2020年五輪・パラリンピックの開催地決定に続いて、9月8日には五輪で採用される残り1競技が決定する。レスリング、野球・ソフトボールに並んで最終候補に挙げられているのがスカッシュだ。今回は日本スカッシュ界を牽引してきた松井千夏選手に二宮清純がインタビュー。ビリヤードのような頭脳戦の要素が多分に含まれているスカッシュの魅力について訊いた。
二宮: スカッシュは学生の頃、遊び程度ですが、友だちに誘われて何度かやったことがあります。かなり頭を使うスポーツですよね。目まぐるしく変わる展開に対して、瞬時に戦略をたてなければなりません。
松井: そうですね。スカッシュは決して力だけで勝負が決まるわけではありません。だからこそ、若手が有利かというと、意外とそうでもないんです。

二宮: 経験がモノを言うと?
松井: はい。必ずしも、こういうボールが来たら、こう打たなければいけないというふうには決まっていません。その時の自分と相手との位置関係や、ボールのスピード、壁との距離などを瞬時に判断することが求められます。それに加えて、相手の状況を見ながら、タイミングよく打って動かなければならないんです。

二宮: 狭い空間で交互に打つのは結構、大変ですよね。ぶつかることもあるのでは?
松井: 基本的にはぶつからないように相手のいないところにボールを打つのですが、どうしてもぶつかってしまうこともありますね。そういう場合は、コートの後ろ側にいる審判が、やり直しなのか、妨害とみなしてポイントを与えるのか、それとも妨害とみなさずにそのままポイントが失われるのかを判断します。

二宮: 相手が打った瞬間に、こちらも動かないと追いつきませんよね。ボールの方向はどうやって判断するのでしょう?
松井: 相手の身体の向きを見たりして判断します。それと、ボールが最初に当たった場所と角度を見て、その後、ボールがどう飛んでくるのかを予測しながら動くんです。

二宮: 当然、わざと身体の向きとは違う方向に打つこともある?
松井: はい、打つタイミングを変えたりしますね。お互いにどう相手を騙すのか、逆に相手には自分の戦略を見破られないようにするかが勝敗のカギを握ります。

<現在発売中の『第三文明』2013年10月号でも、松井千夏選手のインタビューが掲載されています。こちらもぜひご覧ください>