4日、バドミントンの女子ダブルスは決勝が行われ、藤井瑞希、垣岩令佳組(ルネサス)は田卿、趙蕾組(中国)に0−2(10−21、23―25)で敗れたが、銀メダルを獲得した。1992年の競技採用以降、日本勢初のメダル。第1セットを失った藤井、垣岩組は第2セット、相手の3度のマッチポイントをしのいで粘ったが、最後は力尽きた。
 最後は趙の放った強烈なショットが2人の間に落ち、フジカキのロンドンでの戦いは終わりを告げた。
 第2セットは23−25。21点先取のセットでペアは最後まで諦めなかった。“無気力試合”により、上位ペアが失格となったことから生まれた大きなチャンス。しかし、そのプレーは文句なく五輪のファイナリストにふさわしいものだった。

 同競技では日本勢が初めて挑む決勝、藤井と垣岩はリラックスした表情でバドミントンの聖地・ウェンブリー・アリーナのコートに入った。青森山田高の先輩後輩としてペアを組んで8年。世界でわずか2組しか経験できない舞台を楽しんでいるように映った。

 とはいえ、相手は世界ランキング2位のペアだ。同ダブルスでは中国勢5連覇がかかっている。第1セットはフジカキペアが2点を先行するも、中国ペアの力強く、速いスマッシュに翻弄され、すぐに逆転を許す。逆に藤井、垣岩のショットはことごとく拾われ、完全に主導権を奪われた。

 5−12と7点差をつけられたフジカキペアは、藤井が奮闘。前に出てネット際のシャトルを押しこむなど一時は4点差に迫った。ただ、エンジンのかかった中国ペアからは簡単に連続ポイントは奪えない。フェイントを駆使されて前後に振られ、再び点差が大きく離れていく。最終的には21−10と圧倒されて第1セットを失った。

 もう後がない第2セット、中国ペアは後衛の田が強烈なスマッシュを藤井、垣岩の体めがけて放てば、前衛の趙がスルスルと前に出て、甘い返球を逃さない。フジカキペアは序盤からポイントを失い、一時は4−8とリードを広げられる。

 しかし、ここで中国ペアも勝利を意識し始めたのかサーブミス、レシーブミスを連発。3連続ポイントで迫ると、藤井が前に出てスマッシュを決め、9−9の同点に追いつく。顔が引きつってきた中国ペアに対し、笑顔も見えるフジカキペア。その後も藤井、垣岩の巧みなコンビネーションが相手のミスを誘発するかたちになり、さらにポイントを重ねて12−9と逆転に成功する。

 セット終盤に突入し、中国ペアも得点をあげて追いかけるなか、垣岩が3連続スマッシュをみせるなどして引き離す。それでも中国ペアが16−16と同点に追いついたが、フジカキペアも確実にポイントを取り返し、相手にリードを許さない。互いに得点を奪い合い、19−19とがっぷり四つの展開となる。

 次に得点をあげたほうがセットポイントとなる大事な場面。中国ペアは藤井を集中して狙い打ち、アウトを誘ってマッチポイントを迎えた。だが、互いにフォローし合うのが真のペアだ。絶体絶命のピンチに今度は後輩の垣岩が前へ出てシャトルを相手コートに叩きつける。さらに垣岩が連続ポイントをとって21−20と逆にセットポイントを奪い返した。

 ここからはお互いに引けない戦いだ。中国ペアも趙がこれでもかとスマッシュを放って、すぐさま同点に追いつくと、今後は22−21とマッチポイントを迎える。しかし、フジカキペアは、ここをしのぐと、再び23−22と勝ち越されても粘りに粘って相手のショットを拾い、追いついた。

 バドミントンの醍醐味が凝縮された白熱した内容にスタンドの盛り上がりは最高潮に達する。最終的には4度目のマッチポイントで中国ペアに押し切られたとはいえ、フジカキペアには大きな拍手が送られた。

 試合後、拍手に手を振って応えた藤井、垣岩は揃って笑顔だった。銀ではあるが日本にとっては届きそうで届かなかった念願のメダルである。強豪相手に決勝で互角に渡り合った経験は大きな財産だ。日本バドミントン界の新たな歴史が、ロンドンの聖地から始まる。