7日、東京都開催の国民体育大会のバドミントン競技最終日が行われ、成年女子は全日本総合選手権女子ダブルス2連覇中の高橋礼華、松友美佐紀(日本ユニシス)と土井杏奈(ヨネックス)を擁する東京が熊本を2−0で下し、19年ぶりの優勝を果たした。男子は園田啓悟、嘉村健士、佐々木翔とトナミ運輸勢を揃えた富山が埼玉に2−0で勝利し、5年ぶりの制覇。敗れた埼玉は昨年に続く連覇はならなかった。
(写真:応援団の祝福に応える土井<左>と高橋)
「サー!」。町田市総合体育館に何度も響き渡る掛け声。土井は相手のショットがネットを越えず21点目が決まると、ガッツポーズを作って喜びを噛み締めた。ファイナルゲームまでもつれた第1シングルス。熊本県代表の峰歩美(ルネサス)の粘りに苦しみながらも、勝利を勝ち取った。地元・東京は全試合で2−0、一度も第2シングルスまでもつれることなく、19年ぶりの優勝をもたらした。「地元開催で勝ってほしいという期待もあった。全部2−0で勝利し、ベストですね」と、監督を務めた清水文武は選手たちに満点評価を与えた。
(写真:成年女子を制した東京<左から清水監督、土井、松友、高橋>)

 立役者は日本最強ダブルスの高橋、松友だ。宮城・聖心ウルスラ学院高校時代からダブルスを組む2人。1学年下の松友が前衛で相手を崩し、後衛で高橋が強烈なスマッシュを叩き込む得意の型が今大会も冴え渡った。

 決勝では日本リーグのライバル強豪・ルネサスの福島由紀&廣田彩花組を相手に「(決勝が)一番良かった。落ち着いて2人らしいプレーができた」(高橋)と、付け入るスキを与えず21−13、21−12と、33分で片を付けた。

「優勝するために声を掛けていただいた」と、松友が語る今大会。高橋は「ホッとしています。日本では負けれないっていうプレッシャーがありました」と明かす。国際バドミントン連盟(BWF)世界ランクは4位。日本を代表する選手として、他の日本人には負けられない。勝って当たり前の空気が周囲にはあった。その期待に1ゲームも落とさぬオールストレート勝ちで応えた。

 高橋、松友の2人は、5年前の大分国体では少年女子の部で優勝しているが、成年女子としては初出場。松友は初の国体について「色んな人が応援してくださるので、嬉しいし感謝の気持ちでいっぱいです」と語った。1、2回戦の相手は奇しくも、生まれ育った徳島と高校時代を過ごした宮城だった。「どちらもお世話になったところなので、複雑でした。でも対戦相手の私にも声を掛けてくださって、本当にありがたかった。(国体に)出て良かったと思いました」

 7年後には、東京開催の五輪が開催される。「もちろん出れた嬉しいですが、今はリオのことしか考えられない」と松友。日本国内では全日本総合、日本リーグなどあらゆる大会のタイトルを総ナメしてきたを最強ペア。海外でも結果を残しつつあるが、五輪、世界選手権に次ぐグレードのスーパーシリーズでの優勝はまだない。来週からは再び海外遠征に入り、スーパーシリーズのデンマークオープンとフランスオープンに臨む。昨年のデンマークオープンでは、ロンドン五輪で金メダルを獲得している当時世界ランク1位のペアを破っての準優勝をした大会だ。

 3年後のリオデジャネイロ五輪の選考レースはすでに始まっている。ロンドン五輪の選考では藤井瑞希、垣岩令佳の“フジカキ”ペア、末綱聡子、前田美順の“スエマエ”ペアが本大会に出場し、悔しい思いをした。「次は自分たちが」と、ひと回りもふた回りも大きくなった“タカマツ”ペアが、世界を席巻する。
(写真:松友の相手を翻弄するラケットワークはこの日も健在)

(文・写真/杉浦泰介)