日本列島は各地で梅雨明けが発表され、いよいよ夏本番を迎えつつある。間もなく開幕するロンドン五輪や、夏の風物詩でもある高校野球、中学、高校の総合体育大会など、スポーツイベントも目白押しだ。しかし、気温の上昇とともに注意しなくてはならないのが熱中症である。体のなかに熱がこもり、めまいや頭痛、吐き気などを引き起こす。

 この熱中症の有効な対策としては、日射を防ぐ、通風を確保する、こまめに水分と塩分補給をするといった方法がメディアでは盛んに紹介されている。もちろん、これらはいずれも熱中症を防ぐためには有効だ。

「ただし、熱中症にかかりにくい体にするために、もっと重要なことがある」と大阪大学の大山良徳名誉教授(医学博士)は語る。それが「低体温の解消」だ。なぜ低体温だと熱中症にかかりやすいのか。大山教授はこう説明する。
「人間は普段、汗をかくことによって体温を調整しています。しかし、低体温になると汗をかくことが少なくなり、体の汗腺機能が低下する。すると気温の急な上昇に体が対応できず、熱が体内にこもってしまうのです」

 熱中症は人体のホメオスタシス機能(恒常性維持機能)の低下によって引き起こされる。ホメオスタシス機能とは、常に人体を同じ状態に保とうとする働きのことだ。人は外部環境の変化に応じて、体温のみならず、心拍や血圧などを一定の範囲内にとどめることで生命を維持する。ところが、熱中症では気温の上昇に対し、この機能がうまく働かず、体に変調をきたすのだ。もともと体温が低いと、このホメオスタシス機能は活発に作用しない。そのため熱中症にかかりやすくなるというわけだ。

 実は低体温が体に及ぼす悪影響は、これだけではない。大山教授は次の6つを問題点としてあげる。

1.体内酵素が活性化しないため、消化やエネルギー代謝に多量の酵素が必要になる。酵素が不足がちになると、消化に使われる率が高まり、その分、代謝に回る分が減少する。代謝が落ちることで細胞組織の形成や再生、修復能力が低下する。

2.体内が低酸素状態に陥り、細胞内のミトコンドリアに酸素が十分に供給されない。よってエネルギー生成能力が低下し、元気がなくなる。

3.腸の蠕動運動が弱くなる。腸内細菌のバランスが悪くなり、消化、吸収の妨げとなる。

4.免疫力、特にリンパ球の働きが鈍る。体内に侵入した病原菌に対する抵抗力が弱まり、病気にかかりやすくなる。

5.基礎代謝が低下する。筋量が少なくなり、さらに代謝が落ちて低体温に陥るという悪循環が生じる。

6.消化、吸収力が低下するため、サプリメントや薬を摂取しても、その効力が弱まる。

 近年の日本人は低体温化の傾向にあると言われている。その原因は、ひとつに高齢化がある。年齢を重ねると基礎代謝が低下し、それに伴って体温が下がるからだ。しかし、もうひとつ見逃せないのが若者の体温低下だ。

「外で遊んだり、体を動かす機会が少なくなっているため、昔に比べると汗をかかないし、筋量が少ない。子供の体温は成人より高いのが一般的ですが、体温の低い子供も増えてきています」と大山教授は語る。ここ数年、熱中症が問題視されるようになったのは、温暖化の影響による異常な夏の暑さに加え、日本人の低体温化も関係しているのだ。

 では、低体温を防ぐためには日頃、何をすべきか。大山教授は以下の3点を強調する。

1.年齢に応じた適度な運動をする。運動することで体内の熱をあげ、汗腺機能を働かせる。かと言って、高齢者の場合はあえて走ったり、ハードな運動をする必要はない。立ったり、座ったりするだけでも筋肉は使う。効果的なのはストレッチ運動。筋肉をやわらかく、関節を広げることで体のバランスを保ち、転倒によるケガ防止にも役立つ。

2.睡眠を十分にとる。疲労がたまると体の機能は低下する。また睡眠中の発汗を促すことも重要。寝る前には水分を補給し、とりわけ体表面の血液循環を高め、熱を発散(=発汗)させる。

3.栄養をしっかりとる。特にカボチャ、ニンジンなどに含まれるビタミンEは血流改善に有効。代謝をあげるには、豚肉、玄米などから摂れるビタミンB1も良い。脂肪を燃やして熱量をあげるにはカプサイシン(とうがらしなどに含有)を摂る。筋量を回復する上でのたんぱく質も大切。

 人は普段、体温を意識して生活することが少ない。体温を測るのは風邪を引いた時くらいだろう。したがって低体温であることに気づかず暮らしているケースが少なくない。大山教授は体温を日々、同じ時刻に計測することを勧めている。体温は一般的に午後2〜5時頃が高く深夜は低い。一定の時刻に測ることで自分の体温の変化に気づき、いち早く対処できる。

 山本化学工業では、医療機器で温熱治療効果のある「メディカル バイオラバー」を開発し、販売している。温熱パックを安全かつ有効に活用することで、短期間で体を温めることができる。この製品に使用されている素材は独立気泡構造で、直径1ミリのなかに約30個のハニカム(六角形)構造が並んでいる。この小さなハニカム構造に貴金属鉱物を配合することにより、外部からくる光エネルギーの赤外線を効率よく吸収し、放出することができるのだ。

 このメディカルバイオラバーを使用した上で体を動かすことで、より体内の温度を適正に向上させ、代謝を促す相乗効果が生まれる。山本化学工業では、なかなか自ら体を動かしにくい高齢者を中心に、メディカルバイオラバーを活用した新しい製品の開発を目指している。

 大山教授は「低体温は万病の元、元気のもとは体温にあり。これを多くの皆さんに理解していただきたいですね」と語る。これからの季節、30度以上になる気温ばかりを気にしがちだが、自分の体内の温度にも注意を促したい。

 山本化学工業株式会社


※今回は諸事情により、通常の更新日から日程を変更して掲載しました。