29日、アーチェリー女子団体が行なわれ、日本は3位決定戦でロシアを209−207で破り、銅メダルを獲得した。日本女子アーチェリーとしては史上初、団体では男女を通じて初となるメダル獲得で、30日から始まる個人戦に勢いをつけた。
 日本のアーチェリー界に新たな歴史が刻まれた。ウクライナ(世界ランキング3位)、メキシコ(同5位)と強豪を破り、初のベスト4進出を果たした日本だったが、五輪7連覇を狙う韓国と対戦した準決勝では後半に崩れ、決勝進出を逃した。だが、ロシアとの3位決定戦では最後まで気持ちを切らすことなく1点を争う大接戦を制した。

 3選手が1射ずつを撃ち、それを両チームが交互に繰り返し行なわれる団体戦。1エンドで1人2射ずつの計24射の合計ポイントで勝負が争われる。表彰台をかけて行なわれた3位決定戦は、第1エンドから49−49と両者ともに一歩も譲らない展開となった。会場が緊張感に包まれる中、日本3選手がプレッシャーに打ち勝ち、最後まで高い集中力を保つことができた、その要因にはどんな状況に置かれても絶えることのなかった笑顔にあった。

 第2エンドではこの試合、両チーム通じて初となる10点がロシアに出ると、続けざまに3連続で10点を挙げ、流れが一気にロシアに傾いた。それでも日本は笑顔で切り抜ける。「勝っていても、負けていても、笑顔でいよう」という新海輝夫監督の方針のもと、日本チームは結束力を高めてきた。それが五輪という舞台で発揮された。第2エンドで負けじとエースの早川漣(佐世保商高職)が10点を叩き出すと、4点ビハインドで迎えた第3エンドでは蟹江美貴(ミキハウス)にも10点が出て、1点差に迫った。

 そして最終の第4エンド、風の影響を受ける難しい環境の中、両者ともにうまくコントロールをして高い得点を挙げ、1射目を終えた時点で181−181と並んだ。勝てばメダルというプレッシャーがかかるこの場面でも、日本チームには変わらず笑顔がこぼれていた。これが気持ちを楽にさせ、高い集中力を生み出したのだろう。蟹江、川中香緒里(近大)と9点を挙げると、最後は早川が「10点が欲しい時に10点を挙げるのがエース」という言葉通り、見事に満点を叩き出した。

 だが、ロシアも負けてはいなかった。1人目が8点を挙げると、2人目は10点満点を挙げてみせた。これで最後の1人を残して日本とロシアとの差は10点。9点以下であれば、日本の勝利が決定する。会場内が静まり返る中、ロシアが最後の1射を撃った。時速250キロの矢が突き刺さったのは、「8」だった。その瞬間、この日一番の笑顔を見せた3人の目からは涙があふれた。全員が初出場の日本チーム。笑顔による結束力で日本アーチェリー女子初のメダルに輝いた。