2日、テニスの男子シングルスは準々決勝が行われ、五輪の同種目では88年ぶりにベスト8に進出した錦織圭(日清食品、世界ランキング17位)は同9位のフアンマルティン・デルポトロ(アルゼンチン )と対戦した。ここで勝てば1920年アントワープ大会で銀メダルを獲得した熊谷一弥以来、92年ぶりの準決勝進出だったが、セットカウント0−2(4−6、6−7)で敗れ、快挙達成はならなかった。
 長く閉ざされた歴史の扉は厚く、高かった。北京に続く2度目の五輪となった錦織の快進撃はベスト8で終わりを迎えた。
 前日の3回戦ではランキング5位の強豪、ダビド・フェレール(スペイン)を2−1で撃破。五輪では日本勢がシングルスで1勝すること自体、24年パリ大会以来、88年ぶりの出来事だったが、一気に3勝してベスト8まで勝ち上がった。

 デルポトロは1カ月前のウィンブルドンではストレートで敗れている相手だ。2メートル近い長身から放つ強烈なサーブにこの日も苦しめられた。それでも、第1セットでは粘って相手のサービスゲームを2度ブレーク。ゲームカウントを4−5として、自身のサービスゲームを迎えた。ここをキープしてタイブレークに持ち込みたいところだったが、ブレークを許し、4−6と第1セットを落としてしまう。

 第2セットに入るとデルポトロはさらにショットが冴え、いきなり3ゲームを先取。主導権を握られたまま2−5となり、後がなくなった。しかし、ここから錦織は挽回する。まず自らのサービスゲームを確実にとり、続く相手のゲームではサーブをしっかり打ち返してブレークポイントを握る。最後は根負けしたようにデルポトロがダブルフォルトを犯し、1ゲーム差に詰め寄った。続くサービスゲームはキープして5−5。このまま、このセットはタイブレークに突入した。

 タイブレークも先行したのはデルポトロだ。サービスエースを決めるなど4−1とリードする。このまま押し切られてもおかしくない状況ながら、錦織は再び粘った。サーブから2つポイントを返すと、相手を左右に大きく振ってミスを誘う。4−4と追いついて、勝負の行方は分からなくなった。

 だが、再三の踏ん張りもここまで。高速サーブで体勢を崩されて次のポイントを失い、前に出てプレッシャーをかけてきたデルポトロの裏をとろうとしたショットは大きく外れた。これでマッチポイントとなり、最後は錦織のバックハンドがネットにかかり、ストレート負けが決定した。

 日本人男子では松岡修造(96年アトランタ五輪)以来の出場となった4年前の北京五輪は初戦敗退。その後はケガもあり、苦しい時期もあった。だが、今年は全豪オープンで自身初の4大大会ベスト8入りを果たしたのをきっかけに、ランキングは世界のトップ20に上昇している。22歳の若きテニスプレーヤーが、世界と対等に渡り合える力をつけていることを改めて示した五輪になった。