17日、「FIVB(国際バレーボール連盟)ワールドグランドチャンピオンズカップ2013」の最終戦が東京体育館で行なわれ、日本は世界ランキング1位、ロンドン五輪で金メダルを獲得したブラジルと対戦。第1セットは世界一を相手に優勢に試合を進めたものの、ブラジルの猛追にあい、大接戦の末に落とすと、第2、3セットは勢いを取り戻したブラジルに終始、試合の主導権を握られ、ストレート負け。それでも12年ぶりの銅メダル獲得。今大会は“新生・火の鳥NIPPON”の大きな一歩となった。

日本 0−3 ブラジル
(27−29、14−25、18−25)
“新生・火の鳥NIPPON”としてスタートした今シーズンの集大成となったこの試合、世界一との差を突きつけられた一戦となった。
「選手、スタッフ一丸となって、“絶対に勝つ”という気持ちをもって臨みたい」
 前日の記者会見で、キャプテンのWS木村沙織がそう意気込むと、同席したWS新鍋理沙、WS石井優希も「始めから攻めて、いいスタートを切りたい」と口をそろえた。

 その言葉通り、第1セット、日本はスタートから全力で世界一のチームにぶつかっていった。新鍋のスパイクをブロックされて最初の1点目は譲ったものの、すぐに新鍋が汚名返上とばかりに2連続ポイントを奪うと、さらに石井のスパイクも決まる。続いてMB岩坂名奈が相手センターの速攻をブロック、極めつけはS中道瞳が2連続でサービスエースを決め、なんとブラジルから6連続ポイントを奪い、一気に流れを引き寄せた。

 だが、北京、ロンドンと2大会連続で五輪金メダル獲得に貢献したWSシェイラ・カストロやMBファビアナ・クラウジノが、予選敗退の危機から救ったロンドン五輪同様に、チームに勢いを取り戻す活躍を見せる。2人に呼応するかのように、他のメンバーも本来の力を発揮し、じわりじわりとその差を詰めていった。そして最大5点あった差は徐々に縮まり、とうとう18−18と同点に追いついた。しかし、大事な場面でブラジルにミスが出て、24−22と先にセットポイントを迎えたのは日本だった。

 しかし、ブラジルが驚異的な粘りを見せる。新鍋のスパイクがアウトとなり、1点差となると、シェイラがこの大事な場面でサービスエースを決める。そして、負けじと今度はファビアナがラリーの末に速攻を決め、逆にセットポイントを迎えた。だが、日本は石井が2連続でスパイクを決めて、26−25とする。すると、ブラジルがファビアナの速攻、さらには木村のスパイクをブロックで止め、26−27と逆転。日本は木村のスパイクで27−27とするも、ここで痛恨のミスを連発。石井のライン際を狙ったサーブがアウトとなって、ブラジルが3度目のセットポイントを迎えると、最後は石井のバックアタックがネットにかかり、壮絶なセット争いに終止符が打たれた。

「1セット目がすべてだった」
 試合後に選手や指揮官が口をそろえてそう語ったように、第2セット以降は世界一のブラジルに終始、試合の主導権を握られ、歯が立たなかったといっても過言ではなかった。木村、新鍋、石井のサイドからの攻撃に加え、WS迫田さおりのバックスパイクもブラジルのブロックにことごとく止められた。

 第2セットも奪われ、崖っぷちに立たされた日本は第3セット、メンバーをガラリと代える。新鍋、石井、迫田とこれまでほぼ不動だったサイドを、WS江畑幸子、WS近江あかり、WS長岡悠望に、センターを岩坂から19歳の新鋭、MB大竹里歩に代えて臨んだ。しかし、金メダルまであと1セットと迫り、集中力を高めるブラジルには同じだった。エースのシェイラを中心に、次々と得点を重ねるブラジルに対し、日本はスパイクが決まらない。最後は大竹のブロードがブロックにつかまり、ブラジルのマッチポイントとなると、江畑のスパイクがラインを割り、ゲームセット。ブラジルの金メダルが決まった。

 それでも12年ぶりのメダルを獲得し、「最低限の目標だった」表彰台に上がった“火の鳥NIPPON”。眞鍋政義監督は次のように今大会を振り返った。
「おそらく何十年も全日本の女子が世界大会において、最終日に3−0で勝てば金メダルという試合になったことはないと思う。それを経験したということは大きかった」

 また、今大会披露した、従来は2人置くミドルブロッカーを1人にして、ウィングスパイカーを3人から4人に増やした新システム「MB1」については、次のように語った。
「練習したのは約1カ月半。ここまでやれたのは選手たちに感謝している。ただ、今後も続けるのかどうかは、今大会でブラジルや米国にストレート負けをしたことを踏まえて考えていきたい。ルール的にも従来の布陣がベストだとは思う。しかし、現状の日本ではどうなのかというところを考えていかなければならない。実際、日本のMBは世界と比べて得点が少ない。一方、今大会の迫田は1試合平均2ケタ取ってる。一方で、ブロックはどうするのかということも考えなければいけない。MBを1人にするのか、2人に戻すのか、それとも3人に増やすのか、0にするのか……今の段階では、まだわからない。今大会をしっかりと検証して決めたい」

 来年には世界選手権が控えている全日本。メンバー、システムともに、これからどんなチームへと変貌を遂げるのか。今後も“火の鳥NIPPON”から目が離せない。

(文/斎藤寿子)