現地時間23日、米国・オレゴン州ユージーンで世界ジュニア陸上競技選手権の2日目が行われ、男子100メートルで桐生祥秀(東洋大)が10秒34で3位に入り、銅メダルを獲得した。同種目で日本人のメダル獲得は初。優勝は10秒21をマークしたケンドル・ウィリアムズ(米国)で、世界ジュニア記録を持つトレイボン・ブロメル(米国)は2位だった。
 一番いい色のメダルでなかったかもしれないが、復帰戦としては上々の出来だ。20歳未満の世界大会で桐生は3位に入った。

 1カ月半ぶりのレースとなった大会初日の予選では、余裕の走りを見せた。早々にトップに立つと、最後は流してゴールした。

 この日の夕方にスタートした準決勝では、6月に世界ジュニア新記録となる9秒97を出したブロメルと同組に入った。中盤で先頭に立ったが、後半に加速したブルメルらに追い抜かれ4着でフィニッシュ。上位2名までの着順での決勝進出とはならなかったが、他の組のタイムが伸びなかったこともあり、桐生の10秒38は全体4番目の記録となり準決勝を通過した。

 約2時間半後に迎えた決勝。スタートで一番速く反応したのはブロメルだった。史上最年少で9秒台をマークした1歳上のスプリンターに、日本のホープが食らいつく。桐生は0秒121のブロメルに次ぐ0秒141で飛び出した。徐々にスピードを上げ、一時は先頭にならびかけた。しかし、後半に力を発揮する米国勢には勝てなかった。トップのウィリアムズとは0秒13の差をつけられ、ブロメルにも身体ひとつ分は離されていた。

 それでもこの種目でのメダル獲得は日本人初の快挙である。日本陸上界に新たな歴史を刻むこととなった。だが桐生本人は満足していない。「メダルをとれてホッとした面もあるんですけど、大会前から目標としていたのは金メダル。一番いい色のメダルは獲れなかった。少し悔しさもあります」

 今シーズンは好調な出足を切っていただけに大会に向けての自信も大きかったのだろう。4月の織田幹雄記念国際では、決勝を棄権したものの予選で10秒10の好記録をマーク。5月の関東学生対校選手権では10秒05と、自身2度目の10秒0台を記録していた。6月の日本選手権では、山縣亮太(慶應義塾大)、塚原直貴(富士通)、江里口匡史(大阪ガス)ら国内のライバルを押しのけて、去年惜しくも逃した日本一のタイトルを手にした。

 しかし、その後は右足のケガにより、日本学生個人選手権など2レースを見送った。やはり1カ月半のブランクの影響は少なくはなかった。今大会は3本走って10秒40、10秒38、10秒34と、自己記録から見ても決して好タイムとはいえない数字である。国外の同世代の選手と肌を合わせる貴重な機会。桐生は25日から予選が始まる400メートルリレーにも出場予定だ。主将として臨む今大会、個人では叶わなかった表彰台の一番上を目指す。

(文/杉浦泰介)