全日本柔道連盟は30日、都内で臨時理事会と臨時評議員会を開き、上村春樹会長ら執行部が8月末までに辞任することを表明した。不祥事が相次いでいた全柔連では、上村会長が組織改革のメドが立った時点で身を引く考えを示していたが、これを前倒しする。臨時評議員会では千葉県柔道連盟会長の了徳寺健二評議員から、全理事の即時解任を求める動議が出されたものの、評議委員による投票の結果、上村会長をはじめ、すべての理事に対して解任が否決された。
 さすがの五輪無差別級金メダリストも、お上からの押さえ込みには白旗を揚げざるを得なかった。
 上村会長は6月の辞任表明の際、そのタイミングである「改革のメド」が立つのは4、5カ月先との認識を示し、引き続き職務を続ける意向だった。しかし、女子代表選手に対する指導者のパワーハラスメントや、男性理事のセクシャルハラスメント、日本スポーツ振興センターからの助成金不正受給など問題が続出した組織に対し、早期の体制一新を求める声は内外から日に日に高まっていた。

 23日には公益法人を認定する内閣府の公益認定等委員会が、全柔連へ8月末までに責任の所在を明らかにし、組織改革を求める勧告書を出した。公益法人制度改革により、公益認定法が施行されてからは、初の勧告という異例事態。全柔連の対応が不十分とみなされれば、公益法人格の取り消しにもつながりかねない。上村会長ら執行部にとっては“総辞職”するしか選択肢はなかった。

 とはいえ、全柔連の自浄作用のなさも改めて浮き彫りになった。評議員会では執行部が8月末までの退陣を明らかにしたのに対し、了徳寺評議委員は一刻も早い新体制での出直しを訴え、上村会長をはじめとする理事全員の即時解任を要求。ひとりひとりの理事に対し、無記名投票により、解任か否かが採決された。

 59人の評議員のうち、57人が投票した結果は上村会長の理事解任への反対票が賛成票を大幅に上回った。他の理事についても同様の結果となり、即時の体制刷新には至らなかった。

 危機感の薄い全柔連に、稲田朋美行政改革担当相は公益認定の取り消しにも言及している。1カ月後には新体制が発足するといっても、もはや自己変革能力のない組織には1日の猶予を与えるのもムダだろう。新たな一歩を踏み出すのに、ここまで時間がかかる現状では、お家芸の再興はますます遠のいていく。