6日、日本学生陸上競技対校選手権大会初日が行なわれた。男子1万メートル競歩は、8月の世界選手権の20キロ競歩で6位入賞の西塔拓巳(東洋大)が40分20秒18で制した。同400メートルは、1600メートルリレーに出場した山崎謙吾(日大)が優勝。西塔と山崎はいずれも同大会初優勝だった。100メートルでは、世界選手権代表の飯塚翔太(中央大)が決勝進出する一方で、同代表の山縣亮太(慶應義塾大)は準決勝を棄権した。やり投げでは、世界選手権代表から漏れたディーン元気(早稲田大)が78メートル95で2年ぶりの優勝を果たした。
 終盤までもつれたデッドヒート。1万メートル競歩で同い年の高橋英輝(岩手大)との一騎打ちを制したのは、西塔だった。世界陸上からあまり間もないレース。コンディンションもモチベーションも万全ではなかったはずだ。自己ベストには8秒以上及ばなかったが、40分20秒18の記録には納得の様子。「高橋君がいたからいいタイムでゴールすることができました。救われたというか、レースをしていて楽しかった」と笑顔を見せた。

 とはいえ、「何度も負けるかもと思った」というヒヤヒヤの勝利だった。残り2000メートルで仕掛けたが、突き放すことはできず、足をつかってしまった。ラスト1周の鐘が鳴り、「(残り)400で仕掛けられたら、終わりだな」と感じていたという。ただ高橋も西塔をかわし切れない。9750メートル過ぎで西塔はペースを上げると高橋が離れたので“ここは行くしかない!”と意地を見せた。最後は2秒70差をつけてゴールした。

 世界陸上では競歩20キロで日本人トップの6位入賞。過去の世界陸上においても、同種目日本人最高の成績だ。入賞者としての重圧がのしかかった。「(プレッシャーは)メチャクチャありました。ずっと負けらんないと思ってました」。それでも西塔はスタートラインに立った時には、「逆にそれを楽しもう」と切り換えられたことが勝因のひとつだろう。

 このレースではベント・ニー(前に振り出した足が地面に接地する際のヒザが曲がってしまう反則)をとられた。本人は「(どこでとられたか)全然わからなかった」という。歩行中にもヒザに違和感があり、「警告1枚は覚悟していた」と語った。ただ世界の舞台では、審判員の目も一層厳しくなる。西塔もそれを自覚しており、「もう一度フォームを作り直したい」と修正を誓った。

 観戦に訪れていた日本陸上競技連盟の今村文男競歩部長は「世界陸上まで時間がない中、よくまとめていた」と、西塔のレースぶりを褒め、2位に入った高橋にも高評価を与えた。「(大学3年の)彼らの世代がインカレで上位だった。今後に期待できる」。西塔と高橋は2月の日本選手権でも上位に入っており、互いにいい刺激になっている。若手の台頭により、上り調子にある日本競歩界。このまま歩みを止めず、世界に近づきたい。

(文・写真/杉浦泰介)