19日、フランス・パリでロンドン五輪に向けた強化試合が行われ、日本女子代表(なでしこジャパン)は五輪出場国でFIFAランキング6位のフランス女子代表と対戦した。日本は前半24分、FWデリに先制ゴールを奪われる。後半にもさらに1点を加えられると、攻撃も無得点に抑えられ、五輪前最後の実戦は完敗に終わった。

 昨年7月以来、18試合ぶり無得点(パリ)
フランス女子代表 2−0 日本女子代表
【得点】
[フ] デリ(24分)、ルナール(74分)
 悲願のメダル獲得に向けて不安の残る結果となった。昨年のW杯ベスト4のフランスは、五輪の決勝トーナメントで対戦する可能性が考えられる。日本はMF宮間あや(岡山湯郷)やMF澤穂希(INAC神戸)らベストメンバーで臨んだが、攻守に精彩を欠いた。

 試合開始から相手にコンパクトな組織を形成され、攻撃のスペースを消された。中盤でパスコースを探すうちに、プレッシャーをかけられて奪われたり、焦ってパスミスになったりと攻撃のかたちをつくれない。また全体の動きが重く、いつものような前線からのプレッシングが見られなかった。そのため、守備では出足が遅れ、人数が揃っていながらも押し込まれる場面が目立った。前半9分には、MFティネに左サイドを抜け出されてクロスを上げられる。MFネシブがニアサイドで合わせたボールはクロスバーを直撃したが、失点してもおかしくない場面だった。

 そして24分、フランスに主導権を握られたまま、先制点を奪われる。デリに左サイドからのアーリークロスに抜け出され、最後は右足でゴール右へ流し込まれた。この時、日本のゴール前にはDF熊谷紗希(フランクフルト)とDF岩清水梓(日テレ)が揃っていたが、2人ともデリのスピードに振り切られた。また、右サイドバックの近賀ゆかり(INAC神戸)はアプローチが遅れ、簡単にクロスを上げさせてしまった。

 悪い流れは攻撃にも影響した。失点直後にはFW大儀見優季(ポツダム)がGKとの1対1の決定的場面を迎えるものの、シュートはGKに防がれる。43分には、宮間がゴール正面、約20メートルの位置から得意のFK。ゴール右下に飛んだボールをGKが掻き出したところをMF澤穂希(INAC神戸)が詰めた。しかし、シュートは左ポストに当たり、同点ゴールには至らなかった。

 1点ビハインドで迎えた後半、日本は持ち前の細かいパスワークから攻撃を組み立てようと試みる。22分にはケガ明けのMF岩渕真奈(日テレ)、28分にはFW安藤梢(デュイスブルク)を投入し、活性化を図った。
 ところが、安藤がピッチに入った直後、逆にセットプレーから痛い追加点を奪われる。左CKから身長187センチのDFルナールに頭で叩きこまれた。大儀見と熊谷が体を寄せていたものの、それをものともせず完璧に合わせられての失点だった。日本の平均身長は約163センチで、初戦で当たるカナダは約169センチ、第2戦のスウェーデンは約173センチ。高さ対策でも不安をのぞかせた。

 2点を追う日本はゴールに迫ろうとするが、中央に人数をかけたフランス守備陣を崩せない。結局、後半のシュートはわずか2本。それも味方に当たったり、枠から大きく外れるなど、フィニッシュの精度を欠いた。日本は昨年7月のドイツW杯、イングランド戦(0−2)以来、18試合ぶりにノーゴールで試合を終えた。

「きょうの私たちの出来では勝てなかった」
 宮間はこう完敗を認め、「単純なミスが多かった」と振り返った。佐々木則夫監督は「もう少し自分たちのリズムで正確にやれるかどうか」を五輪に向けての課題にあげる。この試合でリズムをつかめなかった要因は相手にスペースを消されたことが大きい。そのため、タテに速い攻めを繰り出すことができなかった。五輪本番でも、相手がフランスのような戦法をとってくることが予想される。MF川澄奈穂美(INAC神戸)は「アタッキングサードでの崩しのアイデアだったり、もっとシュートに向かう姿勢が必要」と語った。
 
 日本は20日に英国・コベントリー入りし、初戦となる25日のカナダ戦に向けて最終調整を行う。残り5日でいかに課題を修正できるか。女王・なでしこの真価が問われている。

<なでしこジャパン出場メンバー>

GK
福元美穂
→海堀あゆみ(45分)
DF
近賀ゆかり
岩清水梓
熊谷紗希
鮫島彩
MF
澤穂希
阪口夢穂
宮間あや
川澄奈穂美
→岩渕真奈(66分)
FW
大野忍
→安藤梢(73分)
大儀見優季