8日(現地時間)、フリースタイル女子モーグル決勝が行なわれ、上村愛子はファイナリスト6人の中で最速タイムを叩き出す攻めの滑りを見せたが、バンクーバー五輪と同じ4位。悲願のメダル獲得には至らなかった。スノーボードの男子スロープスタイル決勝では、今大会最初のメダリストが決定した。金メダル第1号は93.50点をマークしたセージ・コッツェンバーグ(米国)。同日に行われた準決勝を通過ラインぎりぎりの4位で突破した角野友基(日産X-TRAIL)は75.75点で8位入賞を果たした。また、フィギュア団体では女子シングルショートプログラムに浅田真央(中京大)が登場。トリプルアクセルを失敗して3位だったが、日本は4位で決勝進出を決めた。
 1998年、18歳で五輪デビューを果たして以降、今回で5大会目となった上村愛子(北野建設)。長野7位、ソルトレイクシティ6位、トリノ5位、バンクーバー4位と、ひとつずつメダルへの階段をのぼってきた。バンクーバー後は一時、競技から離れたものの、2011年に現役復帰し、ソチでの“5度目の正直”を目指してきた。

 この日、準々決勝、準決勝ともにほぼミスなく滑り切った上村は、日本人ではだだひとり、6人までに許される決勝進出を決めた。その決勝ではトップで登場。これが集大成とばかりに、スタートから果敢に攻めた。第1エアでヘリコプターを決めると、ミドルセクションでは得意のカービングターンで、さらに加速していく。第2エアでバックフリップを決め、自らも「これまでできなかった(決勝で)渾身の滑りができた」という滑りを披露し、勢いよくフィニッシュ。30.46秒の好タイムを叩きだし、後に続くライバルたちにプレッシャーを与えた。この時、会心の滑りを見せた上村の目には、達成感からくる涙があふれていた。

 得点は20.66と思うほど伸びなかったが、2人目、3人目はともに19点台で、上村は3人を残してトップをキープする。しかし4人目、総合ランキング2位のジャスティン・デュフォーラポイント(カナダ)が22.44でトップに立つと、続いてジャスティンの姉、クロエが安定感抜群の滑りを見せて21.66で2位に。あと1人を残して、上村は3位となった。最終滑走者はバンクーバー五輪金メダリストのハナ・カーニー(米国)。2連覇を狙ったカーニーだったが、第1エア後、ミドルセクションで何度かバランスを崩す場面があった。タイムも31.04秒と、上村が上回り、結果はまったくわからなかった。

「(メダルが)獲れたかな」
 そう感じていたという上村。だが、電光掲示板に記されたカーニーの得点は、21.49。またもあと一歩のところでメダルを逃した。バンクーバーに続いての4位に終わった上村だが、試合後のインタビューでは“愛子スマイル”を見せた。

「こんなに何本も滑る五輪は初めてだったが、とにかく全力で滑らなければいけないと思っていた。結果的にメダルは獲れなかったけれど、失敗なく、とにかく攻めたいと思っていた滑りを3本ともかなったので、清々しい気持ち。自分の最大限の力を出して滑るという理想の滑りがたくさんできたことが嬉しい。それと、ソチを目指し始めてから、また本当に、『最高の滑りをすればメダルが獲れるかもしれない』という位置まで来れるかは自信がなかったので、こういう場に戻ってこれたことが嬉しい。オリンピックの舞台で何度も滑ることができた。おそらく今回が最後だと思っているが、自分としてはいい思い出で終われると思っている」

 5度目の挑戦も、メダルには届かなかった。だが、明らかに上村の表情はバンクーバーの時とは違っていた。笑顔でインタビューに答える上村の目には、うっすらと光るものがあった。それはメダルを逃したという悔しさではなく、力を出し切ったという安堵感と達成感のように感じられた。そして、そこにはスポーツの真の意義が垣間見られた。

 予選2回目を8位で通過し、準々決勝進出を果たした村田愛里咲(行学学園教)だったが、本番前の練習でヒザを故障し、棄権を余儀なくされた。星野純子(リステル)は予選2回目、第1エアでのヘリコプターの後、ミドルセクションで大きく崩れたことが大きく減点され、準々決勝進出には至らなかった。

 17歳・角野、8位入賞 〜スノーボード男子スロープスタイル〜


「自分らしいところは見せれた」。角野は悔しさも僅かににじませたものの、晴れやかな表情だった。今大会からの新種目のひとつスノーボード・スロープスタイル。17歳の若武者は世界へと挑んでいった。2日前に行われた予選は「雰囲気に久々に飲まれました」と硬さが見られ、13位に終わった。決勝の前に行なった準決勝では4位と、ボーダーラインぎりぎりで通過だった。

