24日、日本サッカー協会は、ハビエル・アギーレ氏(メキシコ)と日本代表(サムライブルー)の監督就任について合意したことを発表した。この日に行われた理事会で承認された。理事会後には交渉を続けてきた原博実専務理事兼技術委員長が会見を開き、「(アギーレ氏は)今の日本に一番ふさわしい監督。いろいろな引き出しを持っている」と新監督について語った。アギーレ氏は現役時代はメキシコ代表として1986年メキシコW杯に出場(ベスト8)した。引退後はメキシコのクラブで監督キャリアをスタート。同国代表も率い、2度のW杯ベスト16(02年日韓、10年南アフリカ)に導いた。リーガ・エスパニョーラのオサスナ、アトレティコ・マドリード、レアル・サラゴサの指揮官も歴任。12年11月から14年5月まではRCDエスパニョールで指揮を執っていた。アギーレ氏は8月中旬に来日し、9月5日のウルグアイ戦から代表の指揮を執る予定だ。
(写真:アギーレ氏と合意に至ったことを発表した原専務理事兼技術委員長)
「敗因は様々な要素がある」
 会見はまず、原専務理事によるブラジルW杯の総括から始まった。

 原専務理事は、敗因のひとつにコンディショニング面を挙げた。ベースキャンプ地のイトゥは、環境的には申し分なかった。しかし、W杯の組み合わせが決まる前に選定していたため、結果的に、試合会場までの移動時間が長くなり、コンディションに少なからず影響を及ぼしてしまった。そして、次に挙げたのは5月に行った指宿合宿。5日間の同合宿ではフィジカルトレーニングを中心にしたメニューが組まれていた。
「大きなケガをしていた選手が3人いたし、所属クラブで試合に出ていない選手もいた。一方で、海外のクラブで試合に出ている選手、Jリーグ勢はACLもあってタイトなスケジュールだった。そういう選手はもう少し休ませた方が良かったのではないかなと。(出場機会を得ていた選手には)負荷が強すぎた」

 フィジカルコンディションを急ピッチで上げて行かなければならない選手とそうでない選手の住み分けができていなかったということだろう。結局、初戦のコートジボワール戦には、原専務理事は「良くはなかった思う」というコンディションで臨むことになってしまった。コンディショニングのかじ取りは、技術委員会がブラジルW杯での経験を生かし、新生日本代表にフィードバックすることで改善していくことができる。

 しかし、世界で勝つためには、やはり、ピッチ内のレベルアップが欠かせない。原専務理事は2敗1分けに終わったチームの戦いぶりについては、「自分たちのサッカーをやろうとして、それを実行するのが難しい場合もある。悪いなりに耐え抜くための力が足りなかった」と分析した。その中で、原専務理事をはじめ、日本サッカー協会が次の監督に求めたのが、“引き出しの多さ”だ。

 アギーレ氏は選手としても監督としても様々な舞台を経験している。特に指導者としては、メキシコ代表のみならず、サッカー界の最高峰といわれるリーガ・エスパニョーラで10年以上のキャリアを誇る。02年から06年まで在籍したオサスナでは、それまで下位に低迷していたチームをリーグ戦4位に押し上げ、スペイン国王杯準優勝も果たした。12年11月に監督就任したエスパニョールでは、再開に沈んでいたチームを1部残留に導くなど、その手腕は高い評価を得ている。
「様々な経験をしている中で、勝負強さがある。それを日本に植え付けてほしい。(試合展開が)うまくいかない時にも踏ん張れる、引き出しの多いチームにしてほしい」

 原専務理事は新指揮官への期待をこう口にした。そのアギーレ氏は日本の印象について「もっとやれる力はある。テクニックのある選手も多いし、組織としてやろうというのも分かる。しかし、経験と強さが足りないかもしれない。そこで私の経験を伝えたい」と語っていたという。ビザ取得の関係などで、来日は8月10以降になる見通し。来日後は、9月の親善試合2連戦に臨む。

 アギーレ氏は“敗因となった様々な要素”をできる限りクリアにし、“勝因となる様々な要素”を作り上げることができるか。新船長のもと、日本サッカー界は再び世界に向かって出航準備を整える。