1997年といえば、4月に消費税が3%から5%に引き上げられている。9月にはロックバンドの「X JAPAN」が解散を表明し、11月にはサッカー日本代表がマレーシア・ジョホールバルの地で悲願のW杯出場権を勝ち取った。
 広島カープは、この年、3位になったのを最後に、以来ずっとBクラスに甘んじている。昨季まで、なんと15年連続Bクラス。ファンからすれば“失われた15年”だ。

 今では「強かった頃のカープなんて知りません」という若いファンも増えてきた。無理もない。リーグ優勝となると91年を最後に、今季も含めて22年も遠ざかっているのだから。

 クライマックス・シリーズ(CS)は07年に採用されたが、広島と横浜DeNAの2つだけが取り残されている。DeNAは昨季まで5年連続最下位。この2球団の弱さは際立っている。
 まだ借金を4つ(16日現在)も抱えている以上、“赤ヘル復活”と呼ぶには早いが、広島は4位・中日に4・5ゲーム差をつけ、CSへの階段を着実に昇っている。16年ぶりのAクラスが、はっきりと見えてきた。

 ご同慶の至りと言いたいところだが、腑に落ちない点もある。勝率5割を切ったチームのCS出場は、球界にモラルハザードを出来させかねない。徳政令よろしく借金を棒引きされたチームが日本一にでもなれば、長丁場のレギュラーシーズンは、いったい何だったのかということになる。

 といって、CSを廃止しろと主張しているわけではない。元に戻せば、球団格差の大きいセ・リーグの後半戦は消化試合の山となり、ただでさえ苦しい弱小球団の台所事情は、より苦しくなるだろう。

 ポストシーズンゲームの制度設計の大先輩であるメジャーリーグの場合、プレーオフには各地区の優勝チームと、2位以下の勝率上位2チームしか出られない。理論上はともかく、現実的に勝率5割を切るチームがコマを進めることは、まずありえない。

 話を日本に戻す。私案だが来季以降、勝率5割に達しなかったチームのCS出場権消滅はどうか。CSの価値を棄損することなく、持続可能なシステムにするための落とし所としては、それしかないような気がする。苦肉の策であることは言うまでもないが…。

<この原稿は13年9月18日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
◎バックナンバーはこちらから