17日、カーリングのソチ五輪最終予選日本代表選考会最終日が行われ、女子決定戦第4戦で北海道銀行フォルティウス(予選1位)が中部電力カーリング部(予選2位)を8−5で下した。北海道銀行は予選と合わせた中部電力との対戦成績を4勝2敗とし、前日に代表権を獲得した男子のSC軽井沢クラブとともに12月にドイツで行われる世界最終予選進出を決めた。
(写真:結成3年目で初の代表となった北海道銀行)
「詰まっていたものが溢れ出した」。勝利が決まり、チームメイトと抱き合う北海道銀行のスキップ・小笠原歩の目には涙があふれていた。サードの船山弓枝のショットで相手のストーンを2個ハウスの中から弾き出した。最終エンド8−5と3点リードの場面で生まれた渾身のダブルテイクアウト。残るストーンはスキップの2投分しか残されていないため、この瞬間、北海道銀行の代表入りが決まった。

 15日からはじまった代表決定戦の相手は、全日本選手権3連覇中の中部電力。2月の全日本選手権では予選グループで中部電力に土をつけたものの、決勝で敗れて、優勝を逃していた。今大会、リーグ戦は1勝1敗の五分。決定戦に入り第1、3戦を取って、3勝2敗で王手をかけて迎えた最終日。北海道銀行は第1エンドに先制を許したものの、第2エンドで逆転した。同点に追いつかれた直後の第7、8エンドでは4点を奪いリードすると中部電力の追撃をかわし逃げ切った。

 小笠原と船山はソルトレイクシティ、トリノ五輪に出場しており、2度のトライアルを経験している。小笠原は「オリンピック以上の緊張するものだと知っていた。勝てばオリンピック選手、負ければただのカーリング選手。それぞれの人生を背負った試合の中で精神的な戦いになる」と語る。重圧のかかる大一番を制したのは、ベテランと若手が融合した北海道銀行だった。
(写真:司令塔としてチームを鼓舞し続けた小笠原)

 リードを務めた苫米地美智子が正確なショットで起点をつくり、セカンドの小野寺佳歩はパワフルなショットで相手のストーンを弾き飛ばした。ベテランの船山、小笠原が老練で巧みなショットで決める。“つなげるカーリング”を4人で体現した。「誰かが必ず良くて助け合いながら勝利を得た大会」と船山が振り返る通り、予選では小笠原がチームを救い、代表決定戦に入ってからは調子を崩した小笠原をチームが救った。

 近年は女子カーリング界は中部電力がリードしてきた。昨年のパシフィックアジア選手権(PCCA)で2位に入り、今年の世界選手権の出場権を獲得した。そこで上位に入り、ソチ五輪への出場枠を獲得することはできなかったが、世界選手権出場が最終予選に出場するための最低条件だった。日本は正式種目に採用され長野五輪から4大会連続で出場している。小笠原は「中部電力が日本の道筋を作ってくれたので、絶対に閉ざすわけにはいかない」と覚悟を述べた。

 一方、前日に代表が決まった男子は、軽井沢クラブが圧倒的な強さを発揮した。予選を全勝でトップ通過すると、代表決定戦では第2戦を落としたものの、第4戦では12−2と、危なげなく代表権を獲得した。男子の出場は長野五輪以来、1度しかない。スキップの両角友佑は「男子のチームが目指す場所が見えにくいのが現状。自分たちの力で見せてあげられたら」と抱負を語った。
(写真:4人全員が安定した力を発揮した軽井沢クラブ)

 北海道銀行、軽井沢クラブは11月に中国の上海で行われるPCCAに出場する。中国、韓国、オーストラリアら5カ国と対戦し、上位2カ国は翌年の世界選手権の出場枠を獲得できる。翌月に控えるドイツのフッセンでの世界最終予選に向けて弾みをつけたいところだ。女子は5大会連続、男子は4大会ぶりの五輪出場をかけて、最終予選に臨む。男子は8カ国中、女子は7カ国中、上位2位以内に入ればソチの切符をを獲得する。全国のカーラー(カーリング選手)たちやファンのためにも、ドイツで凱歌をあげて帰ってきてほしい。

(文・写真/杉浦泰介)