 角野の決勝滑走順は1番目だった。準決勝と同じくお辞儀をしてから、チームスタッフとがっちり握手し、スタート。レールなどの障害物をクリアするジブセクションは冒頭でバランスを崩したものの、3つあるキッカー(ジャンプ台)の2つは3回転半、3回転と回り連続で成功した。ただラストのキッカーで大技「トリプルコーク1440」の着地で尻もちをつき、スコアは53.00点と伸びなかった。

 1回目を終えた時点で6位、逆転に懸けた2回目では2台目のキッカーで手を着いてしまう。それでも角野は最後のキッカーは4回転を披露し、着地もなんとか決まった。1回目より点数を上げて、75.75点がついた。この時点でワンランクアップの5位となり、日本人メダル第1号とはならなかった。12人全員が滑り終えての最終順位は8位入賞。最初の決勝種目のため、日本人初の入賞者となった。

 観客の多さやコースの雰囲気など、普段の大会では味わえない五輪ならではの空気感を経験した。角野は「最終的には楽しめた」と笑顔を見せたように、表情は常に明るかった。「この競技をメジャーにしたい。それを叶えるためのオリンピック」。それには4年後の平昌五輪も含め、今後の活躍がカギを握るだろう。

 浅田、トリプルアクセル失敗も、日本は決勝進出 〜フィギュアスケート団体〜

 今大会、初めて採用されたフィギュアスケート団体戦は、アイスダンス・ショートダンス(SD)、女子シングル・ショートプログラム(SP)が行なわれた。開幕を前の6日(現地時間)に行なわれた男子シングルSPでは最終滑走というプレッシャーがかかる中、19歳の羽生結弦(ANA)が初出場とは思えない完璧な演技でトップに立つ。続くペアSPでは高橋成美、木原龍一組(木下クラブ)が結成1年目ながら落ち着いた演技でまとめ、日本は計13ポイントで4位につけていた。

 この日、まず行なわれたのは“氷上の社交ダンス”と言われているアイスダンスSD。米国人の父親と日本人の母親をもつキャシー・リードとクリス・リードの姉弟が登場した。「踊るリッツの夜」に合わせて、表情豊かに、そして軽快なステップを見せたリード姉弟は、8位で3ポイントを獲得。この時点で日本は16ポイントで6位となり、すべては予選最後の女子SPの結果次第となった。

 その女子SPに登場したのは浅田真央だ。浅田は自らの名前がコールされた後、リンクを1周しながら「(ウォームアップの)6分間でもうまくいっていなかった」トリプルアクセルを確認するかのようなしぐさを繰り返した。しかし、最初のジャンプに入れたトリプルアクセルは着氷に失敗し、転倒してしまう。それでもその後はトリプルフリッツ、さらにはトリプルループ・ダブルループのコンビネーションと2つのジャンプをしっかりと決め、「ノクターン」の曲調に合わせて優雅な演技を披露した。

 だが、本人は納得いかなかったのだろう。滑り終えると、一瞬、口を真一文字に結び、悔しさを露わにした。緊張した面持ちで結果を待つ浅田は、64.07という得点が出ると、申し訳なさそうに頭を下げた。しかし、この時点で浅田は暫定2位。日本は5位以内が確定し、決勝進出を決めた。最終結果は、1位ロシア、2位カナダ、3位米国に続いて日本は4位。5位にはイタリアが入った。

 続いて、決勝の最初の種目であるペア・フリーが行なわれ、高橋・木原組が出場して5カ国中5位。国別ポイント6ポイントが加えられ合計30点とした日本は、4位イタリアと1ポイント差で暫定5位となった。9日(現地時間)には男女シングル、アイスダンスのフリーが行なわれ、最終順位が決定する。

 男子ジャンプ陣、全員が決勝進出

 そのほか、クロスカントリーの女子スキーアスロンはマリット・ビヨルゲン(ノルウェー)が制覇。3冠のバンクーバー五輪に続く同種目で金メダルを獲得した。石田正子(JR北海道)は10位だった。

 スピードスケートの男子5000メートルは世界記録保持者のスヴェン・クラマー(オランダ)が6分10秒76の五輪新で優勝。ウィリアム師円(山形中央高)は最下位(26位)に終わった。

 ジャンプ男子ノーマルヒル予選では、初出場の清水礼留飛(雪印メグミルク)が101.5メートルで3位、同じく初出場の渡瀬雄太(同)も20位に入り、ともに予選を通過した。さらにバンクーバーに続いての出場で、今季、W杯で自己最高の2位と好調の竹内卓(北野建設)は一時試合が中断した影響もなく、7位で決勝進出を決めた。予選免除となった葛西紀明(土屋ホーム)は98.5メートルを飛び、調子の良さをうかがわせた。決勝は9日(現地時間)に行なわれる。

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