監督も「ブンデスリーガで試合経験を積んで得た力を発揮してもらいたい」とチームへの合流を楽しみにしている。

 国内組では、村松大輔(清水エスパルス)、水沼宏太(サガン鳥栖)らJリーグで結果を出しているプレーヤーが選ばれた。特に村松は清水の中盤の底で活躍し、クラブがリーグ2位につける原動力となっている。今までのU-23代表では主に最終ラインでプレーしてきたが、関塚監督は「(DFの)前のところで壁になりながら、攻撃陣を支えている」とその動きを評価。今大会ではボランチとしての適性もみる考えだ。今回は、五輪予選でボランチとして中心的役割を担っていた山口蛍(セレッソ大阪)を「彼の力はわかっている」とあえて招集しなかった。村松がどれだけ機能するかが、オーバーエージ(OA)枠を含めた五輪メンバーの選考にも大きく関わってきそうだ。

「選ばれなかった選手もまだチャンスは消えたわけじゃない」と、指揮官が強調したように、本番の最終メンバー選考はサバイバルレースの渦中にある。クラブのブンデスリーガ2連覇に貢献し、いまやA代表の顔でもある香川真司(ドルトムント)ら代表入りの資格を有した選手は他にもいる。原委員長は香川について、「呼ばないとも、呼ぶとも決めていない」と言葉を濁したが、待望論は高まる一方だ。またOA枠には遠藤保仁(ガンバ大阪)や中村憲剛(川崎フロンターレ)らの名前が挙がっており、実際に誰を入れられるかもポイントになる。

 U-23日本代表は、この大会、23日にU-23トルコ代表、25日にU-23オランダ代表、27日にU-23エジプト代表と対戦し、グループリーグの2位までに入れば準決勝に進出する。大会が終わると、6月中旬にはOA枠を含めた五輪代表候補が35人までに絞られ、6月末にバックアップメンバーも含め、ロンドンへ臨む戦士たちが最終決定する見通しだ。“仮想五輪”に臨む選手たちが、どんな内容をみせるか。指揮官が「育成と結果の両立」を目標に掲げる五輪へ大きな希望が見える大会となることを関塚監督自身が一番望んでいる。

<U-23日本代表メンバー20人>

GK
増田卓也(サンフレッチェ広島)
安藤駿介(川崎フロンターレ)
DF
比嘉祐介(横浜F・マリノス)
大岩一貴(ジェフユナイテッド千葉)
山村和也(鹿島アントラーズ)
鈴木大輔(アルビレックス新潟)
吉田豊(清水エスパルス)
濱田水輝(浦和レッズ)
酒井高徳(シュツットガルト)
MF
山本康裕(ジュビロ磐田)
村松大輔(清水エスパルス)
水沼宏太(サガン鳥栖)
東慶悟(大宮アルディージャ)
扇原貴宏(セレッソ大阪)
宇佐美貴史(バイエルン・ミュンヘン)
高木善朗(ユトレヒト)
FW
大津祐樹(ボルシアMG)
斎藤学(横浜F・マリノス)
大迫勇也(鹿島アントラーズ)
指宿洋史(セビージャ・アトレティコ)