29日、男子サッカー競技のグループリーグ(GL)第2戦が行われ、グループDのU-23日本代表が同モロッコ代表(アフリカ2位)と対戦した。日本は後半39分、FW永井謙佑(名古屋)のゴールで先制する。これが決勝点となり、連勝でGL突破条件のグループ2位以内を確定。シドニー五輪以来、3大会ぶりの決勝トーナメント進出を決めた。日本は8月1日、3戦目で同ホンジュラス代表と対戦する。

◇グループD
 永井、ベスト8導く決勝弾!(ニューカッスル)
U-23日本代表 1−0 U-23モロッコ代表
【得点】
[日] 永井謙佑(84分)
 永井の“足”が日本をベスト8に導いた。最もつらい試合終盤に快足を飛ばしてモロッコ守備陣を切り裂き、ゴールを陥れた。

 序盤は、中2日の強行軍の影響か動きが重かった。スペイン戦同様、永井を筆頭に前線からプレスをかけに行くが、出足が遅れる。モロッコにボールをキープされ、両サイドにロングボールを放り込まれる場面が多く見られた。深い位置まで攻め込まれると、徐々にDFラインが下がり、中盤でスペースが空く。流れは決して良くなかった。

 前半18分には、サイド攻撃からCKを奪われてピンチを迎える。右CKをファーサイドに入れられ、混戦になったところをFWヌルディン・アムラバトに押し込まれた。しかし、ゴール至近距離からのシュートは、DF酒井高徳(シュツットガルト)が体を張ってブロック。初戦で左足首を捻挫したDF酒井宏樹(ハノーバー)に代わってのスタメン出場で、失点を防ぐ貴重な役割を果たした。

 大ピンチを凌いだ日本は徐々に落ち着きを取り戻し、パスを回して攻撃のリズムを築いていく。20分過ぎからは1トップの永井と左MFの大津祐樹(ボルシアMG)をポジションチェンジ。永井は2列目に下がったことでボールを受ける回数が増えた。すると42分、この背番号11がチャンスをつくりだす。右サイドをドリブルで攻めあがり、中に切り込んでPA内右へスルーパス。MF大津が反応してシュートを放つ。さらにCKを獲得し、DF鈴木大輔(新潟)がニアサイドで合わせた。
 2分後には、今度は右CKからDF吉田麻也(VVV)がニアサイドに飛び込む。いずれもゴールネットは揺らせなかったものの、日本は永井の積極的な仕掛けから立て続けに好機を生みだし、流れを引き寄せて試合を折り返した。

 後半も立ち上がりこそモロッコに左右のサイドから攻め込まれたが、中盤の選手もしっかりとカバーリングに戻り、一丸となった守備で相手の攻撃を跳ね返す。相手への素早いアプローチも機能し始め、日本が守備から主導権を握った。

 そんな後半18分、大きなチャンスを迎える。演出したのは永井だ。左サイドでパスを受けると中央へカットイン。右サイドにいた清武へボールを預ける。清武は中に切り込んで左足でシュートを放つも、ゴール左上へ飛んだボールはGKの手に当たり、クロスバーを直撃。惜しくも先制ゴールには至らなかった。

 その後もチャンスをつくりだす日本だが、相手GKのファインセーブもあり、なかなかゴールネットを揺らすことができない。これを受けて日本ベンチが動く。33分、大津に代えてMF齋藤学(横浜FM)を投入。齋藤は左MFに入り、永井を前線に戻した。

 このポジション変更が実った。39分、ワントップの永井がついに均衡を破る。清武のピッチ中央からの浮き球に反応。裏へ抜けたボールに快足を飛ばし、PA外に飛び出してきたGKよりも一歩早くボールに追いつく。右足ダイレクトで放ったループシュートが、無人のゴールへ吸い込まれた。貴重な1点をもぎとった永井はゴール裏の電光掲示板上に立ち、両腕を突き上げて雄叫びをあげる。関塚隆監督は「疲れている中でよく決めてくれた」と韋駄天ストライカーに賛辞を惜しまなかった。

 永井の値千金のゴールに、守備陣も奮起した。終了直前、ロングボールからMFザカリア・ラビヤドに抜け出される絶体絶命のピンチ。しかし、1対1になりながらGK権田修一(FC東京)がシュートをブロック。こぼれ球をMFオマル・エルカドゥリに押し込まれたが、今度は吉田が滑り込みながらクリアした。虎の子の1点を守り切った日本が、勝ち点を6に伸ばし、GL最終戦を残してベスト8進出を確定。前日にGL突破を決めたなでしこジャパンとともに男女揃っての準々決勝進出は日本史上初の快挙となった。

 勝因はチーム一丸となった戦いができていることに尽きる。この試合も試合序盤こそうまく連動しなかったが、最後までチーム全員が走り続け、ペースを奪い返した。スペインからの金星でチームは勢いに乗っている。MF扇原貴宏(C大阪)は「勝てる気しかしない」と強い自信を口にした。早々にGL突破を決めたことで、次のホンジュラス戦は決勝トーナメントに備えて、主力を温存するなどの余裕が生まれた。しかし、永井は「次もしっかり勝って、1位で決勝トーナメントに向かいたい」と3連勝への意欲を示す。第3戦は勝てばもちろん、引き分け以上でもGL1位通過だ。日本が誇る快足FWが、関塚ジャパンをさらなる高みに導く。

<U-23日本代表出場メンバー>

GK
権田修一
DF
酒井高徳
鈴木大輔
吉田麻也
徳永悠平
MF
扇原貴宏
山口螢
清武弘嗣
→杉本健勇(90分)
東慶悟
大津祐樹
→齋藤学(78分)
FW
永井謙佑