世界柔道選手権が27日、ロシアのチェリャビンスクで3日目を迎え、男子73キロ級ではロンドン五輪銀メダリストの中矢力(ALSOK)が2大会ぶり2度目の優勝を収めた。同級の前回覇者・大野将平(旭化成)は4回戦で一本負けを喫した。また女子57キロ級はロンドン五輪金メダリストの松本薫(フォーリーフジャパン)が2回戦で敗れる波乱。3大会ぶりの出場となった宇高菜絵(コマツ)が初優勝を果たした。
 悔しい敗戦から1年、中矢が世界一の座を奪還した。
 昨年のリオデジャネイロ大会では準々決勝で、相手の小内刈りを受けて頭を強打。脳震盪で病院送りにさせられた。そのリオでは大野が初出場初優勝。今年の選抜体重別選手権では大野に敗れ、代表には選ばれたものの、二番手に甘んじていた。

 これまでは寝技師のイメージが強かったが、今大会は投げ技で勝ち上がった。4回戦は一本背負いで一本勝ち。準々決勝は残り30秒までポイントが奪えなかったものの、足車で有効をとり、優勢勝ちを収めた。準決勝も背負い投げで有効を得て、世界ランキング3位のビクトル・スクボルトフ(UAE)を下した。

 決勝は国際大会ではほぼ無名のホン・ククヒョン(北朝鮮)との対決。勢いで攻めてくる相手に指導2つをとられたが、慌てることはなかった。3分30秒、一本背負いを仕掛け、相手が返そうとしたところに内側から右足をかけて背中から倒す。小内巻き込みでの会心の一本勝ちだった。

 6月には痛みで悩まされていた首の手術を受け、調整遅れが心配されていた中での頂点。1年前の雪辱を果たし、2年前のロンドンであと一歩及ばなかった五輪金メダルへ、再び中矢が“力”を取り戻した。
 

 女子57キロ級はエースの松本が2回戦で腕ひしぎ十字固めを極められ、ギブアップ負け。まさかの展開を帝京大の先輩である宇高が救った。
 準々決勝を大外刈りで一本勝ちすると、準決勝はロンドン五輪銅メダリストのオトーヌ・パビアからも同じ技で有効を奪い、決勝進出を果たした。

 決勝の相手は10年大会準優勝のテルマ・モンテイロ(ポルトガル)。先に指導を受ける苦しい展開ながら、6月に負傷した右ヒザの痛みをこらえて攻め続け、ラスト30秒、相手にも指導が与えられる。

 両者ポイントがないまま、指導1で並び、時間無制限の延長戦へ。スタミナが切れたモンテイロに対し、29歳は攻撃の手を緩めない。1分を経過したところで得意の大外刈りを繰り出すと、相手はたまらず宇高の足を持つ反則を犯し、勝利を手にした。

 ここ数年は松本の陰に隠れ、世界柔道は4年ぶりの出場だった。4月の選抜体重別で優勝してつかんだ代表の座。遅咲きながらも、世界の舞台で大輪の花を開かせた。