サッカーでは近隣する地域や、因縁のある土地のクラブ同士の対戦はダービーマッチと呼ばれ、選手もサポーターもヒートアップする。世界的にはスペインのエル・クラシコ(レアル・マドリードvs.FCバルセロナ)やイタリアのミラノダービー(インテル・ミラノvs.ACミラン)などが有名だ。J2の愛媛FCにとっては「四国ダービー」が、それにあたる。同じ四国内の徳島ヴォルティスとはJリーグ昇格前からライバルとして激闘を繰り広げてきた。

(写真:伊予銀行のキャラクター「とりカエル」も熱烈応援)
 J2での過去の対戦成績は愛媛の7勝10敗4分。今季は4月に徳島で激突して2−3で敗れ、ダービー3連敗中だ。2010年9月以降、3年近く勝利から見放されており、愛媛サポーターたちは「欲しいのは勝利だけ」と戦前から気合が入っていた。

 ジュニアサッカー大会を前座で開催

 そんな熱気高まるホームでのダービーを、今回、伊予銀行はマッチスポンサーとして支援することになった。伊予銀行は愛媛FCのスポンサーとして、J昇格初年度から毎年1回、「伊予銀行サンクスデー」と銘打ってホームゲームでのイベントを実施している。今年で8回目となるサンクスデーだが、四国ダービーに合わせて行われるのは初めてだ。

 過去のサンクスデーでは、オレンジの巨大ユニホームを作成して試合前やハーフタイムにピッチ上やスタンドで広げ、応援に華を添えた。またクラブが企画した「ゆるキャラデー」と連携し、伊予銀行オリジナルキャラクターの「とりカエル」などがスタジアムに訪れたサポーターたちを出迎えた。さらには地域の絆を強める観点から各市町対抗の小学生によるリレー大会を開催したり、ファンの新規開拓を目指したスタジアムフォトコンテスト企画してきた。

 今回はダービーということもあり、いやがうえにもスタジアムは熱くなる。伊予銀行でも例年以上にサンクスデーを盛り上げるべく、事前の宣伝に一層、力を入れた。昨年同様、地元のCATVでは試合の1週間前からサンクスデーのCMを放映。各営業店では告知チラシを配布した。さらに試合前日の愛媛新聞では広告も掲載し、多くの人に来場を呼びかけた。もちろん、伊予銀行内でも動員をかけ、1000人弱の行員とその家族が応援に訪れた。

 日程は海の日の祝日が入った3連休中の7月14日。夏休みも目前に迫る時期に、伊予銀行では今回、子ども向けのイベントを企画した。それが試合前のジュニアサッカー大会「伊予銀行カップ」である。この伊予銀行カップでは普段、ジュニアの試合で出場機会の少ない小学4年生以下(U-10)に参加対象を限定。応募した県内8チームによるリーグ戦形式で大会が進められた。
(写真:巧みなドリブル突破をみせるなど、ジュニア選手の技術の高さには目を見張るものがあった)

 会場は、まさにこの後、プロの選手たちが火花を散らすニンジニアスタジアムのピッチだ。試合をするには最高の環境である。子どもたちは保護者の声援を受けながら、緑の芝の上で懸命にボールを追いかけ、ゴールが決まると歓声をあげていた。参加者には伊予銀行と愛媛FCの特製コラボタオルとドリンクがプレゼントされ、そのままスタンドで四国ダービーを観戦。優勝、準優勝チームにはハーフタイム中に表彰式が行われ、伊予銀行からトロフィーが授与された。
 
 マッチシティとも連携

 子どもたちがピッチ上で試合を繰り広げる中、スタンドには続々と両チームのサポーターが押し寄せた。スタジアムの各ゲートでは来場者に例年同様、伊予銀行と愛媛FCの特製コラボタオルを先着3000名に配布。伊予銀行のカラーでもある緑のTシャツを揃って着用した行員たちがボランティアスタッフとして、ひとりひとりにタオルを手渡した。試合開始前にはピッチ上に恒例となったオレンジ色のジャンボユニホームもお目見えし、戦いに挑む選手を出迎えた。
(写真:選手入場時には観客が一斉に配られたタオルを掲げ、スタンドはオレンジに染まった)

 愛媛FCではJ昇格以来、地域との結びつきを強めるため、各ホームゲームでマッチシティ&マッチタウンを設定し、県下の各自治体と連携をとってきた。地域住民を試合へ招待するだけでなく、スタジアム周辺では物産展を開催し、PRに一役買っている。今回のダービーでマッチシティとなったのは宇和島市。伊予銀行ではマッチシティのイベントとも連動し、一体感をもたせた。

 その目玉となったのが、会場に登場した「牛鬼」だ。牛鬼とは頭が鬼、体は牛の姿をした怪物で、宇和島地方では祭りの際、赤い布で覆われた5〜10メートルほどの山車として町中を練り歩く。宇和島市は例年、マッチシティの際に牛鬼を出して観客を沸かせており、今年もハーフタイムに、地元で親しまれているガイヤカーニバルの踊り子とともに巨大牛鬼がスタジアム内へ現われる予定になっていた。

 伊予銀行では今回、このハーフタイムショーに協力。宇和島市の夏祭りである「うわじま牛鬼まつり(和霊大祭)」の牛鬼パレードに伊予銀行で参加している緑色の牛鬼をスタジアムに持ちこんだ。赤と緑の牛鬼が2体並んで、トラックを進む姿は壮観で写真撮影をする観客も多くみられた。
(写真:伊予銀行のロゴも入った緑色の牛鬼)

 また、同じくハーフタイムに行われたお楽しみ抽選会でも、伊予銀行が宇和島市の特産品(温州みかんや三間米)を提供。会場周辺では宇和島市のある愛媛県南予地方をアピールするちらし配りも手伝うなど、ともに四国ダービーを盛り上げた。

 夏祭りにも積極参加

 こうして企画はどれも盛況だったものの、試合は残念ながら0−2の敗戦に終わった。実はサンクスデーは2010年から愛媛が3連勝中と、伊予銀行は縁起のいいマッチスポンサーだったが、その力を持ってしてもダービーの連敗は止められなかった。キックオフが19時30分と遅く、連休の中日だったことも影響してか、観客数は6,516人。目標としていた7,000人には一歩及ばなかった。

 スポーツの大会をはじめ、イベントの多い夏休み期間、伊予銀行は今回のサンクスデーのみならず、県内のさまざまな催しものに協賛、参加している。8月3日に開幕する第9回全日本女子硬式野球選手権大会では、今年も「伊予銀行杯」としてスポンサードする。大会では地元の女子硬式野球チーム「マドンナ松山」が上位入賞を狙っており、こちらも伊予銀行が活動を支えている。

 各地域の夏祭りでは7月22日から3日間にわたって開かれた「うわじま牛鬼まつり(和霊大祭)」に先述の緑の牛鬼が市内をパレードした。8月9日にスタートする「松山まつり」では風物詩の「野球拳おどり」に伊予銀行連を結成して参加予定で、今年は衣装を一新し、優勝を目指す。伊予銀行は「潤いと活力のある地域の明日を創る」との企業理念の1番目に掲げている。今後も愛媛FCなどの地元のスポーツや、地域を活性化するイベントと手を携え、愛媛を元気にしていく。


◎バックナンバーはこちらから