Jリーグの2012年シーズンが12月1日(土)にフィナーレを迎える。前節ではサンフレッチェ広島が悲願の初優勝を決めた。しかし、優勝争いは終局したものの、まだ熾烈な争いは続いている。AFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場権(リーグ戦3位以上)と残留(16位以下が降格、18位・札幌はすでに確定)をめぐる争いだ。ACL出場権を狙うのはサガン鳥栖、柏レイソル、浦和レッズ、名古屋グランパス、横浜F・マリノス。セレッソ大阪、ヴィッセル神戸、ガンバ大阪、アルビレックス新潟は残留を懸けた大一番に臨む。
 ACL出場権争いは直接対決も

 すでにACL出場権を得ているのは広島と2位を確定させたベガルタ仙台。残った1枠を5チームが争う。
 3位の鳥栖(勝ち点53)はアウェーで7位の横浜FM(50)と激突する。鳥栖は勝てば3位が確定。今季初めてJ1に昇格したクラブが、初年度で出場権を獲得すれば史上初の快挙となる。中心選手はFW豊田陽平だ。現在、得点ランク2位(19)につけ、ここ4試合で7ゴールを荒稼ぎしている。身長185センチの高さを生かしたヘディングのみならず、相手選手を背負ったままシュートに持ち込むパワーと技術も備える。鳥栖としてはポイントゲッターにどれだけチャンスボールを供給できるかがカギだ。

 一方、横浜FM(勝ち点50)は勝利以外に道がなく、さらに他試合の結果に左右される厳しい状況だ。。今季は開幕7戦白星なしとつまずいたが、第8節から4連勝を含む15試合負けなしと驚異的な巻き返しを見せた。注目はFW齋藤学。前節(対)で約4カ月ぶりのゴールを含む2得点した流れを最終節に持ち込みたい。ロンドン五輪にも選ばれたドリブラーが、8季ぶりのACLへ導くことができるか。

 もうひとつの直接対決、5位・浦和―6位・名古屋(埼玉)は勝ち点3を巡る激しい戦いになりそうだ。勝ち点は52で並んでおり、両者とも鳥栖と勝ち点1差だが、得失点差で大きく離されている。勝利かつ鳥栖が引き分け以下に終わることが出場権獲得条件だ。
前節、浦和は鳥栖に1−3で完敗し、出場圏内から引きずり降ろされた。大量失点を喫した守備を、1週間でどこまで立て直せているかがポイントだ。ボールを奪ってからは速さと技術のあるFW原口元気やMF梅崎司らの待つ前線に素早くつなぎたい。

 名古屋は鹿島に1−2で競り負けた。キーマンはDF田中マルクス闘莉王。言わずとしれた守備の要だが、今季はFWとしても起用されている。第20節では4ゴールを叩きだすなど、FWとしての実力は本物。まさに攻守の要として君臨している。闘莉王にとって浦和は古巣であり、最終節の会場は慣れ親しんだ埼玉スタジアム。ブーイングが飛ぶのは必至だが、闘将にはそれもエネルギーになるはず。“DFW”闘莉王の活躍がチームの命運を握っている。

 4位・柏(勝ち点52)は勝ったうえで、鳥栖が引き分け以下に終われば、逆転3位に滑り込む可能性が濃厚だ。条件は浦和―名古屋がドローもしくは、勝者に得失点差で上回られないことだが、第33節終了時点で得失点差でも優位な状況にある。しかし、対戦相手の鹿島アントラーズとは、相手のホームでは1勝9敗2分けで相性が悪い。柏としてはホームで勝ちにくる相手の攻撃をしっかりしのぐことが重要だ。その上で、現在得点ランク4位(13)のFW工藤壮人ら攻撃陣が、巡ってくるチャンスを確実に決めたい。

 優位なC大阪、ポイントは守備

 残留争いも大きな波乱が起こりそう。
 14位・C大阪(勝ち点41)は4チームのなかで最も優位な立場にある。あと勝ち点1さえ積み上げれば、残留が確定するからだ。だが、ここ5試合勝ちがなく、前節は広島に1−4で粉砕された。最終節のポイントは守備。対戦する川崎フロンターレは3連勝中で勢いに乗っている。守りを修正できなければ広島戦の二の舞になる危険性が高い。引き分け狙いの弱気は禁物だが、攻撃偏重のC大阪にとっては少し守備に比重を置くほうが攻守にバランスがとれるのではないだろうか。ホームの大歓声を悲鳴に変えるわけにはいかない。

 15位の神戸(同39)は、本拠地に王者・広島を迎えての大一番だ。勝利すれば自力で残留を確定できる。広島は得点王がかかる佐藤寿人にボールを集めてくることが予想される。神戸としては、佐藤へのパスの出所をつぶし、広島の攻めようと押し上げたDFラインの背後をカウンターで突きたい。思えば10年シーズン、神戸は最終節で降格圏から脱出する逆転残留を果たしている。今回も火事場の底力を発揮し、降格を免れるか。

 降格圏の16位・G大阪(勝ち点38)は残留争いのなかで、唯一、最終節がアウェー戦となった。ジュビロ磐田と対戦し、負ければ降格。勝利した場合は、C大阪の負けあるいは、神戸が引き分け以下の条件で残留できる。引き分けても、神戸が黒星かつ新潟も引き分け以下に終われば逆転残留だ。磐田はここ8試合勝ちがなく、G大阪が付け入るスキは十分ある。ただ、G大阪は現在、リーグトップの得点数(66)を誇る一方、失点数(63)はリーグワースト2位。前節も終盤で同点に追いつかれて勝ち点2をとりこぼした。G大阪にとってはリードを奪ってからが勝負。日本代表DF今野泰幸を中心に、同代表FW前田遼一擁する磐田攻撃陣を抑え込めるかがカギとなる。

 17位の新潟は、ホームで奇跡が起きるのを待つしかない。残留条件は勝利したうえで、神戸とG大阪がそろって引き分け以下に終わること。天に運命を託すしかないのだ。ただ、何もしないままでは、運は巡ってこない。対戦相手は最下位・札幌。優勝争い中の仙台をアウェーで破った前節のように粘り強く守り、効果的な速攻をしかけられれば、勝点3の確保はさほど難しくないだろう。人事を尽くして天命を待つ。新潟がやるべきことはそれだけだ。

 果たして笑ってシーズンを終えられるのは、どのクラブか。様々なドラマが待ち受ける最終節は、全9試合が15時30分にキックオフされる。

【Jリーグ ディヴィジョン1 第34節(最終節)】

12月1日(土)

鹿島アントラーズ × 柏レイソル (15:30〜、カシマ)

浦和レッズ × 名古屋グランパス (15:30〜、埼玉)

FC東京 × ベガルタ仙台 (15:30〜、味スタ)

横浜F・マリノス × サガン鳥栖 (15:30〜、日産ス)

アルビレックス新潟 × コンサドーレ札幌 (15:30〜、東北電ス)

清水エスパルス × 大宮アルディージャ (15:30〜、アウスタ)

ジュビロ磐田 × ガンバ大阪 (15:30〜、ヤマハ)

セレッソ大阪 × 川崎フロンターレ (15:30〜、長居)

ヴィッセル神戸 × サンフレッチェ広島 (15:30〜、ホームズ)