現地時間19日、2011−12欧州チャンピオンズリーグ(CL)決勝がミュンヘンのフスバル・アレナ・ミュンヘンで行われ、バイエルン・ミュンヘンとチェルシーが対戦した。試合は後半38分、トーマス・ミュラーのゴールでバイエルンが先制。しかし、同43分、チェルシーがディディエ・ドログバの同点弾で追いつき、延長戦へ。それでも決着がつかず、迎えたPK戦、チェルシーが4−3でバイエルンを下し、クラブ史上初のビッグイヤーを獲得した。

 守護神・チェフ、PK2本ストップ!
◇5月19日 ミュンヘン、フスバル・アレナ・ミュンヘン
バイエルン・ミュンヘン 1−1 チェルシー
   (PK 3−

【得点】
[バ] トーマス・ミュラー(83分)
[チ] ディディエ・ドログバ(88分)
 悲願の欧州制覇だ。チェルシーが完全アウェー、主力の出場停止というハンデをチーム全員で乗り越えた。

 戦前の予想どおり、攻撃力で勝るバイエルンにボールを支配された。そして、マリオ・ゴメス、アリイェン・ロッベン、フランク・リベリ、トーマス・ミュラーからなるリーグ戦57点カルテットに、守備陣が脅かされる。前半21分には、ロッベンがリベリとのワンツーからPA内左サイドに侵入。左足のシュートは、GKペトル・チェフが何とか弾き出した。43分には、PA内中央でゴメスに左足で狙われるも、これはゴール上に外れ、難を逃れた。

 防戦一方のチェルシーは、カウンターから活路を見出そうとする。38分にはドログバのポストプレーからフアン・マタが右前方へパス。受けたサロモン・カルーが右足でシュートを放った。これはGKに防がれたものの、バルセロナを下した速攻はこの日も機能していた。

 スコアレスのまま突入した後半も、バイエルンが攻勢を仕掛け、チェルシーがそれに耐える構図は変わらない。さらに鋭さを増す相手の攻撃に、ブルーズ(チェルシーの愛称)は全員が自陣に戻って対抗した。最後まで体を寄せてアタッカーに重圧をかけ、シュートは打たせてもゴールまでは許さない、

 だが、後半38分、ついに固めた守りを崩される。PA外左サイドからファーサイドへ送られたクロス。これをミュラーに頭で叩きこまれた。均衡を破る先制ゴール。バイエルンのクラブカラーである赤色に染まったスタジアムではミュラーコールがこだまし、勝負あったかと思われた。

 それでも、チェルシーの選手は諦めていなかった。敗色ムードを変えたのはエースストライカーのドログバだ。失点から5分後、この試合初めて得たCKからのボールに、ニアサイドで合わせた。頭でジャストミートしたボールは、GKマヌエル・ノイアーの手を弾き、ゴールネットを揺らした。値千金の同点弾で試合は延長戦に突入する。

 試合のポイントとなったのは延長前半3分のプレーだ。PA内にドリブルで侵入したリベリをドログバが倒し、判定はファール。バイエルンにPKが与えられた。絶好機に沸きあがるバイエルンサポーター。しかし、キッカーのロッベンの前に立ちふさがったのはチェルシーのGKチェフだ。右に飛んで、ロッベンのキックをセーブ。この守護神のビッグプレーが、勝利への望みをつないだ。

 その後もホームスタジアムでの優勝を狙うバイエルンの攻勢をチェルシーは体を張った守備で耐え凌ぐ。試合は120分を戦っても決着がつかず、決勝では07−08シーズン以来のPK戦にもつれ込んだ。奇しくも、この時、決勝に進出していたのがチェルシーだった。結果はマンチェスター・ユナイテッドに敗れ、優勝を逃した。

 疲労とプレッシャーが極限に達する中で運命のPK戦。チェルシーは1人目フアン・マタのキックがノイアーにセーブされ、いきなり窮地に立たされる。3人目が蹴り終えた時点のスコアは2−3。バイエルンサポーターがスタジアムの雰囲気を支配するなか、再びチェルシーはPK戦に泣くかと思われた。

 しかし、延長戦でチームを救った守護神が、奇跡を起こす。バイエルンの4人目、イビツァ・オリッチのキックを右手で弾き出す。続く5人目のバスティアン・シュヴァインシュタイガーのキックは右ポストに当たって跳ね返った。

 チェルシーは4人目が決めて3−3のタイに追いつき、最後の5人目は、同点弾を決めたドログバ。4季前は、延長後半に退場となり、敗戦をピッチ外で見つめていた。そんなドログバが放ったシュートは、GKの逆を突き、ゴール左下に吸い込まれる。その瞬間、チェルシーの選手たちは拳を突き上げ、クラブ2度目のファイナルは、劇的な勝利でハッピーエンドを迎えた。一方、敗戦の瞬間、選手たちがグラウンドに倒れこんだバイエルン。シュート数24本で1得点という決定力不足に泣いた。

 120分間を振り返ってみれば、ドログバは前線でカウンターのターゲットであり続けた。普段は攻撃的なフランク・ランパードは、ボランチとして守りにも徹した。そして、レギュラーCBの2人を欠いた最終ラインは、チェフを中心に体を張ってゴールを守った。途中出場した選手も前線から勢いよくプレスをかけていた。全員がそれぞれの役割を全うし、チームは一丸となっていた。その意味で、チェルシーは勝者にふさわしかった。