2日、競泳では再び日本勢がメダルを量産した。女子200メートル平泳ぎ決勝では、100メートル銅の鈴木聡美(山梨学院大)が2分20秒72の日本タイ記録で銀メダルに輝いた。男子200メートル背泳ぎでは入江陵介(イトマン東進)が1分53秒78で2位に入り、100メートルに続くメダルを獲得。これで今大会の日本競泳陣のメダル総数は9つ(銀2、銅7)となり、過去最多だったアテネ大会(8個=金3、銀1、銅4)を上回った。
<鈴木、「100よりいい色」>

 競泳界の新しいヒロインだ。
 女子200メートル平泳ぎといえば、20年前のバルセロナ五輪で岩崎恭子が金メダルに輝いた種目。その時、まだ1歳だった鈴木が、岩崎以来となるメダルを同種目で獲得した。

 3位に入った100メートルから続く好調をキープした。前日の準決勝では2分22秒40の自己ベストをマーク。全体の3位で決勝に進んだ。準決勝でワールドレコードを叩きだしたレベッカ・ソニ(米国)が隣を泳ぐなか、鈴木はスタートから飛ばし、トップに並ぶかたちでレースを引っ張る。準決勝よりも速い入りで、100メートルを3位で折り返すと、後半も全く勢いは衰えない。

 後半の強さは彼女の一番の強みだ。「150メートルまでついていって、(ソニと)お互いに勝負しようと思って臨んだ」とラストターンを2位で終えると、前を行くソニを追いかける。周囲がひとり、またひとりと脱落する中、伸びのあるフォームで世界記録保持者に迫った。

 結局、世界記録をさらに0.01秒縮めたソニには及ばなかったが、自己記録を1秒68も更新。日本タイ記録のおまけつきで、100メートルからひとつ順位をあげた
「自己記録も大幅に更新しましたし、100より(メダルが)いい色で本当に良かった」
 レース後の鈴木の表情には充実感が漂っていた。

 昨年の世界水泳は両種目とも決勝に進めなかった。それからわずか1年で決勝進出どころかメダルを獲る選手に成長した。試合後のインタビューでは冷静にレースを振り返り、大学生とは思えないほど言動はしっかりしている。大会前は決して注目される存在ではなかったが、2つのメダルで一躍、トップスイマーの仲間入りを果たした。

<入江、ロクテ破るも無念の銀> 

 本人はゴールの瞬間、金メダルと思ったのではないか。ラスト約10メートルで、最大のライバルと目されていたライアン・ロクテ(米国)をかわした。しかし、レースは2人によるデッドヒートではなく、三つ巴の展開だった。ロクテの向こうで泳いでいたタイラー・クレアリー(米国)が、入江よりも、わずかに速くゴール板にタッチした。

 結果を電光掲示板で確認した瞬間、入江は思わず顔をしかめ、天を仰いだ。
「ずっと金メダルを夢見てきた。銀メダルには後悔がある」
 レース後の言葉には悔しさがにじんでいた。

 スタートの速さ、ターンの力強さで上回るロクテと互角の争いを展開した。スタートとターンで生じる遅れを、バランスのとれた美しいフォームからなる泳ぎで挽回。50メートル、100メートルのターンはいずれもロクテにピッタリつくかたちの2番手だった。

 それだけに本人も「100%のレースができた」と語る。100〜150メートルでロクテは一気に加速したが、「つらかったことを思い出して」、必死に追いかけた。そして150メートル以降、失速したロクテに追いつき、抜いた。

 優勝こそ逃したが、北京では届かなかったメダルを2つも手中にした。そして、全種目を締めくくるメドレーリレーで自身3つ目のメダルを狙う。3大会連続の銅となれば、今大会の日本競泳陣のメダルは、ついに2ケタに乗る。日本チーム好調の要因について、入江は「(代表の)27人でひとつのリレーをしているような意識でやっている」と明かす。そしてこう言った。
「リレーで最後の自由形の選手がタッチするまでは終わりじゃない」
 2個のメダルを得た達成感も、金を獲れなかった悔しさも胸の中に一旦しまい、入江はリレーの第一泳者として全力を注ぐ。

 なお、同じく決勝に出場した渡辺一樹(セントラルスポーツ)は1分57秒03で6位だった。