テニス楽天ジャパンオープン3日目は、9月のデビスカップワールドグループ入れ替え戦の最終戦で逆転勝ちし、ワールドリーグ復帰の立役者となった添田豪が1回戦に臨んだ。相手は前回の準優勝、現在世界ランク11位のミロシュ・ラオニッチ(カナダ)。ラリー戦にもちこみ、勝機を見出そうとした添田だったが、200キロ以上の強烈なサーブを武器とするラオニッチを崩すことはできず、ストレート負け。これで錦織圭以外の日本人選手は、初戦で姿を消すこととなった。
 立ちはだかったビッグサーバーの壁

 試合後、力なくベンチに戻る姿に、第2セットのタイブレークでの不甲斐ない自分への悔しさがにじみ出ていた。
「もう少しラリーをして自分のテニスをしたかったですね。そのフラストレーションが少したまっていた部分がありました」
 第2セットは、互いのサーブゲームをキープし続ける接戦でタイブレークに持ち込んだものの、そのタイブレークで添田は1ポイントも取れなかった。

 9年連続9度目と日本人選手としては同大会最多出場の添田。それでも試合前は緊張した面持ちだった。それもそのはずだ。相手は昨年、決勝で錦織に敗れたものの、200キロ以上のサーブを武器に、現在は世界ランク11位にまで浮上してきた強豪。前週のタイ・オープンでツアー通算5勝目を挙げており、波に乗っている。

 そのラオニッチに対し、添田はサーブ、ショットともに、考え得る全てのことをやり尽くした。
「大型の選手はリーチがある分、センター、ワイドへのサーブは取りやすい。逆にボディは取りにくいと思って狙った。実際にやりにくそうにしていた部分はあったと思う。ストロークに関しては途中、フォアで攻撃したいという意図が見えたので、フォアに回り込ませないようにしてからは、少し余裕が持てた」
 さらに196センチと長身のラオニッチに対し、添田はネットぎりぎりの、低いバウンドボールで相手のミスを誘った。

 だが、1本目から217キロのサーブで会場を沸かせたラオニッチ。本人も「今日はいいプレーがたくさんできたが、特にサーブはよく入った」と語るように、常時200キロ以上のサーブを叩きつけ、自らのサービスゲームでは添田につけ入る隙を全く与えなかった。
「正直、ブレークするのは厳しいと思った。自分が(サービスゲームを)キープして、少しでも相手にプレッシャーがかかればと思っていた」
 そう本人が語るように、添田が勝機を見出すには、サービスゲームのキープは絶対条件だった。

 だが、第1セットの3ゲーム目、3度のゲームポイントを添田はモノにすることができず、ブレークされてしまう。これで流れはラオニッチへ。4ゲーム目、ラオニッチは4本全て200キロ以上のサーブで攻め、ラブゲーム。添田も負けじとラリーに持ち込み、相手のミスを誘って5ゲーム目をラブゲームで奪ったものの、流れを引き寄せるまでには至らなかった。結局3ゲーム目をブレークされたことが響き、このセットを4−6で落とした。

 第2セットは第1セットを上回る接戦となった。変わらず強烈なサーブでサービスゲームをキープし続けるラオニッチ。一方、添田は相手を左右に振って、スペースをつくり、確実にポイントを決める粘りのテニスで対抗した。互いに一歩も譲らないキープ合戦が続き、勝負はタイブレークへともつこれこんだ。ところが、1本目、添田は何でもないフォアショットをネットにかけてしまう。さらに大事な場面でダブルフォルトでポイントを失うなど、自らのミスでラオニッチを乗せてしまった。ラオニッチは219キロのサービスエースを決めてマッチポイントを迎えると、最後はストレートのフォアショットで締め、添田に1ポイントも与えずに一気に勝負を決めた。

 この試合での添田のテニスは、決して悪くはなかったはずだ。だが、世界トップの壁はやはり厚い。そこを打ち破るには何が必要なのか――。添田のさらなる進化を期待したい。

<1回戦>
ミロシュ・ラオニッチ2(6−4、7−6)0添田豪

(文・写真/斎藤寿子)