今夏のロンドンパラリンピックで、団体競技としては史上初の金メダルに輝いた女子ゴールボール。パラリンピック競技として正式採用されたアテネ大会から3大会連続で出場し、キャプテンとしてチームを牽引したのが小宮正江選手だ。今回はその小宮選手に二宮清純がロングインタビュー。知られざるゴールボールの魅力について訊いた。
二宮: 悲願の金メダル獲得、おめでとうございます。
小宮: ありがとうございます。

二宮: ゴールボールは見た目以上にハードな競技です。
小宮: 北京ではフィジカル面での弱さを思い知らされましたので、この4年間は体幹を中心にトレーニングを積んできました。

二宮: それがロンドンで実を結んだと。
小宮: そうですね。体幹はもちろん、さまざまな筋力トレーニングをしてきて、それなりの成果はあったかなと思っています。ただ、今にして思えば、まだまだだったなと思っています。

二宮: それだけ自分への可能性を感じているということですね。
小宮: はい。自分自身を磨いて、能力を伸ばしていくというのは、やっぱり楽しい作業だと感じています。

二宮: 小宮さんは女子の中でもスピードがありますが、ボールの速さはどれくらいですか?
小宮: 時速が何キロかは明確にわからないのですが、投球してボールが手から離れてから相手のディフェンスに当たるまでは、0.8〜0.9秒です。

二宮: 1秒もない中で、ディフェンスは瞬時にボールの方向やスピードを判断しなければならないんですね。
小宮: はい。男子の場合は0.4〜0.5秒。男子と練習をすることもあるのですが、まさに本当にあっという間に判断しなければいけないんです。

二宮: しかも、直球ばかりでなく、変化球もあるわけですよね。
小宮: はい、ボールの方向性やバウンドの高さなどにも対応が必要となってきます。

二宮: 昔、野茂英雄が米国に渡った時、ドジャースで女房役だったマイク・ピアッツァが「野茂のフォークはキュルキュルと音を立てて落ちてくる」と言っていたんです。「へぇ、そんな音が聞こえるんだ」とビックリした記憶がありますが、ゴールボールでも曲がる音が聞こえてくることがあるのでしょうか?
小宮: あります、あります。ボールの中に入っている鈴の音で方向などを判断するのですが、それとはまた別の、おそらく回転がかかっているボールと床が擦れる音だと思うのですが、「ツツツツッ」という音が聞こえます。男子の場合は速すぎて「ツツッ、バン!」みたいな感じですね。

二宮: 床によっても音の聞こえ方は異なるんでしょうね。
小宮: はい、全く違いますね。実際、ロンドンパラリンピックの床は、普段やる日本の体育館の床とは違いました。

二宮: どういうふうに違いますか?
小宮: 床の性質によって、足音があまり聞こえなかったりしますね。そういう場合は、日本のように移動攻撃が得意なチームには有利になります。

二宮: 単に投げたり守ったりしているのではなく、床の性質によって音を聞き分けたりしている。知れば知るほど、ゴールボールは奥が深い競技ですね。
小宮: そうなんです。ゴールボールを始めて、10年以上になりますが、未だにやればやるほど奥深さを感じます。だからこそ、やめられないんです。

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